ミオクロニー欠神発作を伴うてんかん:
日単位のミオクロニー欠神発作を呈する.
欠神発作は, 3Hzの律動的な上肢のれん縮を伴い, 発作中の腕の強直性外転と重なる (歯車の動きのように見える).
本症は, IGEと共通の素因性病因を持つと推定.
ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん:
発作の活動期 (嵐期) には発達の停滞, あるいは退行を示し, 発作がコントロールされると改善する.
しばしばわずかな発声を伴い近位筋に影響を及ぼす短いミオクロニーれん縮と, 引き続く非常に短い脱力成分が特徴.
全般性2-6Hz棘徐波, 多棘徐波複合からなる発作間欠時異常が, 2-6秒間のバーストで発生することが多い



ミオクロニー欠神発作を伴うてんかん (epilepsy with myoclonic absences: EMA)

EMAは非常にまれな小児てんかん症候群
日単位のミオクロニー欠神発作を呈する
【疫学】
正確な罹患率は不明
【臨床的背景】
発症年齢のピークは約7歳 (1〜12歳に分布)
男性に多く発症 (70%)
既往歴および出生歴に異常はないが, 発症時に患者の約半数に発達の問題が認められる.
知的障害は年齢とともに明らかになり, 最終的には70%の症例で認められる
神経学的診察所見は通常, 正常である
【経過】
EMAの経過は様々
患者の約40%は寛解
残りの患者ではミオクロニー欠神発作が持続するか, 他の全般起始発作型の出現とともにてんかんが進展することがある.
ミオクロニー欠神発作が唯一の発作型で薬物療法でコントロールされている場合,予後はより良好
【発作】
ミオクロニー欠神発作は診断に必須
欠神発作は, 3Hzの律動的な上肢のれん縮を伴い, 発作中の腕の強直性外転と重なる (歯車の動きのように見える)
発作は突然始まり終了する
立位であれば, 発作中に前屈みになるのが普通であるが転倒することは稀
ミオクロニーれん縮は通常両側性で対称性であるが, 片側性または非対称性であることもある
口周囲のミオクロニーや頭部や下肢の律動的なれん縮が生じることもある.
発作は10-60秒間続き, 1日に複数回起こる
覚醒度は, 完全な意識消失から意識保持まで様々である.
時には, 呼吸変化や尿失禁などの自律神経症状や複雑な身振りの自動症がみられることもある
ミオクロニー欠神発作は, 患者の1/3では唯一の発作型である.
ミオクロニー欠神重積状態はまれ
全強直間代発作 (45%にみられる), 間代発作, 脱力発作, 定型欠神発作も起こりうる
複数の発作型を示すことは予後がより悪いことを示唆
ミオクロニーれん縮を伴わない定型欠神発作を示す患者は 4%に過ぎない.
焦点起始発作は除外基準となる

【脳波】
背景活動は正常
後頭部の間欠的律動性デルタ活動は通常見られない
発作間欠時の3Hz全般性棘徐波, 多棘徐波異常が出現することがある (症例の約3分の1)
ある部位から発生する焦点性異常は, 構造的病因を検討する必要がある
全般性棘徐波放電は過呼吸によって誘発されることがある
ミオクロニー欠神発作の誘因にもなりうる
少数の患者 (14%) では間欠的光刺激により全般性棘徐波異常が誘発
全般性棘徐波複合は, 断眠, 眠気, 睡眠によっても活性化される
他の全般てんかと同様に,全般性棘徐波複合は断眠や睡眠によってしばしば断片化
ミオクロニー欠神発作には, 規則的な3Hzの全般性棘徐波複合が伴う
この3Hzの発射はミオクロニーれん縮と時間的に連動している
筋電図の記録から, ミオクロニーれん縮は両側の三角筋の顕著な強直性収縮に先行することがわかる
【画像】
正常であり, 場合により軽度のびまん性萎縮を示すこともある
【遺伝学】
20%の症例で家族歴 (通常, 全般起始発作)
まれに, 熱性けいれんの家族歴がある
EMAは素因性と考えられているが,特定の病的な遺伝子バリアントを示す症例報告は散発的にしかなく大半の症例はおそらく多遺伝子性である.
本症は, IGEと共通の素因性病因を持つと推定
【鑑別】
・小児欠神てんかん (CAE):
CAEの欠神発作では軽微なミオクロニーれん縮がみられることがあるが, 振幅は小さく, 持続的な律動性はなく, 段階的 (歯車様) な腕の強直性外転を伴うことはない
・ミオクロニー欠神発作は, 他の発達性てんかん性脳症 (DEE) でまれにみられることがあるが, 主要な発作型ではない
【まとめ】
EMAは非常にまれな小児てんかん症候群. 日単位のミオクロニー欠神発作を呈する
発症年齢のピークは約7歳 (1〜12歳に分布). 患者の約40%は寛解
欠神発作は, 3Hzの律動的な上肢のれん縮を伴い, 発作中の腕の強直性外転と重なる (歯車の動きのように見える)
焦点起始発作は除外基準となる
本症は, IGEと共通の素因性病因を持つと推定
CAEの欠神発作では軽微なミオクロニーれん縮がみられることがあるが, 振幅は小さく, 持続的な律動性はなく, 段階的 (歯車様) な腕の強直性外転を伴うことはない

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(epilepsy with myoclonic atonic seizures, EMAtS)

【臨床的背景】
通常2〜6歳 (範囲は6か月〜8歳) で発症
男児に多い
4分の1に熱性けいれんの既往歴あり
熱性けいれんの既往は, より良好な長期予後に関連する
発作発症前の発達は, 患者の3分の2で正常
発症時の神経学的所見は通常, 特記すべきものはない.
発作発症前の中等度から重度の発達の遅れは,診断の注意喚起事項として考慮されるべき
【経過】
発症はしばしば突然
多くの発作やしばしば全般強直間代やミオクロニー発作などの発作型が, 爆発的に「嵐のように」出現する.
別の症例ではより緩徐に進展する.
LGSとの鑑別のため, 最初の1年は慎重な経過観察が必要
特に発作頻度の高い時期 (爆発的または嵐のような時期) には, 薬剤抵抗性であることが多い.
全般起始発作型の頻度が増加し, NCSEの反復が認められる
この時期には, 行動や実行機能で優位に発達の停滞や, さらには退行が生じ, 運動失調がしばしば認められる
多動や攻撃性などの行動障害や睡眠障害も, 活動期にはよくみられ, 発作がコントロールされると改善または寛解する
3分の2の小児は発症から3年以内に寛解
3分の1では, 持続的に発作, 認知障害, 攻撃性, 多動性がしばしばみられる.
発作がコントロールされ, 脳波が改善すると発達の進展がみられるようになる.
発達は発症前の機能レベルに戻ることもあれば, さまざまな程度の知的障害を残すこともある.
予後不良の予測因子は, 強直発作, 繰り返すNCSE, 非常に高頻度あるいはほぼ連続的な不規則全般性棘徐波, 遅棘徐波, 全般性突発性速波活動
【発作】
ミオクロニー脱力発作は診断に必須
しばしばわずかな発声を伴い近位筋に影響を及ぼす短いミオクロニーれん縮と, 引き続く非常に短い脱力成分が特徴.
点頭を伴う程度の微細なことも, 突然の転倒を伴う顕著なこともある
純粋な脱力発作もよく見られ, 発作起始時にミオクロニー成分を欠き, 突然短時間体軸の緊張が失われ, 点頭や突然の転倒を伴う.
その他の発作としては, ミオクロニー発作(短く[100ms 未満], 転倒することもある), 欠神発作, 全般強直間代発作が頻繁にみられる.
経過中に遅れて強直発作が出現する患者もおり, より不良な長期予後と関連している
NCSEもよくみられ, 初発症状のこともある.
数時間から数日続く意識障害として現れ, 非定型欠神, ミオクロニー発作, 脱力発作の特徴を持ち, 傾眠, ふらつき, 流涎, 言語障害, 顔面と上肢に優位な不規則なミオクローヌスを伴う.
繰り返すNCSEは予後不良と関連する
てんかん性スパズムや焦点起始発作は除外項目である.

【脳波】
単形性両側頭頂部シータ律動はEMAtSの特徴であるが, すべての患者でみられるわけではない.
発作頻度の増加に伴い, 全般性の高振幅な背景の徐波化がみられることがある.
全般性2-6Hz棘徐波, 多棘徐波複合からなる発作間欠時異常が, 2-6秒間のバーストで発生することが多い
全般性放電は断片的になることがあり, 一貫した棘波焦点は見られない.
全般性棘徐波異常は睡眠に伴い活性化する.
睡眠中にびまん性または両側性の速い (10Hz以上) 多棘波のバーストからなる全般性突発性速波活動はまれにしかみられず, LGSを疑う必要がある.
過呼吸は全般性棘徐波放電や欠神発作を誘発することがある.
光過敏性はまれである.
ミオクロニー脱力発作の発作時記録では, ミオクローヌスに伴う全般性多棘波, 棘波放電と, それに続く脱力成分に伴う高振幅徐波を示す
発作時記録では, 脳波と筋電図の同時記録が推奨
多棘波は頸部筋の短いミオクローヌスと一致し, 徐波は近位四肢筋の筋活動の消失と一致する.
欠神発作は2-6Hzの全般性棘徐波複合を伴う.
NCSEの間, 脳波は高振幅な2-3Hzの不規則全般性棘徐波が長く持続し, 背景活動の徐波化を伴う.
【画像】
MRIは正常
【遺伝学】
てんかんや熱性けいれんの家族歴は, 症例の約 3 分の 1.
より良好な長期予後と関連する
EMAtSの発端者の家族には, 素因性てんかん熱性けいれんプラスという家族性てんかん症候群がみられる
EMAtSは大多数の小児において, 多因子遺伝形式を伴う複雑な遺伝をもつ
EMAtS患者の約5%は, SLC2A1の病的バリアントに関連したGLUT1欠損を有している
【鑑別診断】
・LGS
発症初期に強直発作, 脳波に2.5Hz未満の遅棘徐波と睡眠時の全般性突発性速波活動がみられる
発作発症前の発達が遅れていることが多く, 乳児スパズム症候群の既往がある場合もある.
・乳児ミオクロニーてんかん
ミオクロニー脱力発作や非定型欠神発作を欠くことで区別される
通常, EMAtSより早期に発症する.
・Dravet 症候群
生後1歳未満の発熱や体調不良によって誘発される遷延性一側間代発作.
ミオクロニー脱力発作を欠くことで区別される.
・DEE-SWASまたはEE-SWAS
退行と睡眠中のてんかん様異常の著しい活性化を伴い, ほぼ連続したびまん性棘徐波複合を示す
ミオクロニー脱力発作はみられない.
・CLN2
正常発達または言語遅滞のみを伴う小児に発症する.
EMAtSの表現型を示すこともあるが, 進行性の運動および認知機能の低下と運動失調がみられる.
脳波は1-3Hzの光突発反応を示すため, 低周波での検査が重要である.
【まとめ】
EMAtSは, 以前はDoose症候群として知られた.
3分の2の症例では, 正常発達の状態で小児期早期に始まる
臨床症状や脳波の特徴は, 初期には揃わないことが多く, 出現までには時間がかかる.
典型的には, 発作の活動期 (嵐期) には発達の停滞, あるいは退行を示し, 発作がコントロールされると改善する
ミオクロニー脱力発作は診断に必須
しばしばわずかな発声を伴い近位筋に影響を及ぼす短いミオクロニーれん縮と, 引き続く非常に短い脱力成分が特徴.
単形性両側頭頂部シータ律動はEMAtSの特徴であるが, すべての患者でみられるわけではない.
全般性2-6Hz棘徐波, 多棘徐波複合からなる発作間欠時異常が, 2-6秒間のバーストで発生することが多い
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