片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群 (hemiconvulsion-hemiplegia-epilepsy syndrome, HHE)


HHEは, 乳児期や幼児期の焦点運動てんかん重積状態に続発する稀な症候群
通常, 4歳未満の小児の発熱性疾患に伴って発生する焦点間代てんかん重積状態
てんかん重積状態発症時の神経画像検査では, 患側半球の浮腫性腫脹を認める.
急性期を過ぎると大脳半球が萎縮し, その後, 薬剤抵抗性の焦点起始発作が出現する.
患者の大半には, 結果として永続的な運動障害が生じる
発生機序は不明
【疫学】
稀な症候群
遷延性発作やてんかん重積状態に対する積極的治療が強く推奨され始めて, 医療資源を備えた国々での罹患率は著しく低下
【臨床的背景】
発症年齢は通常4歳未満
発症以前の発達および神経学的診察所見は正常
長時間の焦点てんかん重積状態を呈し, その直後に片麻痺を呈する.
4歳未満の小児が有熱性てんかん重積状態の後に持続する片麻痺を呈した場合は, HHE を考慮する必要がある
優位半球が罹患した場合, 最大4分の1の症例で失語が急性に出現することがある
【疾患の経過】
大多数の症例が永続的な運動障害を残す.
20%の症例ではこの脱落症状は軽微であったり, 12か月以内に寛解したりする
失語があっても多くは2か月以内に寛解するが, 持続することもある
その後の焦点起始発作出現までの期間は様々なであるが, 85%は初回のてんかん重積状態から3年以内に発作を発症している
慢性期の焦点起始発作は, 通常は薬剤抵抗性
半球切断術などの外科的治療で改善する場合がある
多くの症例が,様々な程度の知的障害を残す.
【発作】
最初の発作は典型的には, 有熱時の焦点間代てんかん重積状態
間代症状は軽微であることがある.
焦点てんかん重積状態の後, 通常数か月から数年, 発作のない期間がある.
期間は様々だがその後, 焦点運動発作や焦点起始両側強直間代発作が出現し, 通常は薬剤抵抗性となる.
発作は側頭葉に限局することもあれば, 側頭外領域に起始することや, 多焦点性であることもある

【脳波】
急性期の焦点てんかん重積状態中に脳波が記録された場合, 発作性放電は通常, 罹患側でより高振幅な両側性の律動性(2〜3Hz) 徐波を特徴とする
さらに罹患側では, しばしば漸増律動 (10Hz) がみられる
発症時には背景活動は正常な場合があるが, 慢性期には過剰な徐波化 (しばしば非対称) とてんかん様異常を認め, 罹患側に顕著であるが両側性のこともある.
【画像】
てんかん重積状態直後のMRIでは, 主に罹患半球の皮質下白質にT2 高信号および拡散制限を伴う半球びまん性の信号異常が認められる
罹患半球の浮腫は重度で, 圧排効果や脳ヘルニアを生じる危険がある
磁気共鳴スペクトロスコピー (MR spectroscopy) が行われた場合, 罹患半球はN-アセチルアスパラギン酸の減少と軽度の乳酸増加を示す.
てんかん重積状態から8〜15日目には, 細胞障害性浮腫は減少し, 見かけの拡散係数 (apparent diffusion coefficient)画像は正常化, T2高信号は持続し, 容積減少が進行する.
1か月以内に罹患大脳半球の萎縮が明らかになる.
海馬硬化もよくみられる
【遺伝学とその他の検査】
遺伝学的検査や, 凝固・代謝・感染・免疫に関連する疾患の検査は通常正常
【鑑別診断】
・ Dravet 症候群
乳幼児期に発熱性疾患に伴う遷延性片側間代発作を呈し, 一過性の Todd 麻痺を呈することがある.
しかし, この症状は改善し, HHEの典型的なMRI異常は認めない.
・ Sturge-Weber症候群
焦点運動てんかん重積状態を呈することがあるが, 皮膚病変とMRIが異なる
・ Rasmussen候群
一側の焦点運動発作を呈するが, 進行はかなり緩徐
焦点てんかん重積状態は進展の後半に見られ, 発症するとより持続的となる特徴がある.
MRIでは, 発作発症時には正常か軽度の島萎縮を示すことがあり, 数ヶ月から数年かけて局所性白質変化や半球性萎縮に進展する.
・ 髄膜炎および脳炎.
・ 出血性または虚血性の脳卒中.
・ ポリメラーゼγまたはMELASに関連するミトコンドリア病.
https://www.ilae.org/files/dmfile/childhood-onset—japanese.pdf
【まとめ】
4歳未満の小児の発熱性疾患に伴って発生する焦点間代てんかん重積状態
てんかん重積状態発症時の神経画像検査では, 患側半球の浮腫性腫脹を認める.
急性期を過ぎると大脳半球が萎縮し, その後, 薬剤抵抗性の焦点起始発作が出現する.
焦点てんかん重積状態の後, 数か月から数年, 発作のない期間がある.
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