Reflex epilepsy: review
【反射てんかん】
すべてのてんかん発作が, 感覚刺激によって引き起こされる特異的な症候群
特発性光過敏性後頭葉てんかん, その他の視覚過敏性てんかん, 一次性読書てんかん, 驚愕てんかんなど
特発性光感受性後頭葉てんかんでは, すべての発作が光刺激によって誘発される
【反射発作】
特定の求心性刺激, または活動に反応して一貫して誘発される事象.
点滅する光, 本を読む, 単純なものから複雑なものまで.
内因性, 外因性, 全般性, 焦点性など様々
てんかん患者の4-7%
IGEでは, 21%以上
IGEは, 局所または多局所的な皮質過敏性が関与
外因性反射てんかん
【光感受性てんかん (photosensitive epilepsy)】
テレビ, ビデオゲーム, 特に深赤波長 (680-700 nm) のちらつきが最も一般的
輝度が高い, 曝露が長い, コントラストが高い, 両眼ほど誘発されやすい.
15-25 Hzの光刺激, 患者によっては特異な幾何学的パターンで, 発作が誘発されやすい.
光過敏は, 光感受性後頭葉てんかん, Javons症候群にも特徴的
JMEの光感受性発作は30-90%
CAEは18%-40%
ドラベ症候群, ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病, CLN6変異を伴う神経性セロイドリポフスチノーシスを含む進行性ミオクロニーてんかん, ラフォラ病なども.
EEGで光突発反応と, 光感受性発作が存在する患者の42%は, 純粋な光感受性てんかん.
頻度の高い順に, ミオクロニー発作, GTCS, 欠神発作
【テレビ誘発性発作 (television-induced seizures)】
1997年, ポケモン事件
光感受性発作に最も一般的
典型的には10-12歳
10%以上にテレビ誘発性発作の家族歴がある
画面のちらつき, 画面との距離が近い (1 m未満), 光の強度が高い, 部屋が暗い場合に起こりやすくなる
10%は「compulsive attraction: 強迫的な引き寄せ??」をもち, GTCSに進展する前にテレビ画面に「磁石のように引き寄せられる」.
【ビデオゲームによる発作 (video game-induced seizures)】
1981年, スペースインベーダーてんかん
典型的には7-19歳
ビデオゲーム誘発性発作の70%は, 真の光感受性発作.
純粋な光感受性発作よりも多くのメカニズムが働く.
パターン感受性, 固有受容刺激 (運動/行為), 認知刺激 (意思決定), 感情的興奮 (不安, 欲求不満, 興奮)
ほとんどの患者は, 対照的な縞や線に反応して, 発作誘発とともに光突発反応を示す
患者の3分の2は全般発作, 3分の1は焦点後頭葉発作
【自己誘発性発作 (self-induced seizures)】
最もよく知られている例はひまわり症候群.
明るい光源 (通常は太陽) を見て, 外転した指を自発的に目の前で振る.
その他には, 開閉眼, テレビ画面を「ロール」させるための特定の頭の動き, チャンネルをすばやく変更する.
自己誘発は, 光源に磁石のように引き寄せられる強迫行動として, しばしば描写される
【光感受性てんかんの管理】
テレビ誘発性発作の場合は, 少なくとも2 m離れて視聴.
リモコンはチャンネル変更のみ. 明るい部屋で視聴.
100 HzテレビまたはLCD /プラズマテレビを使用.
眠気や無気力のときは, 画面を見る時間を制限する
片目を覆うことも効果的.
青色レンズの一種を着用すると, ほとんどの光感受性患者の光突発反応を制御できる
晴れた日に偏光グラスを着用することも, 発作の抑制に役立つ.
ゲーム中に色付きメガネをかけると, 発作誘発を軽減できる
これらの予防策で不十分, またはIGEを患っている場合は, ASMが必要.
第一選択はVPAだが, LEV, BRV, LTGも効果的
光突発反応が残存していても, 長期予後は生涯を通じて改善していく
光感受性は, 時間とともに減少し, 患者の30%以上で30代以降に消失する
【音楽てんかん (musicogenic epilepsy)】
音楽誘発性てんかんは複雑性反射てんかんの極めてまれな形態
10,000,000人に1人
音楽の種類, アーティスト, 楽器, 感情の顕著性, 聴取時間, 機械音, 教会の鐘, 電話音, 特定の歌やメロディーを思い浮かべる音など様々
側頭葉からの焦点性がほとんどで, まれに二次性全般化
メカニズムは, 右半球側頭葉領域, 海馬-前頭前野経路の調節不全が仮説
第一選択はCBZ, LTG. 次いで, VPA, LEV
側頭葉切除も適応があれば検討
【読書てんかん (reading epilepsy)】
まれなタイプの反射てんかん.
典型的には成人初期または思春期後期
口腔顔面筋, 咀嚼筋のミオクローヌス発作として発現し, 読書中にこわばりやクリック感を生じることが多い
話すこと (特に議論的なスピーチ) や書くことなどの神経関連タスクが, 同じ発作症候を誘発することがある.
不完全浸透の常染色体優性遺伝
EEGは80%で正常
IEDsは11%
ictal EEGは5%が側頭葉起始
資料の難しさや, 感情的な内容が増えるほど容易に誘発される.
ブロードマンの6番領域が強力な候補
予後良好
必要に応じて, VPA, CZP
【摂食誘発性発作 (eating-induced seizures)】
有病率はてんかん患者の1:1,000-1:2,000と推定
98%で咀嚼と食物摂取に関連
側頭葉辺縁系, 側頭葉周囲領域で発生
重要なのは, 発作が同じ食事の中で再発しないこと
予防には, 特定の食事パターンを回避する, 食物の感覚特性を修正する (ストローで飲む, 一口ずつ小さく食べるなど), 膨満感を軽減する
CLBは食前に服用すると効果的である.
効果がない場合は, 外科的介入を検討
【温水または入浴によるてんかん (hot water or bathing epilepsy)】
反射てんかんで2番目に多い
南インドで多く, 熱湯 (40-50ºC) を頭の上に繰り返しかける儀式が多い.
発作は生涯を通じる可能性あり.
典型的には, 焦点意識減損発作, まれに二次全般化を伴う
水の温度と量, 特に頭に水をかけることが最も重要な誘発因子
視床下部体温調節中枢の損傷が関与している可能性
20-25%は, 側頭葉領域でてんかん性異常を示す
SPECT検査では, 内側側頭葉構造と視床下部で, 発作時に集積亢進あり
治療は, 入浴やシャワーの水温を下げる.
効果がない場合は, 入浴の1.5-2時間前にCLB
患者の1/3以上は, CBZ, LTG, PHT, PB, VPA, LEVによる継続的なASMが適応
【オーガズム誘発性発作 (orgasm-induced seizures)】
極めて稀, 女性に非常に多く発生
典型的にはFIAS, 右半球に由来.
ほとんどの患者は, 焦点てんかんを併存
オーガズム後, 数分から数時間で発生する
オーガズムが, 感作されているニューロンを刺激すると考えられている.
【体性感覚刺激誘発性発作 (somatosensory stimulation-induced seizures)】
皮膚摩擦 (擦過性てんかん), 歯磨き (歯磨きてんかん), 触る, 軽くたたく, ちくちくする, 外耳を刺激する (耳介てんかん) などの特定の刺激が原因
大部分は, 特定の皮膚領域から生じる.
三叉神経, 上肢の体性感覚領域が多い
感覚前兆で始まり, 続いて強直性運動症状を伴う感覚性ジャクソン発作が起こる.
中心後回皮質病変をよく認める
内因性反射てんかん (intrinsic reflex epilepsy)
外因性の感覚刺激を伴わない, 内因性のプロセスによって誘発される反射発作
主に, 高次脳機能, 特定の行動を含む刺激, 思考, 認知機能, 数学 (算数てんかん), 驚愕, 行為, 固有受容覚入力など
【思考性てんかん [thinking (noogenic) epilepsy]】
反射てんかんのまれな形態
主に青年期の男性
計算, ルービックキューブ, 思考, 意思決定, 抽象的推論, チェス, トランプ, 複雑な図形の描画など
数学, 空間タスクの反射発作は最も信頼性が高く, 患者の72%に発生.
単純な計算では, 下前頭葉と角回のみが動員.
複雑な計算では, 両側頭頂葉が動員
96%でGTCS, 典型的にはミオクロニー発作が先行
76%がミオクロニー発作のみ
60%がミオクロニー発作と同時に欠神発作
68%が全般性IEDs
焦点性IEDsが存在する場合, 一般的には右前頭葉または頭頂葉
【行為誘発性反射発作 (praxis-induced reflex seizures)】
複雑なタスクと, 体の一部を使う運動要素
絵を描く, トランプ, チェス, ボードゲーム, ルービックキューブ
全般性, JMEの症状として現れることがある
関連ネットワークは, parieto-fronto-temporalであり, 頭頂間溝, 上頭頂溝, 下頭頂小葉, 中前頭回, 運動前野, 下前頭皮質が含まれる.
純粋に思考する反射てんかんよりも, 多くの脳領域が関与
【固有受容覚誘発性発作 (proprioception-induced seizures)】
姿勢や動作の変化によって引き起こされる
非ケトン性高血糖に最も一般的
発作は感覚運動野が関与
感覚運動野, 補足運動野の病変を持つ患者では, 固有受容刺激が局所発作を誘発する可能性がある
歩行誘発性てんかんでは, 中心頭頂部にIEDsあり
感覚性ジャクソン発作を呈する
【驚愕誘発性発作 (startle-induced seizures)】
突然の予期せぬ感覚刺激によって引き起こされる.
小児期から思春期初期に発症
典型的には聴覚だが, 体性感覚刺激や視覚刺激が誘因となる場合もある.
突然の騒音が, 最も効果的な聴覚刺激である.
発作は自律神経症状を伴うことがよくある
しばしば転倒につながる.
大多数は知的障害, 片麻痺が多く, これらの患者は通常, 大きな脳病変を有する.
典型的には, 生後2年以内に起こる.
代謝性疾患でも頻繁に発生し, 特に21トリソミーで多い
神経学的に正常でも, 発作を認めることもある
EEGは, びまん性または局所性の異常
発作時脳波は, 頭頂部に続いて, 平坦化または10 Hzの低振幅律動
補足運動野, 帯状回が発生源であることが示唆
21トリソミーでは, 橋尾側網様核の機能不全を示唆
これらの患者の予後は不良.
[Hanif S, Musick ST. Reflex Epilepsy. Aging Dis. 2021 Jul 1;12(4):1010-1020. doi: 10.14336/AD.2021.0216. PMID: 34221545; PMCID: PMC8219495.]
【まとめ】
真の反射てんかんと, 反射発作を鑑別するには病歴が大事である.
鑑別方法としては, 下記のような感じでしょうか.
IGE: 光刺激, 思考性, 行為誘発性
症候性てんかん: 光刺激, 思考性, 音楽, 摂食誘発, 体性感覚, 固有受容覚
特発性光感受性後頭葉てんかん: 光刺激で必ず発作
驚愕てんかん: 知的障害, 生後2年以内
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