SEEG planningにおける頭皮上脳波

頭皮上脳波を判読する際は, どこから由来し, どのように伝播した結果であることを考えることが重要であると考えています.

このことは, SEEGのプランニングにも役立ちます.

Extracranial Interictal and Ictal EEG in sEEG Planning. Neurosurg Clin N Am. 2020

【EbersoleⅠ/Ⅱ型spike】

側頭葉てんかんで異なる分布を示す

Ⅰ型spike: 垂直 (上下方向) の双極子. 内側側頭葉にてんかん焦点を示す

Ⅱ型spike: 水平方向の双極子. 側頭葉新皮質の特徴.

Ⅰ型spikeは, 扁桃体海馬構造のみをターゲットとする内側側頭葉てんかん (MTLE) 仮説を支持

Ⅱ型spikeは, 複数の電極を使用する外側アプローチが必要になる

IEDs: 双極, AVのモンタージュ

10秒間, HF 70 Hz, 7~10 μV/mm

(A) 内側側頭葉てんかん. EbersoleⅠ型spike

上: F3で位相反転

下: 前中側頭部を主体. 前頭中心部は陽性電位で垂直方向の双極子

(B) 大脳新皮質側頭葉てんかん. EbersoleⅡ型spike

上: 前中側頭部spike

下: 前頭中心部に陰性電位主体. 水平方向の双極子

【海馬に限局したspike】

頭皮脳波では検出されない

海馬閉野形状により, 海馬内には電位勾配が形成されるが, 外側には電位勾配が形成されない

海馬spikeの閉野特性

右側頭葉てんかんのsEEG

ページ10秒, bipolar montage (3~200 Hz, 50 μV/mm)

右扁桃体, 前海馬, 後海馬の活動を示している

小さい数字 (例: RAH1, RAH2) は深い位置,

大きな数字 (例: RAH 9、RAH 10) は浅い位置,

高振幅後海馬放電 (RMH1-RMH2, RMH3-RMH4, 大きい赤い円, 垂直矢印) は, 外側では検出されない

独立した新皮質スパイク (RPH7-RPH8, RPH9-RPH10, 小さな赤い円, 斜め矢印)

海馬spikeが頭皮上脳波で検出されるのは, 外側側頭皮質が動員されるため

(A) 10秒間ページ. bipolar montage, HF 70 Hz, 7 μV/mm

内側側頭葉てんかん, FT10 (右側頭前部) が最大陰性電位のspike.

大脳新皮質の関与を示唆

(B) 右海馬にEbersoleⅠ型双極子

側頭葉てんかんは, 両側にIEDsを認めることがある

左海馬硬化症

10秒間ページ, bipolar montage, HF 1~70 Hz, 7 μV/mm

上: 左側頭部に反復するspike

下: 同じ患者の右側頭部spike

【二次性同期化IEDs】

特に, Fp1/Fp2で最大となる前頭極性てんかんの棘波は, 全般てんかんの棘波と混同されることがある

(A) 前頭極の焦点てんかん

両前頭葉spikeは全般性てんかん性放電に似る

spikeは前後方向に急激に減衰しているため, 焦点てんかんが疑われる

spikeの極性 (矢印) は, 初期陽性で, 深部発生源 (基底内側前頭領域) が疑われる

(B) JMEの全般性polyspike

明らかな非対称性はない.

心電図アーティファクトはmyoclonic seizureの筋電図を示している.

【誤った側方化のIEDs】

前頭極, 内側前頭葉てんかんでは, 双極子が正中線を越えて投射されると, 頭皮上脳波で反対側にspikeが出現することがある.

前頭極てんかん (figure 8と同じ患者) の誤った側方化

上: 睡眠中の両前頭部spikeは, 明らかに左半球で高い

下: spikeの信号源は右側だが, 電流方向が大脳半球を横切るように向いているため, 頭皮上脳波のFp1に分布している

【二次性同期化IEDsのSEEG計画】

二次性同期とは, IEDsが高速伝導の脳梁繊維に沿って, 両半球間の狭い隙間を急速に広がること

明確な側方化発作症状のない非病変患者では, 左半球てんかんと右半球てんかんを区別することが困難

両側インプラントにつながる.

内側前頭葉発作症状と二次性同期化IEDs

figure 7と同じ患者に対するSEEG計画

左前頭葉は, 直交配置した電極 (LFP, LAF, LMF, LPF, LAC) で広くサンプリング

ネットワークをより広く理解するため, 側頭葉の関与は左海馬 (LAH) をターゲットとした単一の電極で調べる

新皮質側頭電極 (LAT, LMT, LPT) は, 上側頭表面の皮質がわずかに肥厚している可能性があり配置

左島皮質は前方と後方からサンプリング (LAIN, LPIN)

右前頭葉と島皮質領域は, まばらにサンプリング (RMF, RPF, RAIN)

AC: 前帯状皮質. AF: 前前頭葉. AH: 前海馬. AIN: 前島皮質. AT: 前側頭葉. FP: 前頭極性.

L: 左. MF: 中前頭葉. MT: 中側頭葉. PF: 後前頭葉. PIN: 後島皮質. PT: 後側頭葉. R: 右

【発作時脳波】
内側側頭葉てんかん:

海馬の閉野特性のため, 海馬起源の発作は, 発作開始時に頭皮上EEGに現れない場合がある.

ライジング基準では, 患者が報告する前兆などから, 頭皮上脳波出現まで最大30秒の遅延を許容

シータ波 (4~7 Hz) は, 内側側頭葉起源と高い相関関係あり

デルタ波 (<4 Hz) より遅い, またはシータ波 (>7 Hz) より速い徐波は, 側頭葉新皮質起源の可能性が高くなる.

前頭葉背外側:

速波律動は限定された発生源を示す

前頭極, 前頭眼窩, 内側前頭葉:

変動性が高く, ネットワークの伝播パターンに依存する

側頭葉への拡散を伴う眼窩前頭葉発作は, 側頭葉発作時EEGに似る.

内側前頭面に沿った伝播は, 非局在性の可能性がある

頭頂後頭葉: 視覚領域接続が豊富なため, 開始パターンよりも拡散パターンでより顕著になる

前頭部に目立つことがある.

異所性灰白質:

個別の異所性灰白質を可能な限り多く, ネットワークに関与していると考えられる領域をサンプリングする

(A) 右側頭葉由来の5~6 Hzの律動性徐波

(B) 左側頭極FCD. 左側頭葉由来の徐波は約4 Hz で, より広範囲に分布

Case 1】
47歳女性. 右利き

発作: パニック感と過呼吸から始まり, 数分間続く意識減損発作.

発作間欠期脳波: 正常.

発作時脳波: 左側頭部に律動性シータ

MRI検査: 左海馬硬化症

計画: 強い自律神経症状および感情的特徴を伴う発作の徴候は, MTLEでは非典型的であると考えられた.

発作間欠期EEG異常がまったく見られず, 発作時EEGが不明瞭だったことから, 扁桃体海馬複合体 (帯状皮質, 眼窩前頭葉), 島皮質に加えて, 深部辺縁系領域を含むネットワークが存在する可能性を疑った

SEEG: 左側頭葉は, 扁桃体と海馬をターゲットにするために直交的にサンプリング.

より後方の電極は, 海馬傍回をサンプリングするために使用

側頭葉外は, 前島皮質, 前帯状皮質, 前帯状皮質/中隔領域, 眼窩前頭皮質に導入

(A) 左側頭葉は, 直交配置された電極 (LTP, LAM, LAH, LMBT) でサンプリング

追加の電極は, 左前島 (LAIN) に加えて, 深部辺縁系構造 (LLOF, LLMF, LAC, LRC) をサンプリング

AC: 前部帯状皮質. AH: 前部海馬. AM: 扁桃体. L: 左. LOF: 外側眼窩前頭葉. MBT: 中基底側頭葉

MOF: 内側眼窩前頭葉. RC: 前部帯状皮質. TP: 側頭極

(B)10秒間ページ. SEEG. bipolar montage, 5~70 Hz, 50 μV/mm

左海馬 (LAH1-LAH2, LAH3-LAH4) で, 発作開始

spikeは海馬からのみ発生.

すべての発作は, 海馬内での極めて局所的な開始

左海馬アブレーションで経過良好

【Case 2】
21歳男性. 右利き

発作: FIAS

発作間欠期脳波: 側頭部全体に右の多棘波が, 左の多棘波よりも大きく見られた.

発作: 右半球の後下. いくつかは, 左側頭部からも記録

MRI: 右側下内側側頭葉にFCD

(A) 右半球に広く分布するpolyspike

(B) 左側頭部polyspike

(C) 右側頭葉部にベータ帯域速波律動で発作開始

(D) 左側頭部の律動性シータ

頭皮上脳波で両側の所見ありSEEGを施行.
右側頭葉は, 上側頭回を通して斜めにサンプリング

FCDの前方と後方をサンプリング

側頭極から側頭後頭領域までの側頭新皮質をサンプリングするために直交配置

扁桃体と海馬をターゲットとする電極が, それぞれ 1 つずつ

左側頭葉の配置は, 右側と同様だが本数は少ない

(E) 右側頭葉下内側部FCD

(F) 病変領域を含む右側頭葉を直交配置 (RTP, RAM, RAH, RABT, RPBT)

サンプリングは, 舌部, 後脳梁後部, 後頭葉

ABT: 前基底側頭葉, LIN: 舌部, O: 後頭葉, PBT: 後基底側頭葉, RS: 脳梁後部

(G) 10 秒間ページ. bipolar montage. 5~70 Hz, 50 μV/mm

上: 右側. 右扁桃体海馬内および前基底側頭葉電極の全長にわたってspike

下: 左側. 左後側頭葉基底部の浅部に持続するpolyspike


(H) 1~70 Hz, 7 μV/mm

上: 右側電極で発作開始 (矢印)

下: 左海馬内で局所性発作開始 (矢印)

発作間欠期spikeは, 右海馬と, FCDの大脳新皮質電極の外側, 内側の接触部から発生

左側は多くないが同様の分布だった

臨床症状を伴う4回の発作が右側から発生, 海馬と大脳新皮質の接触部にわたって多発

左側からはsubclinicalかFASで, より限定された海馬-基底側頭葉起源の発作が18件記録

最終的にVNSの方針

側頭葉てんかんにおける対側の発作間欠期spikeは, 単形性の特徴を示す傾向がある.

発生源が特定されると海馬に極大値を示す

この患者の左側のspikeはpolyspikeであり, より表在性の発生源と一致

左側の発作は, 右側の変化とは独立して現れ, 臨床的に現れる右側の発作とは著しく異なる特徴を持っていた

【Case 3】
50歳男性

発作: 右眼が外側に引っ張られる感覚, 右側の空間認識困難

IEDs: 側頭部に左優位のspike

発作時脳波: 右または左の律動変化

MRI: 左後頭極にFLAIR/T2高信号

(A) 左側頭部spike

(B) 独立した右側頭部spike

(C) 左側発作起始, ベータ帯域

(D) 右側頭部の律動的シータ

前兆を伴う棘波と発作時脳波所見は, 内側に位置する小さな病変と完全に一致

側頭部の棘波と側頭葉の症状として記録された発作は, どちらかの海馬に伝播を示唆

病変は3つの電極でサンプリング

同側海馬への前方伝播経路が, 直交配置された前方配置の電極で調査

最も前方の電極で扁桃体をサンプリング

右側では, 後頭部への配置を必要とせず, 基本的に同様のシーケンス

(E) 左後頭極に高信号

(F) 左半球は, 1つの病変内 (LO) と3つの病変周囲 (LSO, LMO, LIO) を含むようにサンプリング

サンプリングは同側側頭葉の前方

IO: 下部, MO: 中後頭, SO: 上部後頭

(G) 5~70 Hz, 50 μV/mm

右と左の扁桃体海馬にspike

病変部位の接触部LO13-LO14およびLO31-LO32に小振幅のspike

電極LO→LO1, LSO→LO2, LMO→LO3, LIO→LO4

上: 視覚前兆に対応する病変周囲電極上のガンマ波 (矢印)

下: 一部の前兆は右海馬 (ボックス) および左大脳新皮質側頭葉と左海馬への伝播

両側かつ独立して, 海馬に大量のspikeを認めた

spikeは病変周囲領域において, 振幅は小さいが頻度は多かった

病変周囲電極に速波律動を伴う複数の視覚前兆あり

FIAS時は, 対側海馬に伝播し, さらに同側海馬に伝播

右海馬からも独立した発作開始が観察された

患者は後部皮質病変切除術を受けた

後部皮質-海馬ネットワークが関与する, いわゆる「側頭葉プラス」てんかんの典型的な症例だった.

[Kalamangalam GP. Extracranial Interictal and Ictal EEG in sEEG Planning. Neurosurg Clin N Am. 2020;31(3):345-371. doi:10.1016/j.nec.2020.03.008]

【まとめ】

SEEGの仮説を立てる際には, 頭皮上脳波のてんかん性異常が, どこから発生し, どのように伝播した結果か考えることが重要です.

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