Routine and sleep EEG: Minimum recording standards of the International Federation of Clinical Neurophysiology and the International League Against Epilepsy. Epilepsia. 2023
IFCNとILAEによるルーチンおよび睡眠脳波の記録に関する推奨


【電極とモンタージュ】
ヘッドキャップの場合は, 電極インピーダンスが基準を満たしていれば許容される.
ドライ電極はまだ推奨されていない (アーチファクトが多い).
可能ならば, 10-20に, 側頭部電極を6つ追加したIFCNモンタージュが望ましい.
心電図 (ECG) チャンネルを使用する.
運動症状が疑われる場合は, 少なくとも2つの筋電図 (EMG) チャンネルを推奨
少なくとも1台のカメラを使用して録画することを強く推奨.
眼球運動アーチファクト判定のために, 2つの眼電図 (EOG) 誘導を配置することは可能.
右側では外眼角の外側1 cm上方, 左側では外眼角の外側1 cm下方に配置
【電極インピーダンス】
インピーダンスを最大10 kΩまで許容すると, 不均衡なインピーダンスにより異なる電位を増幅する機能を損なう可能性がある.
5 kΩ未満のインピーダンス値が推奨され, 10 kΩ未満のインピーダンス値は許容範囲
【記録と判読】
100 Hzを超える周波数は, 現時点では臨床的に重要とは見なされていない.
推奨される高周波フィルター設定は70 Hz, 低周波フィルター設定は0.5 Hz (時定数0.3 s)
推奨される成人の記録は7 μV/mm, 小児は10 μV/mm
判読において, これらの調整, 電位マップ表示, 注釈をいれることは推奨される.
【記録時間】
ILAE, ACNS, カナダ臨床神経生理学会は, 日常的な脳波検査は少なくとも20分間, 睡眠脳波検査については30分間の記録を推奨
成人患者において, 20分と30分の脳波診断率, 30分と60分の睡眠脳波の診断率に有意差はなし.
乳児や小児の睡眠記録は, 眠りに落ちる可能性が高い食後の時間帯に行うことが望ましい
若年性ミオクロニーてんかんが疑われる患者には, 朝の時間帯
SeLECTや乳児てんかん性スパズム症候群が疑われる患者には, 睡眠記録を優先
乳児てんかん性スパズム症候群が疑われる場合は, てんかん性スパズムを記録する可能性を高めるために, 覚醒後も10分間記録を延長する
【睡眠賦活】
24時間の断眠は, いずれの研究も採用されていない
部分的な断眠は, EEG検査中に睡眠を得る確率を高めることが示された
12歳未満の小児では, メラトニンによる睡眠導入も可能
1~4歳の幼児の方が, 年長児よりもメラトニンの有効性が高い可能性がある
メラトニンと部分的な断眠を併用した場合も, 睡眠潜時が有意に短縮
いずれの研究においても, てんかん性異常の発生率に差はなし.
メラトニンを使用する場合には, 検査の30-60分前に1~3 mg
メラトニン以外の睡眠導入薬を使用する利点を示す証拠はない
メラトニンが市販されていない場合は, 患者の安全が確保されるときに抱水クロラールを使用できる


【過換気】
過換気によって引き起こされた発作の16%, 発作間欠期脳波異常の30.4%, てんかん性放電の30%が, 5分間の過換気の最後の2分間に発生
欠神発作の85.5%が, 過換気から1.5分以内に誘発
典型的な欠神発作が強く疑われる場合には, 少なくとも3分間の過換気を, 延長または繰り返すことを推奨
成人, 小児の0.92-3.0%でてんかん性異常を誘発
100人の健康な若い男性の脳波を調べた研究では, 過換気によっててんかん性異常は誘発されなかった
遺伝性全般てんかん患者の23.7%で, てんかん性異常の頻度が有意に増加
全般性強直間代発作がみられた患者は3170 人中わずか1人
過換気中に患者の0.9-1.1%にPNES
患者に発作誘発が高まると説明した場合, PNESの頻度が増加した
少なくとも3分間, 15~30回/分の深呼吸
小児の場合, 風車が役立つ.
すべての患者グループで, 過換気後に2分間のEEGを記録することが望ましい
禁忌: 鎌状赤血球症, もやもや病, 動脈瘤を含む脳血管奇形, 過去 3 か月以内の脳血管イベント, 頭蓋内圧亢進, 心筋梗塞, 不整脈, 重篤な心疾患, 重篤な肺疾患, 妊娠
【光刺激】
光発作反応を示した45人のうち, 24.4%では眼を閉じた場合にのみ, 光発作反応が誘発された
光発作反応は小児の8.0%に発生し, 45%は刺激後の9秒間に確認された.
そのため, 各光刺激後に10秒以上インターバルを使用するよう推奨
「開眼拡散板使用」
14~17歳の特発性全般てんかん患者の30.5%で, 光刺激が唯一のてんかん性異常を引き起こした
患者の0.72% (39/5383) にIPSによる発作が見られ, そのうち0.04%に全身性強直間代発作
患者の0.9% (49/5383) では, IPSが心因性の非てんかん性発作を引き起こしました
活性化法の潜在的な発作誘発効果について患者に説明した後, 心因性非てんかん発作の発生率が有意に上昇
明確な異常が得られた場合, 同じEEG記録中に光刺激を繰り返す必要はない
妊娠は禁忌
光刺激は, 睡眠の可能性を低下させる.
過換気は, 睡眠の可能性を高める.
したがって, 小児では, 睡眠EEGの開始時に過換気を行い, 最後に光刺激を行うことを推奨
過換気, 光刺激は禁忌がない限り, ルーチンで行うことを推奨
発作を誘発することがわかっている場合は, 触覚, 突然の音, 難しいテキストの音読などの刺激方法を使用することを推奨

睡眠脳波賦活のための睡眠時間
12歳以上の小児: いつもよりも2時間就寝を遅らせるが0時には就寝. 4時起床.
成人: 0時就寝, 4時起床.

睡眠脳波時の発作確認
「名前は?」「腕を挙げて」「馬, テーブルという言葉を繰り返して」「発作前に何か感じた?, さっきの言葉を思いだせる?」
[Peltola ME, Leitinger M, Halford JJ, et al. Routine and sleep EEG: Minimum recording standards of the International Federation of Clinical Neurophysiology and the International League Against Epilepsy. Epilepsia. 2023 Mar;64(3):602-618. doi: 10.1111/epi.17448. Epub 2023 Feb 10. PMID: 36762397; PMCID: PMC10006292.]
【まとめ】
少なくとも1台のカメラを使用して録画することを強く推奨.
5 kΩ未満のインピーダンス値が推奨
推奨される高周波フィルター設定は70 Hz, 低周波フィルター設定は0.5 Hz (時定数0.3 s)
推奨される成人の記録は7 μV/mm, 小児は10 μV/mm
判読において, これらの調整, 電位マップ表示, 注釈をいれることは推奨される.
若年性ミオクロニーてんかんが疑われる患者には, 朝の時間帯
SeLECTや乳児てんかん性スパズム症候群が疑われる患者には, 睡眠記録を優先
乳児てんかん性スパズム症候群が疑われる場合は, てんかん性スパズムを記録する可能性を高めるために, 覚醒後も10分間記録を延長する
過換気, 光刺激は禁忌がない限り, ルーチンで行うことを推奨
過換気禁忌: 鎌状赤血球症, もやもや病, 動脈瘤を含む脳血管奇形, 過去 3 か月以内の脳血管イベント, 頭蓋内圧亢進, 心筋梗塞, 不整脈, 重篤な心疾患, 重篤な肺疾患, 妊婦
光刺激禁忌: 妊婦
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