島葉てんかん

The Insula and Its Epilepsies. Epilepsy Curr. 2019

シルビウス葉周囲に広がる島葉の発作では, 最初に喉の収縮として現れる.

次に, 口周囲および片側感覚症状が続き, 最後に片側の運動症状が現れる.

島葉の発作は, 側頭葉, 前頭葉に広がり, これらの領域で発生する発作のように現れることがある.

島は脳の奥深くに位置するため, 発作間欠期および発作時脳波は変動しやすい.

対側の島や他の脳領域に, 発作が急速に広がる可能性がある

島の中心溝の周囲に, 電気刺激マッピングを行うと知覚異常が生じる.

島後部を刺激すると痛みを感じる

島の解剖学】
島葉は, シルビウス溝の奥深くに位置する皮質構造

A: 島皮質は解剖学的に, 3つの短回 (a 前方, m 中間, p 後方) からなる前部, 2つの長回 (A 前方, P 後方) からなる後部

B: 島皮質は, 運動, 感覚, 聴覚, 言語処理に不可欠なシルビウス上とシルビウス下領域で覆われている

【臨床病理学】

島皮質は, 前頭葉, 側頭葉, 後部皮質構造に多重接続する脳領域

認知, 行動, 感覚処理に深く関与

発作は, 内臓感覚, 体性感覚, 嗅覚, 味覚, 聴覚の前兆, 自律神経症状 (嘔吐, 立毛, 心拍数の変化), 自動運動行動, 過運動行動, 強直性および/または間代性運動症状, 言語障害など多彩

シルビウス裂周囲: 喉頭収縮, 口周囲の不快な知覚異常, 側方化した体性感覚, 構音障害, 局所性体性運動徴候など

側頭葉様症状: 口腔消化器, 手指の自動症を伴う意識障害

前頭葉様症状: 多動性行動, 強直性運動徴候

島発作の様々な広がり方

Peri-S: シルビウス裂周囲

島発作は, 意識が保たれた状態で始まることが多い

前兆を明確に説明することで, 島発作の発症を示す重要な情報が得られる可能性がある

窒息感や息切れ, 痛みの感覚, 味覚の前兆は, 島発作または島弁蓋の発作起源を強く示唆

反射発作:

島弁蓋発作は摂食, 聴覚, 体性感覚誘発性の反射発作として現れることもある.

前島皮質のエクスタシー発作は, 特定の記憶や, 楽しい感情的状況について考えることで誘発されることがある

島てんかんの非侵襲的検査】
島発作の前兆のほとんどはビデオでは判別できない

島は深部構造のため, 頭皮脳波では表面に投射している場合にのみ観察

IEDs:

前頭弁蓋島焦点は, 前頭極, 前頭側頭領域

後頭弁蓋島焦点は, 中側頭領域から前頭側頭領域および/または中心部に広がる領域

MRI:
非腫瘍性てんかん手術を受けた25人のうち, 18人 (72%) で正常.

SPECT:

発作時SPECTは65%で焦点を正確に特定し, 18%で誤った

PET:

47%で正確に特定し, 24%で誤った

島葉発作の侵襲的記録】

発作開始は, 空間的に非常に限定されている場合がある.

島発作開始と弁蓋発作開始を区別するには, 島弁蓋を広範囲にカバーする必要がある.

最良のアプローチは, 前頭頭頂および側頭蓋を通る横方向の直交と, 前頭または頭頂皮質を通る斜めのアプローチを組み合わせる.

特にMRI陰性の場合には, 島が密接に接続されている島外領域の適切なサンプリングを含む

SEEG:

島での発作発症パターンは多様だが, 低電圧の高速放電または高周波ガンマ活動が多い.

発作は島外に広がる前に, 島内で非常に局所的に始まることが多い

放電が前頭内側部および/または内側, 外側側頭葉領域に広がったときに複雑な運動症状が発生する

両側の島皮質は密接であり, 伝播するのに 8-24 ms.

したがって, 島発作は, 対側の島に非常に急速に伝播する可能性がある.

そのため, 島てんかんや側頭葉てんかんでも, 異なる側方化が起こる可能性がある

典型的な島発作徴候は, 島外起源の発作で起こる可能性がある

特に側頭葉起源の発作で一般的であり, 誤った発作前兆につながる可能性がある

限局的な島発作例

A: SEEGは右島弁領域に重点を置き, 追加の電極で右側頭葉, 前頭葉, 左側島弁蓋部と左側頭葉をサンプリング

B: 発作時のSEEG

(上のパネル): 右島 (R Ins) の前長回の上部で, スパイクと多棘波放電

続いて, 右弁蓋皮質 (R Op) に広がる低電圧高速活動

対側島 (L Ins) がほぼすぐに関与

患者は左手に痛みを伴うチクチクする感覚があると訴える.

(下のパネル): 発作が右中側頭葉 (R mT), 島前下部 (R Ins), 外側側頭葉 (lT) に広がると側頭葉様症状を呈する.

眼窩前頭皮質 (Of) は影響を受けない

C: 島外領域に広がる前

D: 発作発症時の60~100 Hz周波数帯域

E: 右前長島回切除. 病理でFCDⅠb.

【機能マッピング】

(1) 体性感覚: 痛みや温熱感のない感覚 (1a), 温熱感 (1b), 痛み (1c)

(2) 内臓感覚: 締め付け感 (2a), 内臓自律神経症状 (2b), 内臓精神症状 (2c)

(3) 前庭感覚

(4) 聴覚感覚

(5) 言語障害

(6) 嗅覚味覚

【島切除の長所と短所】
外科的切除長期の発作消失率は, 側頭葉てんかん (66%), 後頭葉および頭頂葉てんかん (46%), 前頭葉てんかん (27%)

平均3.5年の追跡調査を行った74人では, 73%が発作消失

手術のリスクは, 主に牽引損傷レンズ核線条体動脈またはMCA枝の損傷

島皮質は四面体または三角錐のような形をしている (左)

島皮質に斜めにアプローチして4つの電極を埋め込む (右)

17人 (切除15例, レーザー焼灼術2例)

島切除を受けた15人のうち11人の結果が良好 (Engel IおよびEngel II)

3人が永続的な片麻痺を発症 (17.6%)

永続的な運動障害はすべて, 尾側背側島皮質と隣接する頭頂蓋の切除に関連.

放線冠尾側部分のMCA枝の損傷

22歳女性, 右尾側前頭島切除後

放線冠に梗塞を発症

2人が背尾側島皮質を標的としたMRI誘導定位レーザーアブレーションを受け, 合併症はなく, 局所発作は良好に制御

【SUDEPのリスク】

島皮質は, 自律神経の制御と調節に深く関与

SUDEPにおける島の関与には, 2 つのタイプがある.

致死的な発作が発生するてんかん原性領域, 自律神経性および/または呼吸性発作が関与

[Jobst BC, Gonzalez-Martinez J, Isnard J, Kahane P, Lacuey N, Lahtoo SD, Nguyen DK, Wu C, Lado F. The Insula and Its Epilepsies. Epilepsy Curr. 2019 Jan;19(1):11-21. doi: 10.1177/1535759718822847. Epub 2019 Jan 31. PMID: 30838920; PMCID: PMC6610377.]

【まとめ】

シルビウス葉周囲に広がる島葉の発作では, 最初に喉の収縮として現れる.

次に, 口周囲および片側感覚症状が続き, 最後に片側の運動症状が現れる.

島葉の発作は, 側頭葉, 前頭葉に広がり, これらの領域で発生する発作のように現れることがある.

島は脳の奥深くに位置するため, 発作間欠期および発作時脳波は変動しやすい.

対側の島や他の脳領域に, 発作が急速に広がる可能性がある

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