ジストニアの治療

ジストニア専門の外科の先生が, ゾルピデムを好んで使っていたので調べてみました.

Treatment of Dystonia: Medications, Neurotoxins, Neuromodulation, and Rehabilitation. Neurotherapeutics. 2020

【薬物療法】

抗コリン薬:
主に全身性ジストニアの治療に使用されているが, 他の形態のジストニアにも効果がある

ジストニアにおける抗コリン薬の有効性は, 線条体コリン作動性介在ニューロンの過活動に対する効果に関連していると考えられている

トリヘキシフェニジル (アーテン):

1986年の臨床試験では, 成人および小児ジストニア患者31人中22人に有意な効果 (最大120 mg/日)

2年以上経過した後も, 42%で劇的な効果あり

小児は成人よりも高い用量に耐えることができるが, 学校の成績を注意深く監視する必要がある.

1日2回 1 mgから, 耐えられる量に応じて3回に分けて80~100 mg/日まで漸増

これらの高用量は, 成人には利益がないか, 忍容性が低いために失敗する患者の数は多い

ジフェンヒドラミン (トラベルミン):

抗コリン作用を持つヒスタミンH1拮抗薬

小規模な試験で抗ジストニア効果あり

バクロフェン:
GABAB自己受容体作動薬

抑制性神経伝達物質であるGABAは, 基底核回路に不可欠な役割を果たす.

感覚運動の脱抑制につながるGABA制御の障害が, ジストニアに関与している可能性がある

1988年に108人の後ろ向き研究, 平均最大1日投与量82 mg(範囲25~120 mg)を平均21か月投与したところ, 20%の患者に反応が見られた

1992年の小規模な症例シリーズ, 特発性ジストニアの小児の44%に持続的に有益な効果

ベンゾジアゼピン:

GABAA受容体に結合し抑制シグナルを促進

ジアゼパム, クロナゼパム, ロラゼパムなど

ジストニアの治療における第2または第3選択薬

115人の後ろ向きオープンラベル研究, 良好な反応を示した患者のクロナゼパムの平均最大投与量は, 1日3.7 mg

後天性片側ジストニアに対する効果が報告されており, クロナゼパムはミオクローヌスジストニアに特に有効である可能性がある

ゾルピデム (マイスリー):

GABAA受容体調節薬

メイジュ症候群とルバグジストニア(X連鎖性ジストニア-パーキンソン病, DYT3)の患者3名において, ジストニア症状を平均54%改善したと報告

2012年, 様々なタイプのジストニア患者34人, 非盲検試験 (平均投与量8~12 mg/日, 範囲5~20 mg/日) では, 治療後にジストニアの重症度スコアが低下し, トリヘキシフェニジルと同等の改善

筋弛緩薬:

チザニジンなどは, 症例報告のみ

カンナビノイド:

5人のオープンラベルの前向き研究, カンナビジオール 200~600 mg/日を投与し, ジストニア評価尺度で用量依存的な改善

対照試験では, 合成カンナビノイド受容体作動薬であるナビロンは効果なし, ドロナビノールを用いた短期対照試験は頸部ジストニア患者9人に効果なし.

ゾニサミド:

24人のランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験, ミオクローヌスジストニアの運動症状に対して忍容性と有効性が証明された

ドーパミン薬と抗ドーパミン薬:
DRD, 瀬川病, 後天性ジストニア, ミオクローヌスジストニア, 急速発症型ジストニアパーキンソン症候群(RDP) などのジストニアに使用

脳深部刺激療法】

淡蒼球DBS:
後腹側淡蒼球DBSは, 重度, 薬物治療抵抗性, 全身性, 分節性ジストニア, および一部の局所性ジストニアに非常に有効であると考えられている

平均改善率はさまざまな要因に応じて50~60%の範囲

パーキンソン病や本態性振戦に対するDBSと同様に, 症状が大幅に改善することが多いものの, 完全に消失することはめったにない

局所性ジストニアにおける淡蒼球 DBS:
ボツリヌス毒素注射に反応しない頸部ジストニア患者62名, 両側淡蒼球DBSを行ったランダム化偽対照試験

クラスIのエビデンス

メイジュ症候群や眼瞼けいれんなどに対する淡蒼球神経刺激に関する症例報告と, オープンラベルのエビデンスも存在する

淡蒼球DBSの結果のばらつき:
良好な転帰にもかかわらず, 転帰には大きなばらつきがある.

ジストニアの病因に依存する

より良好な転帰を予測する臨床的特徴には, 可動性ジストニア (基礎にある拘縮に関連する固定姿勢とは対照的), 短い疾患期間, 手術時の年齢が若いこと, 重大な医学的, 認知的, および精神医学的合併症がないこと, および同時性痙縮または運動失調がないこと

一般的に, 言語障害および嚥下障害は, 四肢および体幹症状に影響を与えるジストニアよりも改善の程度は低い

DBS の安全性プロファイルと最近の進歩:
脳内出血 (1~2%, 臨床的に無症候性の出血を含む), 発作 (1%)

デバイス関連感染症, リードの移動, リードの破損は, 若年患者でより多く発生

刺激による副作用は, 運動・感覚症状から精神・自律神経系への影響まで多岐にわたり, 可逆的で非常に多様.

電極の標的と正確な位置によって異なる

両側淡蒼球刺激では, 運動緩慢, 無動, 歩行のすくみも報告されている

[Bledsoe IO, Viser AC, San Luciano M. Treatment of Dystonia: Medications, Neurotoxins, Neuromodulation, and Rehabilitation. Neurotherapeutics. 2020 Oct;17(4):1622-1644. doi: 10.1007/s13311-020-00944-0. Epub 2020 Oct 23. PMID: 33095402; PMCID: PMC7851280.]

【まとめ】

ジフェンヒドラミン (トラベルミン)

バクロフェン

クロナゼパム (リボトリール)

ゾルピデム (マイスリー)

といったところが現実的でしょうか.

DBSも期待ができそうです.

コメント

タイトルとURLをコピーしました