

眼瞼ミオクロニーを伴うてんかん (epilepsy with eyelid myoclonia)

【概要】
以前はJeavons症候群と知られていた
頻回の眼瞼ミオクロニー,
欠伸を伴うあるいは伴わない,
閉眼や光刺激で誘発,
の3つを特徴
眼瞼ミオクロニーは, しばしば覚醒直後に最も顕著である
顕著に光で誘発される眼瞼ミオクロニー (欠神は伴うことも伴わないこともある) と, 欠神発作やミオクロニー発作をもつ一群がいる
この一群は,発作起始時に顔を光源となる太陽に向けることがあり,日光を求める行動から以前は「ひまわり症候群(sunflower syndrome)」「顕著な光誘発を伴うEEM」と呼ぶことができる.
【臨床的背景】
発症年齢のピークは6-8歳で, 範囲は2-14歳である
男比は2:1と女性に多い
既往歴および出生歴は正常
発達や認知機能は正常であることが多いが, 境界域知能や知的障害のある患者もみられる.
顕著な光誘発を伴う一群では, 約半数が知的障害や注意力の問題を抱えており, これらは年齢とともに明らかになる
【経過】
EEMは薬剤抵抗性であることが多い
全般強直間代発作はASMでしばしば抑制されるが, 眼瞼ミオクロニーは完全には制御されない.
成人期には, 眼瞼ミオクロニー単独では脳波変化を伴わないことがあるため, 運動障害とみなされることがある
EEM はしばしば生涯続く疾患となる
顕著な光誘発を伴う一群では, 過剰な投薬を避けるため行動管理が重要と考えられる
つばの広い帽子やラップアラウンドサングラスの着用など, 光への曝露を減らすような環境対策が重要
患者によっては, 特定の青レンズ (Z1)で光過敏反応を減弱できることがある
【発作】
眼瞼ミオクロニーは診断に必須
眼球の上方偏位や頭部の伸展を伴い, 短い反復性の, しばしば3-6Hzの律動的な眼瞼のミオクロニーれん縮からなる.
発作は非常に短く (通常は1〜3秒未満, 常に6秒未満), 一日複数回, 一時間に何度も出現する.
典型的には, 不随意あるいは随意的にゆっくり閉眼したり, 明るい光や日光へ暴露することで誘発される
眼瞼ミオクロニーの出現中は, 意識は保たれるか軽度に障害される.
最大20%の患者で眼瞼ミオクロニーてんかん重積状態が出現し, 軽度の意識と反応性の障害を伴い反復する眼瞼ミオクロニーを繰り返す.
眼瞼ミオクロニーは,軽度の意識減損を伴う欠神発作を伴うこともある.
眼瞼ミオクロニーを伴わない定型欠神発作を示す患者もいる.
全般強直間代発作は大半の症例で起こるが, 通常はまれである.
顕著な光誘発を伴う患者では,
典型的には眼瞼ミオクロニー (欠神を伴う, あるいは伴わない), 欠神発作, ミオクロニー発作が,
光源に向かって目の前で手を振る, 額をこする, アナログテレビに近づいていく, その他の手段用いることで光の明滅を作り出す行動に関連して起こる
持続的に誘発した場合, 全般強直間代発作を起こす可能性がある.
3〜13%の患者に熱性けいれんが起こる.
頻繁な手足のミオクローヌスがある場合は, 他の症候群の診断を示唆する.
焦点起始発作は除外項目である.

【脳波】
背景活動は正常
脳波の背景の顕著な徐波化は他の診断を示唆する.
発作間欠期には, 速い (3-6Hz) 不規則な全般性多棘徐波複合の短いバーストが頻回に出現する.
閉眼により誘発されるfixation off sensitivityや間欠的光刺激によりてんかん様異常が活性化され, しばしば欠神を伴う, あるいは伴わない眼瞼ミオクロニーが誘発される
若い患者では通常光過敏性を示すが, これは年齢やASMの投与で目立たなくなる.
てんかん様活動は過呼吸でも誘発される.
光誘発を伴う一群では, 光誘発により全般性棘徐波異常も惹起される.
これらの患者では, 間欠的光刺激により, 短い眼瞼ミオクロニーや定型欠神発作, ミオクロニー発作が誘発されることがある.
全般性棘徐波活動のバーストは, 睡眠中にはしばしば短く断片化する断片化した全身性棘徐波複合は焦点あるいは多焦点性棘徐波複合のように見えるが, 一貫してある部位に限局はしない.
焦点性棘徐波複合の形態は, 全般性棘徐波パターンに類似する.
眼瞼ミオクロニーの発作時記録では, 高振幅で不規則な全般性多棘波あるいは多棘徐波複合を示し, 3-6Hzの周波数の律動的な棘波あるいは多棘徐波複合が続くことがある.
欠伸を伴うあるいは伴わない眼瞼ミオクロニーは光を完全に除去すると終了する.
眼瞼ミオクロニーは意識消失を伴うことも伴わないこともある.
【遺伝】
本症候群は, 他の特発性全般てんかんと共通した素因的病因があると考えられる.
発作やてんかんの家族歴は症例の25%〜83%に認められ, 罹患親族のほぼ全員が全般起始発作を有している.
約20%の症例にIGE, つまりCAE, 若年欠神てんかん, 若年ミオクロニーてんかん, あるいは全般強直間代発作のみの家族歴
約半数の患者で, 素因性てんかん熱性けいれんプラスに合致する家族歴がある
【鑑別診断】
・欠神発作を伴うIGE症候群 (CAE, 若年欠神てんかん, 若年ミオクロニーてんかん) では, 脳波上光過敏性を示すことがあるが, 顕著な眼瞼ミオクロニーはみられない.
・POLE は視覚誘発発作を呈するが, 眼瞼ミオクロニーは伴わない.
https://www.ilae.org/files/dmfile/childhood-onset—japanese.pdf

縦の双極誘導:
局在がはっきりしないspike and wave complexを認める

Referential montage (耳朶):
全般性のspike and wave complexを認める

Referential montage (average):
局在がはっきりしないspike and wave complexを認める

縦の双極誘導:
閉眼とともに, 局在がはっきりしないspike and wave complexが誘発された.

Referential montage (耳朶):
閉眼とともに, 全般性のspike and wave complexが誘発された.

Referential montage (average):
閉眼とともに, 局在がはっきりしないspike and wave complexが誘発された.

Referential montage (Cz):
閉眼とともに, spike and wave complexが誘発された.
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