てんかんと睡眠

The Reciprocal Relationship between Sleep and Epilepsy. J Pers Med. 2024

睡眠構造】

非急速眼球運動睡眠 (NREM) と急速眼球運動睡眠 (REM) に分けられる

NREM睡眠はさらに, 第1段階睡眠, 第2段階睡眠, 徐波睡眠 (SWS;第3段階)に分けられる

睡眠段階の特徴

【てんかんの睡眠への影響】

発作により神経化学物質が過剰に放出され, 神経細胞の再編成を引き起こし, 神経細胞の機能を変化させる可能性がある.

発作活動の繰り返しにより, 神経細胞機能が繰り返し変化し, 通常の睡眠機能が変化する可能性がある

昼間, 夜間の発作活動は, どちらも睡眠構造に影響を及ぼす

発作は, 第1段階, 第2段階の睡眠の増加や, SWSの減少など, ノンレム睡眠の変化と関連

さらに臨床発作がない場合のてんかん放電は, ノンレム睡眠とレム睡眠の両方で, 睡眠構造の構成を変える可能性がある

【てんかんに対する睡眠の影響】

NREM睡眠の広範な皮質同期は, 発作間欠期てんかん性異常を促進する可能性がある

この高められた同期ニューロン発火は, ステージ2の特徴である睡眠紡錘波とK複合体の生成に有益であるが, 脳をてんかん発作活動に傾かせる

NREM睡眠とREM睡眠のサイクルの間, 脳は神経化学とニューロン機能に劇的な変化を起こす

睡眠とてんかんの関係を考える上で特に注目すべきは, NREM睡眠に特徴的なニューロンの過剰同期性と, REM睡眠に特徴的なニューロンの低同期性である

REM睡眠では視床皮質同期が抑制されるため, てんかん放電が減衰する

睡眠不足などの非定型睡眠活動も, 発作閾値を変える可能性がある

軽度の睡眠不足でも, ノンレム睡眠の浅い段階から, より深いSWSまでの潜時が短縮し, 非同期のレム睡眠の時間が短縮する可能性がある

発作間欠期放電の睡眠への影響】

発作間欠期てんかん放電は, 睡眠回路に関係する複雑なシグナル伝達機構を混乱させる可能性がある

成人では, 睡眠中の頻繁な発作間欠期放電は, 日中の眠気の増加と関連することがよくある

ASMの投与により夜間放電の頻度が減少し, 日中の症状が緩和されることが示されている

睡眠に関連する一般的なてんかん症候群】
てんかん患者の5人に1人は, 睡眠中にのみ発作を起こす

全般発作の19%, 局在関連発作は51%は睡眠中に起こる

前頭葉発作は睡眠中に起こる傾向が最も強い

前頭葉発作の約60%は睡眠中に始まるが, 側頭葉発作の場合はわずか10%

てんかん患者の多くは, 睡眠中に発作を起こす「覚醒てんかん」を経験する

発作の最大90%は起床後2時間以内に起こる

睡眠中に発作が起こると, 患者は焦点性意識発作で目覚め, その後典型的な焦点性意識減損発作へと進行することがよくある.

睡眠関連てんかん】

夜間前頭葉てんかん, 夜間側頭葉てんかん, SeLECTS, SeLEAS, レノックス・ガストー症候群, ランダウ・クレフナー症候群, 睡眠時棘波活性化を伴う発達性/てんかん性脳症 (DEE-SWAS)

全般性強直間代発作のみを伴うてんかん, 若年性ミオクロニーてんかん

抗てんかん薬の睡眠への影響】
フェノバルビタール, フェニトイン, バルプロ酸, カルバマゼピンなどの薬剤には催眠作用があるが, レム睡眠の減少や睡眠の断片化の増加など, 全体的な睡眠構造に大きな変化をもたらす可能性もある.

プレガバリンおよびガバペンチンは, どちらもSWSを増加させる効果があり, てんかんおよび不眠症の患者の睡眠と注意力を改善する可能性がある

フェルバメート, ラモトリギン, ゾニサミドは, 高用量では不眠症を引き起こす可能性がある

低用量ではラモトリギンとゾニサミドは, 睡眠に全体的にほとんど影響を与えない


抗てんかん薬の睡眠への影響

迷走神経刺激】
VNSが, 睡眠パラメータにも影響を及ぼす可能性があることを示す証拠がある

いくつかの研究では, VNSが徐波睡眠の割合を増加させることができると報告

これらの研究では, VNS療法を受けている人の日中の眠気が軽減したことが観察

VNSは, 側方喉頭筋の緊張増加による気道抵抗の増加, または呼吸感覚フィードバックの妨害によって, 一部の患者において, 睡眠中の気道障害を増加させる可能性がある

閉塞性睡眠時無呼吸, 中枢性睡眠時無呼吸, 低換気, 浅い呼吸などの症状を発症するリスクを高める可能性がある

【まとめ】

睡眠関連の発作, および発作間欠期てんかん様活動のほとんどは, ノンレム睡眠中に発生

ノンレム睡眠段階N2が最も一般的だが, レム睡眠では, 発作および発作間欠期てんかん様放電の発生が減少する傾向がある

ASMやVNSなどの他の治療法の使用は,睡眠を改善することも妨げることもある.

新しい抗てんかん療法が導入されたり, 治療が強化されたりする場合は, 不眠症, 日中の眠気, 呼吸器系イベントについて, 患者をさらにスクリーニングすることが重要である

[Krutoshinskaya Y, Coulehan K, Pushchinska G, Spiegel R. The Reciprocal Relationship between Sleep and Epilepsy. J Pers Med. 2024 Jan 20;14(1):118. doi: 10.3390/jpm14010118. PMID: 38276240; PMCID: PMC10817641.]

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