睡眠時棘徐波活性化を示す発達性てんかん性脳症と睡眠時棘徐波活性化を示すてんかん性脳症
(developmental and epileptic encephalopathy with SWAS and epileptic encephalopathy with SWAS)



DEE-SWASおよびEE-SWASは, 睡眠中の顕著な棘徐波活性化に伴い, 認知, 言語, 行動, 運動の退行が様々な組み合わせで生じることを特徴とする疾患群
脳波パターンの出現から数週間以内に退行がみられる.
Landau-Kleffner (ランドー・クレフナー) 症候群 (LKS) は, EE-SWASの特殊なサブタイプで, 主に言語機能が退行し, 後天的な聴覚失認を伴う
診断を確定するには,睡眠時脳波検査が必要
睡眠時電気的てんかん重積状態 (ESES) は徐波睡眠の85%以上を占める, ほぼ一定のてんかん様活動と定義
睡眠に占める割合がもっと低くとも, 認知または行動機能の顕著な退行を伴うことがある.
EE-SWASは, 発症前の発達が正常で, ノンレム睡眠中の緩徐な (1.5-2Hz) 棘徐波複合の活性化
DEE-SWASは, 既存の神経発達症を持つ患者に, 睡眠中の棘徐波複合の顕著な活性化と同時期に, 認知, 言語, 行動, 運動機能に様々な組み合わせで持続的悪化を認める
SeLECTsやSeLEASなどの特定の焦点てんかん症候群や, 他の構造的焦点てんかんは, 一過性または長期的にEE-SWAS に進展する可能性がある.
DEE-SWASおよびEE-SWASは稀であり, 小児の三次てんかん施設における全てんかん患者の0.5〜0.6%
DEE-SWASおよびEE-SWASは, 2〜12歳 (ピークは4〜5歳) で発作を発症
発作発症後1〜2年で認知・行動の退行または停滞を伴って, 脳波上睡眠時棘徐波活性化を示すようになることが特徴
既往歴や出生歴は正常であることが多いが, 脳の構造的病変は, DEE-SWASおよびEE-SWASの危険因子
生後早期の視床損傷や両側傍シルビウス裂多小脳回などの奇形が関連する.
協調運動障害やジストニー症状を伴う運動機能の退行が起こることもある
【経過】
構造的病変がある患者でも, 臨床発作は通常思春期頃に寛解する
臨床発作の消失は, 脳波パターンの消失に先行する場合, 同時に生じる場合, または遅れて生じる場合がある
脳波上のSWASパターンもまた, 通常は青年期までに消失する
焦点性異常は, 覚醒時, 睡眠時ともに持続することがある
睡眠構造は, SWASの消失とともに正常化する
神経認知や行動の改善は通常, 脳波上のSWASの消失とともにみられる
多くの患者には障害が残り, 約半数の患者では自立した機能が制限されるほど重度
2年以上持続した場合, 予後不良リスクが高くなる
【発作】
必須の発作型はない.
発作型は原因疾患に依存する.
EE-SWAS及びDEE-SWASは, 臨床発作を呈さない患者にも生じることがある.
ほとんどの患者では, 2〜5歳の病初期に低頻度の薬剤反応性発作が認められる.
典型的には,意識減損を伴うまたは伴わない焦点運動発作, 焦点起始両側強直間代発作である.
発作は通常, 複数の発作型に進展しながら悪化していく.
定型および非定型欠神発作, 脱力発作, 陰性ミオクローヌスを伴う焦点運動発作が含まれる.
【脳波】
脳波パターンは原因疾患に依存する.
覚醒時の背景活動は, 焦点性またはびまん性の徐波化を示し, 正常の場合もある
覚醒中のてんかん様異常は連続的ではない.
傾眠期や睡眠中には, てんかん様活動の顕著な活性化が見られ, ノンレム睡眠中には緩徐な (1.5-2Hz) 棘徐波複合を呈する.
典型的には, この活動は睡眠ステージ II にもみられる
SWASは通常びまん性であるが, より焦点性(典型的には前頭部)あるいは多焦点性に発生することがある.
レム睡眠では, この異常は頻度が少なくなり, 消失することもある.
正常な睡眠構造 (頭蓋頂鋭一過波,紡錘波,K複合) は消失, あるいは識別困難である.
発作時脳波は発作型と対応する.

【画像】
神経画像は正常の場合もあれば, 脳の構造異常を示す場合もある.
【遺伝学】
一部の症例には遺伝学的基盤が認められ, 単一遺伝の場合や多因子遺伝形式の場合がある.
DEE-SWASまたはEE-SWASの最大50%に, てんかん発作の家族歴がみられる
N-methyl-D-aspartate (NMDA) 型グルタミン酸受容体α2サブユニットをコードするGRIN2Aは, 主要な単一遺伝子性の原因である
【鑑別診断】
LGSは, 覚醒中, 睡眠中ともに顕著な遅棘徐波複合を示す脳波所見や, 全般性突発性速波活動を示し, しばしば強直発作がとらえられる睡眠脳波所見で区別される.
https://www.ilae.org/files/dmfile/childhood-onset—japanese.pdf
【まとめ】
DEE-SWASおよびEE-SWASは, 睡眠時電気的てんかん重積状態 (ESES), 退行が特徴的
EE-SWASは, 発症前の発達が正常で, ノンレム睡眠中の緩徐な (1.5-2Hz) 棘徐波複合の活性化
DEE-SWASは, 既存の神経発達症を持つ患者に, 睡眠中の棘徐波複合の顕著な活性化
SeLECTsやSeLEASなどの特定の焦点てんかん症候群や, 他の構造的焦点てんかんは, 一過性または長期的にEE-SWAS に進展する可能性がある.
構造的病変がある患者でも, 臨床発作は通常思春期頃に寛解する
脳波上のSWASパターンもまた, 通常は青年期までに消失する
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