Treatment of Blepharospasm/Hemifacial Spasm. Curr Treat Options Neurol. 2017
【片側顔面痙攣】
女性に多く, 40~60歳代に発症のピーク
通常, 下眼瞼から始まり, 続いて眼窩周囲筋, 中顔面筋, 口囲筋, および/または広頸筋に同期して広がる.
患者の90%で, 眼輪筋が最初のけいれんの部位
症状は, 自発的な顔面運動, ストレス, 疲労, 不安によって悪化する傾向がある.
眼瞼痙攣とは異なり, 睡眠中に持続する場合がある.
リラクゼーション, アルコール, 運動, 患部への触覚刺激により症状が改善する
原発性:
顔面神経の異常, または拡張した血管の圧迫によって引き起こされる.
3D-MRIで, 症例の52%で顔面神経を圧迫している単一の血管, 症例の48%で複数の血管の圧迫が確認
前下小脳動脈 (AICA: 50%) と後下小脳動脈 (PICA: 45%) は, 最も一般的な単一の圧迫血管
椎骨動脈, AICA, PICAの組み合わせは, 複数の圧迫グループで多い.
血管圧迫は, 脳幹根出口領域の顔面神経に最もよく影響する
動脈硬化, 高血圧, 遺伝, 顔面神経の過剰興奮性, 後頭蓋底容積の低さが発症に関与
二次性:
小脳橋角から耳下腺までの顔面神経の経路に沿った障害による.
最も一般的には, 内耳道と茎乳突孔の間で起こる
原因には, 外傷, 腫瘍, 感染症, 血管異常, 特発性
両側性:
非常にまれであり, 別の原因を考慮する
ほとんどの場合, 片側収縮で始まり, その後両側の非対称収縮が続く
患者の約4%では, 三叉神経痛を併発することがあり,「チックけいれん」と呼ばれる

薬剤:
エビデンスに基づいた有効性データはまだ不足
顔面神経核の過活動を軽減し, 症状を緩和する抗キンドリング効果が提案されている
歴史的には, カルバマゼピン, クロナゼパム, バクロフェン, ガバペンチン, レベチラセタム, ゾニサミドなど
ゾニサミド150 mgを1日2回6週間投与された患者で, 完全な消失が得られたケースレポートもある.
外科的減圧術:
5685人を対象とした 1 つの系統的レビューでは, 91%で症状が完全に消失.
術後再発率は2.4%で, そのうち50%が再手術
合併症:
一過性の顔面麻痺 (5.9~9.5%), 難聴 (2.5~3.2%)
めまい (2.4%), 耳鳴り (2.2%), 永久難聴 (1.8%), 脳脊髄液漏 (1.3%), 局所感染 (1.2%), 髄膜炎 (0.9%), 永久顔面神経麻痺 (0.7%), 脳卒中 (0.3%), その他の脳神経麻痺 (1.4%)
【眼瞼けいれん】
成人発症の第Ⅶ脳神経局所性ジストニア
眼輪筋およびその他の眼窩周囲筋の過運動により, 二次的に生じる不随意の眼瞼閉鎖を特徴とする
頻繁な不随意の眼瞼閉鎖により, 機能的失明となる.
ほとんど両眼性
主に50~70歳の女性
診断:
定型的な両側同期性眼輪筋痙攣と, 感覚トリックまたは瞬きの増加のいずれか, の存在が必要
感覚トリック(拮抗動作):
約70%でけいれんが改善する
トリックには, 顔の特定の領域への軽いタッチ, 上まぶたや眉毛を引っ張る, 色付きレンズの着用, 話す, 歌う, 噛むなど
異常な皮質促通を減少させることで, 三叉神経顔面神経回路に影響を及ぼし, その結果瞬き反射が減少すると考えられている
二次性:
全症例の10%未満
脳幹, 視床, 基底核, 小脳, 皮質領域の局所障害後に発生
パーキンソン病, 遅発性ジスキネジア, ベル麻痺, 重症筋無力症, 角膜刺激を引き起こす疾患でも報告されている
運動症状:
眼輪筋の短時間または持続的なけいれん
これにより, まぶたが狭くなったり閉じたりする.
片側発症でも, 数ヶ月以内に典型的な同期性両側性収縮に進行
眼瞼開瞼失行も一般的な症状の1つ
患者の3分の2が, 最初の5年以内に, 他の体の部位にジストニアを発症する報告もある
非運動症状:
羞明, 灼熱感, 眼異物感

薬剤:
エビデンスは不十分
抗コリン薬 (トリヘキシフェニジル, ベンズトロピン)
GABA作動薬 (クロナゼパム, バクロフェン)
抗ドパミン薬 (テトラベナジン)
メキシレチン
外科治療:
ボツリヌス注射, 薬物療法で反応せず, 著しい機能障害がある患者を対象
最も一般的処置は, 眼輪筋を含む筋切除術
通常は上眼瞼の部分切除.
2段階の全筋切除術のケースもある
約90%で視覚機能障害が改善
100人の後ろ向きでは, 33%で症状が完全に消失し, 44%で症状が半減
ドライアイと羞明の改善も, それぞれ93%と98%で報告
術後には障害スコアの大幅な減少が見られ, 術後の全体的な満足度は89%
合併症: 疼痛, 術後感染, 出血, 兎眼, 露出性角膜症など
脳深部刺激療法(DBS)
両側淡蒼球内節刺激療法の1つの報告では, 術後15ヶ月で87.5%の改善が記録
経頭蓋磁気刺激
補足運動野と前帯状皮質の皮質興奮性を低下させ, 両側の上部顔面筋への遠心性投射を通じて, 症状を改善する可能性がある
ランダム化比較試験では, 安全で有効な使用に関するクラスIIのエビデンス
[Green KE, Rastall D, Eggenberger E. Treatment of Blepharospasm/Hemifacial Spasm. Curr Treat Options Neurol. 2017 Sep 30;19(11):41. doi: 10.1007/s11940-017-0475-0. PMID: 28965229.]
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