皮質ミオクローヌス (giant SEP, C-reflex, JLA)

Rethinking the neurophysiological concept of cortical myoclonus. Clin Neurophysiol. 2023

皮質ミオクローヌス (CM) は, 感覚運動皮質で発生する異常放電によって引き起こされる.
典型的には, 四肢末端または顔面に生じるショック様の痙攣

多くの場合, 動作誘発性で, 陽性および陰性の両性で, 体性感覚刺激に敏感

電気生理学的検査により, ミオクローヌスが皮質起源であることを裏付けることができる

ミオクローヌスは皮質と皮質下の構造を含むネットワークによって生成される可能性があり, 純粋なCMは少数の限られた症例でのみ観察される

JLBA: EEGとEMGバースト間の遅延が, 約20 msであれば, 皮質起源の可能性が非常に高い
giant SEP: CMに特異的ではないが, S1の過剰興奮を示唆する
C反射: 信頼性は不明
CMC: 信頼性は不明
短いEMGバースト持続時間: CMに特有ではなく, 信頼性は不明
positive and negative jerks: 信頼性は不明
頭尾方向の進行: CMに特有ではなく, 信頼性は不明

【巨大体性感覚誘発電位: giant SEP】
正中神経刺激が最も一般的に用いられる

皮質反応は頭頂部頭皮電極から記録され,

一次体性感覚野から生じる20 msの陰性波 (N20),

25 msの陽性波 (P25) が認められ,

続いて33 msの陰性波 (N33) が出現

これは中心前野の賦活を反映している

技術的な問題課題
giant SEPの定義が定まっていない

Shibasakiらは, P25が8.6 µVより大きいか, N33が8.4 µVより大きい場合, giant SEPと定義

別の定義は, 健康な被験者の平均値に標準偏差の2~3倍を加えた値よりも大きい

ある研究では, N20-P25とP25-N33の両方の成分の振幅増大, 他の研究では1つの成分の拡大のみ

SEP振幅の測定方法に一貫性がない

peak to peakやbaseline to peakなど
中枢神経系に作用する薬理学的治療を受けている状態での研究

感度特異度などもまだ定まっていない

21人の皮質ミオクローヌスと推定される, うち1人がgiant SEPなど
皮質ミオクローヌスに特異的ではなく, 進行性核上性麻痺, 多発性硬化症, 疼痛, 運動ニューロン疾患, 機能性神経障害など, ミオクローヌスを伴わない様々な病態でも観察されることがある

つまり, giant SEPに反映される感覚運動皮質の過興奮性は, 臨床症状と直接関連していない可能性も示唆されている

【giant SEPの病態生理】
潜時と形態が正常SEPと類似していることから,

発生源は一次体性感覚野(S1)にあり, 最も可能性が高い部位は3b野であると考えられている

一次運動野(M1)や補足運動野も関与している可能性がある

ほとんどの患者において, giant SEPの最初のN20成分は拡大していない

拡大するのは, 後期のP25-N33成分

3b野からの入力に加え, より遅い伝導性求心性神経と, より間接的な経路(小脳経由など)からの入力も受け取る1野の活動を反映していると考えられている

giant SEPは, 全般的な抑制の欠如によって引き起こされると考えられている

小脳抑制の低下, 異常発火ニューロンの過剰同期, 視床とS1の優先的な接続の存在など

【C-reflex】
通常, 正中神経刺激後に母指球筋で評価され, LLR I (35~46 ms), LLR II (45~58 ms), LLR III (>68 ms) と呼ばれる最大3つの異なる反応が含まれる

C反射の命名法は曖昧

生理的LLRと病理的C反射の境界が不明確となっている

正常な被験者では, LLR-Iは筋収縮時にのみ観察される

ミオクローヌス患者では, C反射が安静時にも観察されることが報告されており, 感覚運動皮質の過剰興奮性を示唆している

しかし, C反射とLLR-Iの重複は不明

患者によっては, C反射がLLR-Iではなく, 後のピークであるLLR-IIに該当する可能性がある

【C-reflexの病態生理】
C反射の疾患特異性およびミオクローヌスの種類特異性は不明

パーキンソン病, ジストニア, 本態性振戦など, ミオクローヌスを呈さない運動障害でもLLRが異常となる場合がある

C反射は「起源が皮質であるか皮質下であるかに関係なく」他の種類のミオクローヌスでも観察される

C反射発生には, 感覚運動皮質の関与を支持しているが, 解剖学的経路はまだ解明されていない

【JLBA】
臨床的にCMが疑われる患者の限られた数でのみ陽性

通常, ミオクローヌスが皮質起源であることを示唆するが, 必ずしもCMを除外できるわけではない.

進行性ミオクローヌスてんかん, 良性成人家族性ミオクローヌスてんかん, HD, パーキンソン病, レビー小体型認知症, 多系統萎縮症など

CMに関連するEMG 放電と先行するEEG間の時間は, 約 20 ms であるとしばしば想定されている

アルツハイマー病, セリアック病, パーキンソン病, レビー小体型認知症, レノックス・ガストー症候群, クロイツフェルト・ヤコブ病では, 数十ミリ秒になることがある

【EMGバースト持続時間】
一次性全般てんかん性ミオクローヌス: 10~50 ms

CMでは放電の持続時間は, 10~100 msの範囲

線維束性収縮は50msより短くなることがある.

脊髄ミオクローヌスも短時間のことがある

【陽性ミオクローヌスと陰性ミオクローヌス】
CMでは, 他のミオクローヌスよりも, 陰性ミオクローヌスと陽性ミオクローヌスが共存する頻度が高い

[Latorre A, Belvisi D, Rothwell JC, Bhatia KP, Rocchi L. Rethinking the neurophysiological concept of cortical myoclonus. Clin Neurophysiol. 2023;156:125-139. doi:10.1016/j.clinph.2023.10.007]

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