

以前は, 乳児重症ミオクロニーてんかん (severe myoclonic epilepsy of infancy) とよばれた
生後1年以内の健常児に, 遷延性, 有熱性および無熱性, 焦点間代発作 (通常は片側間代) または全般間代発作を呈する
ミオクロニー発作や非定型欠神発作などの他の発作型は, 1歳から4歳の間に出現する.
発作は通常難治で, 生後2年目から認知や行動の障害を示す
特徴的なかがみ歩行 (crouch gait) などの歩行異常は, 通常小児期後期までに認められる
臨床診断は, Naチャネル遺伝子 SCN1Aの病的バリアントを同定することで支持 (80%以上の症例に認められる)
【臨床的背景】
発作発症は, 通常3か月から9か月, 中央値年齢は6か月
2か月未満または15か月以降に発症した場合は, 他疾患の除外が必要
発作発症時の発達は正常
歩行はやや遅れ (平均16~18か月), 歩行の不安定さがみられることがある.
発作発症時に著しい発達遅滞や, 神経学的診察の異常などがある場合は, 他の診断が示唆
【経過】
てんかん重積状態は, 5歳以前に多い.
特に体調不良や発熱に伴って, 成人期でさえ出現することがある
青年期早期成人期までには, てんかん重積状態や, 非定型欠神発作はまれになる.
発作は短時間のことが多く, さまざまな発作型を呈する (意識減損を伴う焦点, 間代, 全般強直間代, ミオクロニー, 非定型欠神)
この年齢では, 夜間の強直および強直間代発作が出現し, 優勢な発作型となることがある
発作発症後12か月から60か月の間には遅れが明らかになり, 言葉発達遅滞が主体
軽度から重度 (50%) の知的障害を示す
多くの患者は行動障害を発症し, 不注意や多動性を示す患者もいる
てんかん重積状態のエピソードに続いて, 発達の退行がみられることがある.
大半の患者では, 発達の遅滞とそれに伴う知的障害のパターンが多い
時間経過とともに, 大半の患者は軽微な錐体路徴候と歩行障害を発症
通常は, 小児期後半から青年期までにかがみ歩行へと進展する
【発作】
発症時に焦点間代発作 (体の片側に影響を及ぼす片側間代発作) や, 全般間代発作が反復することが診断に必須
これらはしばしば遷延性で, 高頻度に発熱や環境温の上昇, 予防接種によって誘発される
感染症や脳の構造病変がない状態で, 生後12か月以前に発熱 (特に微熱) を伴う遷延性焦点間代(片側間代)発作が,それまで正常だった乳児にみられる場合, ドラベ症候群が強く示唆される
1歳半から5歳までに, 追加の発作型が起こることがある
・ ミオクロニー発作
・ 焦点意識減損発作
・ 焦点起始両側強直間代発作
・ 非定型欠神発作
・ 脱力発作
・ 非けいれん性てんかん重積状態
・ 主に睡眠時に群発する強直および強直間代発作
この年齢までに, 体調不良に加え, 身体活動, 環境温の変化, 視覚的模様 (まれ), 光刺激 (患者の15%), 興奮によって発作が誘発されることがある
主に睡眠時に群発する強直・強直間代発作は, 疾患経過の後半, 4~5 歳頃から出現し, 成人期により顕著になる
てんかん性スパズムは除外基準である.
発作は, CBZ, LTG, PHTなどのNaチャネル阻害剤の使用により増悪する (診断の手がかりになる)
LTGは, 年長患者でまれに有用な場合がある
【脳波】
背景活動は, 2歳までは正常あるいは徐波化を示す.
徐波化は, 通常2歳以降
IEDsは, しばしば焦点性, 多焦点性, 全般性であり, 2歳以降に出現する
睡眠時の群発発作を示す患者では, 発作間欠期の前頭部放電がしばしばみられる
光突発反応は患者の15%にみられ, 低年齢児でより高頻度である
【神経画像】
発作発症時のMRIは正常である
経過とともに, 軽度の大脳および小脳の萎縮が進行することがある.
少数例に海馬硬化がみられるが, てんかん外科の適応はない.
【遺伝学】
遺伝学的検査は, 全年齢で推奨
乳児期経過の詳細の入手が困難な成人も含まれる.
SCN1Aの病的バリアントは, 80%~85%超の症例で認められる
大半がde novoであるが, de novo 変異と考えられている患者の最大10%は, 片親がその変異を有するモザイクと予測される
ドラベ症候群の診断には, 典型的な臨床的特徴が必要であり, 遺伝子バリアントのみでは判断できない.
また, 遺伝子バリアントがなくとも本症候群の臨床診断を除外すべきではない
まれに他の遺伝子がドラベ症候群と関連し, GABRG2, GABRA1, STXBP1の顕性病的バリアントや, SCN1Bバリアントをもつまれな潜性遺伝症例などが含まれる
熱性けいれんや他のてんかんの家族歴が30~50%に認められ, その症候はGEFS+を示唆する場合がある.
代謝およびその他の臨床検査は, 一貫した異常は認められない.
【鑑別診断】
PCDH19群発てんかん:
通常発作群発を呈し, 遷延性焦点間代 (片側間代) 発作とは対照的
ドラベ症候群と同様, 発作は主に乳児期に発生し, 発熱が誘因となる.
PCDH19群発てんかんは主に女性に発症し, 男性は無症状となるX連鎖遺伝形式を呈する
SCN1A-DEE:
発症が非常に早く (3か月未満), 発達遅滞と顕著な運動障害が先行することから, ドラベ症候群と区別される.
Thr226Met169のような早期発症SCN1A-EIDEE症例は, 機能獲得バリアントと関連しており, 従って, ナトリウムチャネル阻害剤に反応することが知られている
構造的焦点てんかん:
発熱で誘発される遷延性焦点起始発作で始まることがあるが,焦点間代 (片側間代) 発作がしばしば左右交代性に起こるドラベ症候群とは対照的に, 反復する発作は同側または同一肢に起こる.
ミオクロニー発作や, 非定型欠神発作はまれである.
しばしばMRIで原因病変が明らかになる.
ミトコンドリア病:
生後早期に複数の発作型を示すことがある.
しかし, 他の臓器機能障害, 乳酸値の上昇, MRIでの特徴的異常など, 他のミトコンドリア病の徴候がみられる.
https://www.ilae.org/files/dmfile/infant-onset—japanese.pdf
【まとめ】
正常乳児の生後12か月以前に, 発熱 (特に微熱) を伴う遷延性焦点間代(片側間代)発作があれば強く疑う.
焦点間代 (片側間代) 発作がしばしば左右交代性に起こる
特徴的なかがみ歩行 (crouch gait) などの歩行異常
てんかん重積状態は, 5歳以前に多く, 特に体調不良や発熱に伴って成人期にも出現することがある
Naチャネル阻害剤の使用により増悪する
IEDsは, しばしば焦点性, 多焦点性, 全般性
ドラベ症候群の診断には, 典型的な臨床的特徴が必要であり, 遺伝子バリアントのみでは判断できない.
遺伝子バリアントがなくとも, 本症候群の臨床診断を除外すべきではない
乳児期経過が不明な成人は, 遺伝子診断を行う.
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