てんかん

妊婦, 授乳のてんかん管理 (BMJ, 2023)

重篤な先天奇形のリスクは, LEV, LTGで最もリスクが低く, 健康な対照群のリスクレベルに近い.VPA, TPMの曝露は, 自閉症スペクトラム障害などの発達障害のリスク増加と関連.妊娠中の血中濃度は, LTG, LEV, LCM, ZNSで大幅に低下することが知られているため, 血中濃度モニタリングはこれらに合理的かもしれない.フェノバルビタール, プリミドン, クロバザム, クロナゼパムを服用している場合の授乳は, 乳児を注意深く監視することが賢明である.
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頭頂葉てんかん

陽性, 陰性感覚発作が生じる. 見当識障害, 複雑な幻視, 眩暈, 視覚錯覚, 身体イメージの障害の発作が起こることもある.優位半球側では, Gerstmann症候群の症状が現れることもある.
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後頭葉てんかん (症候性・COVE・POLE)

後頭葉てんかんは発作後に頭痛を伴うこともあり, 片頭痛との鑑別が困難になる. 一次視覚野からの発作は, 多色で円形, 増殖しながら大きくなることが特徴とされるため, 片頭痛の視覚前兆とはやや異なる.症候性後頭葉てんかんの場合は, IEDsが後頭部ではなく, 後側頭部に限局することが多く注意が必要である.小児期から青年期に発症した場合は, COVEとPOLEも想起する.
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てんかん発作の側方徴候

側方徴候のまとめです.olfactory (嗅覚): 扁桃体, 前頭眼窩, 後外側島皮質painful and thermal: 対側の後外側島皮質vestibular (平衡感覚): 側頭頭頂visual: 片側の場合は対側の視覚野dystonic: 対側, 主に側頭葉てんかん眼振: 対側の後頭葉瞬目: 同側chapeau de gendarme (警察官?の帽子): 前部帯状回asymmetric clonic ending: 間代が片側で終わる場合は, 同側を考慮gestural automatisms distal (遠位の身振り自動症): 同側, 主に側頭葉てんかんictal grasping: 前部帯状回bradycardia: 側頭葉, 前頭葉tachycardia: 側頭葉hypersalivation (流涎): 島皮質-眼窩apnea: 側頭葉, 主に対側に伝播したときpostictal headache: 同側, 側頭葉てんかんpostictal nose wiping: 同側, 側頭葉, 前頭葉
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てんかん発作用語

発作分類のメモです.
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てんかん発作型分類 (ILAE 2017)

発作起始が焦点性か全般性かを判断する (80%の確実性). そうでない場合には起始は不明とする.最初の顕著な徴候および症状により焦点発作を分類する. 一過性の動作停止は考慮しない.一部の強直間代発作では, 今にも発作が起こりそうな何とも言えない感覚や, 短時間, 頭部や四肢の偏向を伴うことがあるが, どちらも全般起始を否定するものではない.非定型欠神発作は, 発作の始まりまたは終わりが緩徐である. 筋緊張の著しい変化を伴う, あるいは脳波で3Hz未満の棘徐波が認められる場合, 欠神発作は非定型である.間代発作とは持続する律動的なびくつきであり, ミオクロニー発作とは規則的だが非持続性のびくつきである.ジストニアは, 主動筋と拮抗筋の持続的収縮によるアテトーゼ様運動または捻転運動と定義され, 遷延すると異常姿勢を呈する「脱力(atonic)」は緊張を伴わないことを意味する.てんかん性スパズムにおいて, 焦点起始発作であった場合, 治療可能な局在性病変に対応していることがあるため重要である. スパズムはどの年齢でも起こり得る.
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前頭葉てんかんの症候/睡眠関連運動亢進てんかん

一見PNESのような発作エピソードでも, 内側前頭葉もしくは前頭眼窩からの前頭葉てんかんであることもあります. 前の記事で記載したように, 内側, 前頭眼窩由来の場合は脳波で検出できないこともあります.よって詳細な病歴聴取が鍵となります. 睡眠関連運動亢進てんかんの場合は, CBZ, LCM, TPM, アセタゾラミドも良いかもしれない.SHEの患者は, 発作時に両側性運動があっても意識が保たれている場合がある. また, 発作時脳波は決定的な発作パターンを示さない場合があるため, PNESと誤診されることがある.PNESはあまり定型的ではなく, 覚醒中に起こるのに対し, SHEでは定型的な運動亢進症状, 短時間, 睡眠中夜間を通して発作が群発することによりPNESと区別することができる.
てんかん

脳波 (前頭葉てんかん)

前頭葉てんかんの脳波は多様であり, 内側, 前頭眼窩の場合は, 全般性のように広範囲に広がってみえることがある.特に前頭眼窩の場合は, 頭皮上脳波電極と距離があるので, より全般化した脳波になりやすい.内側前頭葉てんかんの場合には, 発作時脳波変化が捉えられないこともある.前頭葉てんかんの場合は, 頭皮上脳波の解釈には注意が必要です.
てんかん

NCSEと環状20番染色体症候群

症状の軽いNCSEの成人患者で, 発達も正常か軽度遅れ, 脳MRI正常, 前頭葉てんかん発作, 徐波群発を認める症例は, ring 20を想起して染色体検査を行う.モザイクの割合により予後や重症度は様々である.
てんかん

脳波 (焦点てんかん1)

montageは, 少し調整したり切り替えることでさらなる情報を得ることができます.焦点てんかんの脳波は, てんかん性放電は脳のどこからはじまり, どのように広がるかをイメージしながら推定することが大切だと思います.
てんかん症候

自己免疫性精神病

新規発症, 亜急性に進行する, カタトニア, ジスキネジア, 顕著な認知機能低下, 意識レベル低下, 新規けいれん発作, 血圧・体温・心拍変動といった自律神経症状は, 自己免疫介在性脳炎も考慮した方がよいかもしれない.カテゴリーB のうち, 少なくとも2つの症状および脳波異常があれば, 抗NMDAR抗体脳炎に注意.
自己免疫

自己免疫介在性脳炎の慢性期治療はどうする?

海外では, 再発後に長期免疫抑制を検討することが多い, リツキサンを選択する割合が多い, 腫瘍スクリーニングを定期的に行う, 抗体の有無により治療方針を選択することが多い点が, 本邦と異なると考えられました.保険適応の違い, 自己抗体測定も本邦ではハードルが高いため, この結果をすべて当てはめることはできないと考えます. 本邦では測定できない自己抗体も含まれているため, 長期的にPSL維持療法, 再発時にはアザチオプリン併用を選択する, 定期的な腫瘍スクリーニングといった感じでしょうか.自己抗体測定, リツキシマブ, アザチオプリン, MMFの保険適応を期待したいところです.
自己免疫

自己免疫介在性脳炎の鑑別に髄液検査は有用か?

髄液検査プロファイルは, 自己抗体の種類によって異なる.NMDAR, GABAbでも細胞数5/μl以上は50%程度. GAD, LGI1はほとんど上昇しない.NMDARの細胞数は幅が広い髄液蛋白45 mg/dl以上は, ほとんどの抗体で50%以下OCBは, NMDA, GABAb, GADで陽性率が50%以上LGI1は, 髄液細胞数, 蛋白, オリゴクローナルバンド (OCB) いずれも陰性になりやすい.NMDARは何らかしらの異常を認める髄液細胞数, 蛋白, OCB陰性でも自己免疫介在性脳炎の否定にはならない.
画像

MRI陰性の自己免疫介在性脳炎

脳MRI検査が陰性の自己免疫介在性脳炎が存在する.脳炎の診断には, 臨床症状, 生化学所見, 脳波検査も含めた総合的な判断が必要である.
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脳波 (側頭葉てんかん1)

電位がどのように波及しているか確認する. 耳朶基準montageは, 左と右に分けると波及がよりわかりやすくなる.
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てんかん重積状態プロトコール (アメリカてんかん学会)

アメリカはVPA静注製剤があるので, VPAがセカンドラインに含まれている. LEVは日本よりもかなり多く使用する. 体重50 kg程度でもLEV 3000 mgと高用量だが, 日本人にもその量で適用してもよいかはわからない.
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妊娠中のてんかん重積状態

私はまだ妊婦のてんかん重積状態を経験したことはありませんが, 万が一遭遇したら, セルシン・ホリゾンなどのジアゼパムもしくはミダゾラムをIVしながら, レベチラセタムを準備.AIUEOTIPSの対応, MRI (MRV, SWI or T2*も含めて)での精査, 子癇を考慮してマグネシウム投与, 血圧が高ければ降圧, 最悪の事態では32週を超えていればterminationといったところでしょうか.
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てんかんの迷走神経刺激療法 (VNS)

VNSは, てんかん発作も抗うつ効果も50%の反応率といった印象です.難治性うつ病を併存している場合には, DBSよりもVNSの方が良さそうです.
てんかん

VNSとDBSどちらが良い?

発作頻度に関しては, 長期的にはDBSの方が良さそうな印象です.どのてんかんのタイプに, VNSとDBSどちらが良いかに関してはまだ不明です.
てんかん

てんかんのFDG-PET/MRI

側頭葉てんかんの成人および小児: 60-90%. 側頭葉外てんかん: 30-60%てんかん原性領域に限定した糖代謝低下は, 側頭葉てんかんの術後転帰良好と関連.側頭葉外てんかんでは, 強い有意な相関はないFDG-PETと, 発作時EEGの起始領域および発作症候の不一致は, より悪い転帰と関連代謝低下が限定されているほど, 転帰が良好である成人の発作間欠期FDG-PETは, FASの24時間後, FIAS/FBTCSの48時間後に実施する必要がある.
てんかん

MRI: てんかん精査プロトコール

3D-T1, 3D-FLAIR, 2D-T2は必須である.FLAIRで3 mmスライスの場合は, FCDを見落とすことがある.T2で海馬層構造の確認が必要である.
てんかん

MOGHE (オリゴデンドログリア過形成とてんかんを伴う皮質発達の軽度奇形)

SLC35A2遺伝子関連のMOGHE は, 薬剤耐性非病変性の焦点てんかんの病因となる可能性がある. 特に前頭葉が関与し, 思春期または若年成人期に発症することがある. MRI non-lesionの難治性前頭葉てんかん症例に出くわすことがありますが, MOGHEのようにMRIには映らない病変が潜んでいるかもしれない.
てんかん

NORSE/FIRESの診断・治療とアクテムラ

造影脳MRI検査は, 禁忌のないすべての患者に対して発症後48時間以内に実施悪性腫瘍スクリーニング (胸部, 骨盤部, 腹部CT) は, 原因不明のNORSE/FIRESの患者に対して実施陰性の場合は, 続いて精巣/卵巣の超音波検査最初の1, 2日間でてんかん重積状態の原因が不明の場合は,ステロイドパルス, IVIg, 血液浄化療法を併用を72時間以内に開始する必要がある.不十分なら7日以内にリツキシマブ, トシリズマブ (アクテムラ) が推奨今はエンドキサンよりもアクテムラの方が主流なのだろうか.確かにエンドキサンよりもアクテムラのほうが扱いやすいか.
てんかん

ラコサミドは妊婦・胎児に安全か?

現時点では, 主要な先天奇形の頻度は低いようですがさらなるエビデンスの蓄積が必要です.多剤併用になるとリスクは若干上がるかもしれません. なるべく多剤併用にならないようにしたいですが, 難治性てんかんの場合はままならないこともあります.
精神

メマンチンはアルツハイマー型認知症以外の精神症状にも有効か?

メマンチンは, 精神疾患において治療用途を持つ可能性がある.
てんかん

てんかんと抗うつ薬

抑うつ症状がある場合は, 抗発作薬はラモトリギン, バルプロ酸, カルバマゼピンを視野に入れる.SSRI, SNRI, NaSSAといった一般的な抗うつ薬は比較的安全だろう. ボルチオキセチンのエビデンスはまだケースレポートレベルである.
てんかん

てんかんと抗精神病薬

ハロペリドール, オランザピン, クエチアピン, リスペリドン, アリピプラゾールによる発作リスクは低い
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Lennox-Gastaut症候群と成人例

成人に移行したLGSは基礎波が正常なこともある.小児期にLGSがあったかわからない症例では, slow spike and wave, fast rhythmを全般性に認める, 強直発作などを含むdrop attacks, 非定型欠神発作, ミオクロニー発作, 焦点発作, 強直間代発作などをもつ場合には, LGSに準じた治療 (VPA, CLB, LTG, TPMといったブロードスペクトラム) を行うことが良いかもしれない.
てんかん

乳児てんかん性スパズム症候群 (IESS) とWest症候群

乳児にてんかん性スパズムを疑う発作があったら, 迅速に検査をすすめ治療を開始することと, 構造的要因にも注意をはらうべしということでしょうか.
てんかん

表面筋電図: てんかん性スパズム, ミオクロニー発作, 強直発作

EEG spikeから20-60 msの潜時差で発生するsEMGのspike様波形はmyoclonic seizureを疑う.てんかん性スパズムは1-3秒, 強直発作は3秒以上を目安にする.
てんかん

扁桃体腫大の鑑別 (自己免疫介在性)

どのような扁桃体腫大で積極的に自己免疫機序を疑うべきかはまだ明らかではなく, 発作により二次性に腫大する場合や腫瘍を認めることもある.自己免疫介在性脳炎では, FDG-PETはむしろ低下する.扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんは, 精神症状の有無にかかわらず, オリゴクローナルバンド, IgG indexを含めた髄液検査は行った方が良いかもしれない.
自己免疫

Tissue based assayは自己免疫介在性脳炎の鑑別に役立つか?

自己抗体陰性例でもラット脳組織を用いたTBAはスクリーニングに良いかもしれません間接免疫抗体染色 (indirect immunofluorescence: IIF) ラット脳組織免疫染色 (tissue-based assay: TBA)
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自己免疫介在性脳炎 (診断基準: Lancet 2016)/てんかん発作との鑑別に髄液検査は役立つか?

もともとてんかんと診断されていなく, けいれん発作群発や重積状態で搬送された患者の髄液細胞数が増加していた場合は, 脳炎なども鑑別する必要があるだろう.
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自己免疫性てんかん

てんかん発作発症とともに, 急性に悪化する精神症状を併存している場合には, 自己免疫性てんかんを想起する.髄液検査, 脳MRI検査を行いAPE2 scoreを参考にする.APE2 scoreが4点以上なら, 積極的な免疫治療も考慮する.
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Perioral myoclonia with absence (PMA) とは

EEGは全般てんかんで, 頻回に口だけにmyoclonic seizureを認めた症例がいたので調べてみました. 小児期発症の欠神発作, 口周囲のミオクロニー発作, 欠神発作重積をみたらPMAを想起する必要がありそうです.
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全般てんかんにブリバラセタムは有効か?

LEVで効果を認めなかった, もしくは忍容性が悪かったLEV nonresponder群に対しても, 66%の患者に50%以上の発作頻度減少の効果を認めた.LEVで効果を認めなかったGGEも, BRVを試しても良いかもしれない.ただ, BRVに切り替えて悪くなった例もあるので注意が必要です.
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薬疹発症例にラモトリギン再投与は安全か?

LTG開始から8週間以内の漸増スピードが, 薬疹発症に関与すると報告されている.LTGを再投与する場合には, 2.5 mgもしくは5 mgから再投与を開始し, 2週間毎に5 mgずつ漸増することを考慮しても良いかもしれない.LTG初回投与で粘膜疹を伴う薬疹だった場合や, 薬疹発症から4週間以内の再投与は控えた方が良いだろう.軽度薬疹だった場合は, 再投与の安全性は高そう.