Seneviratne U, Cook MJ, D’Souza WJ. Electroencephalography in the Diagnosis of Genetic Generalized Epilepsy Syndromes. Front Neurol. 2017
発作間欠期は「単独で, または最大数秒続くバーストで発生するてんかん様パターン」と定義
発作は「比較的突然の開始と終了, および少なくとも数秒続く特徴的な発展パターンを伴う反復的な脳波放電」
欠神発作では, 発作間欠期と発作の区別が困難な場合がある
最近の研究では, 臨床徴候の有無にかかわらず, 3秒以上持続する全般性棘徐波複合を欠神発作とみなす

遺伝性全般てんかんにおける典型的な発作間欠期てんかん性異常
両側性, 対称性, 同期性の棘波 (A)
polyspike-wave discharges (B)
polyspikes (C)
【分布】
通常, 最大振幅は前頭中心領域
欠神発作中の最大陰性電位はFzで検出され, F3, F4に側方拡散, Czに後方拡散する
棘徐波複合の最大振幅は, 前頭中心領域 (96.3%) で最も頻繁
次いで前頭極 (2.4%), 後頭部 (1.3%)
若年性ミオクロニーてんかんにおける高密度脳波計では, 最大陰性電位は眼窩前頭皮質と内側前頭極皮質
イメージング解析技術を用いた別の研究では, GGEにおける全般性棘徐波複合の主要な発生源として, 前帯状皮質と内側前頭回.
【規則性】
規則性は「ほぼ一定の周期で比較的均一な外観を示す波または複合波」と定義
GGEにおける典型的な脳波の特徴は, 規則的で律動的な全般性棘徐波複合
最近の研究では, 全般性棘徐波複合の60%が不規則であることが報告
【周波数】
欠神発作は, 典型的に3 Hz
若年ミオクロニーてんかんでは, 3.5 Hzを超える
若年性欠神てんかん (平均3.25 Hz) は, 小児欠神てんかん (CAE) よりも速く, JMEよりも遅い
最初の周波数はわずかに速く, その後に遅くなり, 規則的になる.
【背景脳波】
GGEでは, 典型的にはてんかん様放電が正常な背景から出現
緩徐で無秩序な背景がある場合は, てんかん性脳症の可能性が高くなる.
【光刺激】
光刺激に対する反応は, てんかん性放電が, 刺激から100 ms以上持続する場合に自立型と定義
JME (83%) で最も頻繁に検出され, 次いでCAE (21%), JAE (25%) と続く
【注視外 (FOS)】
注視と中心視野の消失によって引き起こされる全般性または後頭部のてんかん性放電
光過敏症や閉眼過敏症と区別する必要がある
てんかん性放電は眼を閉じている間に持続し, 開眼すると消失
FOSを確認するには, 球面レンズ, フレンツェル眼鏡, ガンツフェルト刺激法を適用して, 中心視野と注視を消失させる必要がある
FOSはGGEおよび後頭てんかんで報告されている
一部の患者では, 光過敏症とFOSが共存する

遺伝性全般てんかんにおける閉眼感受性と注視外感受性
A. 閉眼後に出現し (C), 1秒後に消失する (閉眼感受性)
B. 閉眼時に出現し (C), 閉眼中は持続. 開眼時に消失 (O) (注視外感受性)
【てんかん様K complexとspindle】
全般性てんかん性放電とK complex, spindleの重複
最近の研究では, 患者の65%でてんかん性K complex複合, 10%でてんかん性spindleあり.
これらの異常は, ミクロ覚醒とてんかん性放電との関連を示唆していると考えられている.

遺伝性全般てんかんにおけるてんかん性K complex, spindle
(A) 多棘波がXにおけるK complexと重なり合っている (X)
(B) 睡眠紡錘波の途中における全般性棘波放電のバースト (Y)
【後頭部間欠性律動デルタ活動】
2~3 Hzの片側または両側の後頭部に一過性, 規則的で律動的な正弦波デルタ活動
深い睡眠段階や, 開眼では通常OIRDAが減弱する
眠気や過換気ではより顕著になる
OIRDAはCAEと診断された患者の約3分の1で検出される
てんかんに特異的なものではない
小児の脳症でも時折見られる
【発作時脳波】
ミオクロニー発作
10~16Hzの高振幅, 全般性, 多棘波, 前頭中心に最大陰性電位
これらの典型的な放電は, 不規則な2~5HzのGSW活動に先行し, 時に1~3Hzの不規則な徐波活動に続くことがある脳波上の発作は, 臨床発作よりも数秒長くなることがある

ミオクロニー発作の脳波
全身性多棘波のバーストに続いて, いくつかの徐波が現れる
定型欠神発作
両側性, 規則性, 対称性, 同期性の3Hz (2.5~4Hz)
時に多棘波放電と混在する.
正常な背景脳波

定型欠神発作の脳波
前頭中心部に最大
発作時初期の放電が非典型的であることは珍しくない.
非全般性放電, 棘波, 多棘波, 不規則放電のこともあり, 典型的な棘徐波複合は平均0.7秒後に出現する.
ミオクロニー欠神発作
進行性上肢挙上と, 重畳した律動性ミオクロニー発作を生じる, 強直性収縮を伴う欠神発作を特徴
定型欠神発作に比べ, 意識障害はそれほど顕著ではない
ミオクロニー欠神発作と定型欠神発作は, ともに類似した発作時脳波パターンを示す
ミオクロニー欠神発作は過換気により誘発されることが多い
光刺激により誘発されることは少ない(14%)

ミオクロニー欠神発作の脳波
脳波は典型的な欠神発作に類似している(20秒/1ページ)
欠神発作を伴う眼瞼ミオクロニア
閉眼で誘発される脳波発作, および光過敏症は, ジェイボンズ症候群の主な特徴
欠神発作を伴わない場合もある
発作時脳波は, 典型的には3~6 Hzの1.5~6秒間持続する全般性高振幅多棘波および多棘波放電
発作時放電は, 眼瞼ミオクロニアと同時に, または前に発生する
脳波異常は, 通常, 閉眼, 光刺激, 過換気により誘発される
過敏性眼振が併存することもある

欠神発作を伴う眼瞼ミオクロニア
(A) 欠神発作はX時に眼を閉じることで誘発された
全般性で速い多棘波活動の発作性変化 (X-Y)
この発作は, 眼瞼ミオクローヌス, 頸部伸展, 無反応を特徴とした.
(B) 同じ患者から記録された睡眠中の全般性多棘波
全般性強直間代発作
GTCS中の脳波は, 筋肉や運動のアーティファクトによって覆い隠される
全般性多棘波バーストが通常発作発現の指標となる
全般性振幅減衰が続き, 低電圧の全般性 20~40 Hz の速い活動が, 数秒間重なる場合と伴わない場合がある
強直相の開始は電圧減衰と一致する
次に, 全般性律動性アルファ活動 (10~12 Hz) が, 強直相の継続に伴い振幅が増大し周波数が低下するとともに, evolutionする
周波数の低下が4 Hzに達すると, 多棘波徐波複合が出現し, ミオクロニーおよび間代性けいれんを伴う
間代性けいれんの終結に伴い, 全般性脳波抑制が一定期間認められる
回復は不規則な全般的なデルタ波からシータ波, 最終的にアルファ波へと背景リズムが回復する
【非典型的な脳波異常】
GGEにおける典型的な脳波異常は, 全般性, 対称性, 双同期性だが, 局所性, 非対称性, 不規則放電を認めることもある
欠神発作では, 初期放電が非全般性であることが50%
24時間携帯型脳波に基づく最近の研究では, 6つの非定型脳波異常が特定
(1) 振幅非対称, (2) 発作の局所的開始, (3) 発作の局所的終了, (4) 局所性てんかん性放電, (5) 異常な形態, (6) 全般性発作性速波律動
GGE患者の66%は, 24時間脳波記録で少なくとも1種類の非定型異常あり.
JAE, JMEはこれらの異常を最も頻繁に持つ. 次いでGTCA, CAE.
コホートで最も頻繁に見られた非定型異常は, 患者の93.4%で非定型形態.
振幅非対称性 (28%), 局所放電 (21.5%), 局所開始 (13.1%), 局所終了 (8.2%), 全般性発作性速波律動 (1.9%)

非典型的なてんかん性放電 (GGE): 振幅非対称
(A) 左前頭部に高振幅の非対称てんかん性放電
(B) 同一患者から記録された対称性の全般性てんかん性放電

非典型的なてんかん性放電 (JAE):発作の局所的起始と終結
左前頭部における局所的起始と終結

非典型的なてんかん性放電 (GGE):局所性
(A) 右側頭部の局所性放電(X)
(B) 同一患者から記録された全般性てんかん性放電

非典型的なてんかん性放電 (GGE):異常な形態
(A) 棘徐波複合の終末部には, 棘波がない徐波ある
(B) Xの波の頂点に棘波がある
(C) 先行する徐波 (Y) の下降脚に棘波がある

非典型的なてんかん性放電:全般性速波律動
(A)覚醒時, (B)睡眠時
【脳波に影響を与える誘発因子】
GGEでは, 全般性棘波はNREM睡眠でより多くみられるが, REMではほとんどみられない
睡眠不足は, 睡眠時と覚醒時の両方で棘波放電を著しく増加させる
JMEでは, 午前中は, 午後よりも異常を示すことが多い
JMEでは, 睡眠脳波で常にてんかん性放電がみられる
GGEにおけるてんかん様放電は睡眠覚醒周期と密接に関連
患者の4.6%に覚醒と相関するてんかん性放電があり, 覚醒時にてんかん性放電を認めた患者はすべてGGEと診断された
JMEでは, てんかん性放電は, 覚醒後20分から50分の間に検出
てんかん性放電の67%がNREM 睡眠中に検出されるのに対し, 33%は覚醒時
【過換気】
JAEおよびCAEと診断された小児コホート (平均年齢9.3歳) では, 過換気により67%が欠神発作を誘発
未治療の小児では, 過換気はCAEおよびJAE (それぞれ87%) で欠神発作を誘発する頻度が高く, JME (33%) と比較して高い.
成人コホートを含む研究では, 過換気中に全般てんかんの患者に発作は起こらず, 発作間欠期てんかん性異常の増加は12.2%
【反射性発作】
GGEでは特定の刺激への曝露による反射発作が時折みられる.
視覚刺激を伴う反射発作は, GGE, 症候性全般てんかん, 後頭葉てんかんなど, いくつかのてんかん症候群で報告
テレビやビデオゲーム誘発性発作には, 光過敏症とパターン過敏症の両方が関与
思考などの非言語的認知刺激は, GGEにおいて反射発作を誘発する可能性がある
空間課題, カードやボードゲーム, 計算によって引き起こされる反射てんかんを対象とした研究では, 68%の患者は, 脳波で全般性てんかん性異常を示した
神経心理学的課題でてんかん性異常を誘発された38 人のうち36人の患者がGGEと診断された
読む, 話す, 書くといった言語的認知刺激では, 全般てんかんと焦点てんかんの両方が報告されている.
【症候群間の脳波の違い】

CAEにおけるIEDs
3 Hz棘徐波複合.
断片化は症例の90%以上で見られ, 主に眠気や睡眠時
発作間欠期多棘波は, 通常, 眠気や睡眠時に発生
未治療のCAEの小児のうち, PPRを示すのはわずか21%だが, 過換気誘発性欠神発作は87%
OIRDAは, CAE患者の20~30%に見られ, そのうち40%にノッチ状の波形あり
JAEにおけるIEDs
CAEに比べて欠神発作は少ない
CAEと比較すると, JAEでは欠神発作の発症に先立って, 全般性強直間代発作がより多くみられる
断片化と多棘波はすべての患者で見られ, 主に眠気や睡眠中に見られる
JMEにおけるIEDs
主に腕に生じるミオクロニー発作
全般性強直間代発作は, 欠神発作よりも頻繁に発生
睡眠不足とアルコールは強力な誘因となる
特にミオクロニー発作は, 睡眠からの覚醒後に発生することがよくある
3~6Hzの棘波および多棘波が不規則に混在することを特徴
局所性放電はよくみられる
PPRは大多数に認められる
JMEでは, 閉眼過敏症とFOSの両方が報告されている
GTCAにおけるIEDs
発症年齢の中央値は18歳で, JMEやJAEよりも有意に高い
発作間欠期脳波では, 他のGGE症候群と同様に, 全般性多棘波が認められる.
3.6Hz
てんかん性放電の密度は, CAE, JAE, JMEよりも有意に低い
欠神発作の脳波
典型的には, 整然とした規則的で律動的な発作時脳波パターンを示す
無秩序な発作時放電は, JMEではCAEよりも110倍, JAEではCAEよりも8倍多く発生する
GTCAでも, 頻度は低いものの, 不規則で無秩序な発作が見られる

JMEにおける全般性てんかん性異常 (不規則)
様々な頻度と形態の多棘波と多棘波放電が混在
【ネットワークメカニズム】
全般発作は皮質および皮質下の両側性ネットワークが関与する発作と定義
GGEでは, 発作活動はてんかんネットワーク内の特定の点から始まり, 両側性に分布するネットワーク経路を急速に活性化する
前頭葉と視床の重要性が強調されている.
ラットモデルでは, 欠神発作は体性感覚皮質から発生し, 視床へと急速に伝播
高密度脳波計
欠神発作における研究では, 背外側前頭葉および眼窩前頭葉領域で棘波放電が開始
欠神発作中に, 腹内側前頭葉ネットワークを介した徐波および棘波の伝播を伴う, 前頭側頭葉ネットワークが明らかになった
【てんかんのない人を全般てんかんと誤診】
一般人口における健康な成人の0.5%に脳波でてんかん性異常を認める.
健康な学童における脳波では0.9%
JME発症者の健康な第一近親者の6%に, 全般性てんかん性放電がみられる
【焦点てんかんを全般てんかんと誤診】
SEEG研究において, 内側前頭葉を刺激すると両側同期かつ対称的な棘波放電が誘発されることが報告
二次性両側同期の診断基準として, (1) 導入時間が2秒以上, (2) 焦点性棘波が両同期放電とは異なる形態を有すること, (3) 二次性同期化棘波と焦点性棘波の両方が, 同一部位から出現し, 形態が類似していること
前頭葉てんかんの外科的治療シリーズでは, 37%の患者で両側性同期放電が記録
皮質間伝播は, 時間差を伴う非同期放電を引き起こす
特に正中線に位置する前頭葉焦点は, GGEの全般性異常と誤診されやすい

前頭葉てんかんにおける二次性同期化
左前頭葉脳膿瘍の既往
(A) 双極モンタージュでは, 両前頭部の多棘波 (XY) が同期しているように見える. しかし, ZのF3 電極を介した局所的な鋭波が明らかである
(B) MRIでは左前頭葉脳軟化症が認められる

前頭葉てんかんにおける二次性同期化
(A) referential montage (average) は, 図14の(A)に見られるものと同じ活動. 放電は両側前頭葉に現れる.
F3とC3の局所性放電
(B) 時間軸を5秒/1ページに拡大すると, てんかん性放電が最初に左側のFp1とF3 (X) に現れ, 続いて右側 (Y) に活動が現れるため, 二次性同期化であることが確認される
[Seneviratne U, Cook MJ, D’Souza WJ. Electroencephalography in the Diagnosis of Genetic Generalized Epilepsy Syndromes. Front Neurol. 2017;8:499. Published 2017 Sep 25. doi:10.3389/fneur.2017.00499]
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