焦点ごとの違いと, 二次性両側同期化について調べてみました
Recognition of interictal and ictal discharges on EEG. Focal vs generalized epilepsy. Epilepsy Behav. 2021
【内側側頭葉てんかん】
TIRDAが現れる場合がある.
IEDs
negativity: T1/T2, FT9/FT10, F7/8, T3/T4, P7/P8など前側頭部に位置する.
positivity: 中心頭頂部
睡眠中にIEDの頻度が増加する
REMでは, より制限された電位であり, epileptic zoneの側方化と局在化に最も関連する.
発作時脳波
前兆時は, 脳波に異常がない場合が多い
下側頭葉領域にみられる5~9 Hzの規則的なシータリズム(type 1A)
頻度は低いが, 同様の中心傍矢状部の陽性リズム (type 1B), または, 1Bと1Aのリズムの組み合わせ (type 1C) が報告されている.
外側側頭葉てんかんとの鑑別
側頭葉新皮質に起因する発作は, 不規則で多形性の2~5 Hzの側方活動 (type 2A) を伴うことが最も多かった
このパターンの後には, 内側構造の関与により1A型シータリズム (type 2B) が続くか, 反復的で周期的な鋭波が先行することが多かった (type 2C)
明らかな側方性放電を伴わない発作 (type 3) は, 側頭葉新皮質起源であることが最も多かった
臨床発症の30秒前以内に, 局所性の発作性脳波所見があると, 内側側頭葉てんかんにおいて, ほぼ95%の特異度で発作が側方化する
頭皮上脳波での, 側方化の精度は60~83%
postictalの徐波は70%の発作でみられ, 側方性の特定に利用できる
まとめ
REMのIEDsは信頼性が高い.
内側側頭葉てんかんの発作時脳波はシータ帯域,
外側側頭葉てんかんの発作時脳波はデルタ帯域が, 判断の一つになるかもしれない.
【外側側頭葉てんかん】
TIRDAは少数の患者に現れることがある
発作間欠期脳波
内側側頭葉てんかんとの違いが認められない可能性あり.
negativity: T3/T4が多い.
頻繁なIEDs (1時間あたり60回を超えるスパイク) は, 内側よりも外側側頭葉てんかんで発生する可能性が高い
内側側頭葉てんかんと同様に, 両側側頭部IEDsを呈することがある.
発作時脳波
外側側頭葉てんかんは, 内側側頭葉てんかんよりも周波数が遅いことが典型的
発作開始時は, 不規則で多形的な2~5 Hzのデルタ帯域が多い.
発作時脳波の側方化は得られやすいが, 広く伝播するため局在化することはあまりない
発作開始時の増幅する半周期的な鋭波は, 内側側頭葉てんかんよりも頻繁に現れる.
外側側頭葉てんかんでは, 発作開始時に反復性てんかん性活動の頻度が高い
内側側頭葉てんかんでは, 律動的なシータ活動の頻度が高い
【前頭葉てんかん】
発作間欠期脳波
正常なことが多い
前頭部または前頭極のspikeは, 40%の症例で認めないこともある.
IEDsは, 局所性の棘徐波を特徴とする
二次性同期化, paroxysmal fast activity, 高振幅で鋭い律動性徐波が記録されることもある
前頭部または前頭極に, 高振幅で鋭い徐波は眼窩前頭葉てんかんを示唆
内側または下前頭葉てんかんは, 二次性同期化が生じることがある
前頭正中部のIEDsは, 頭頂部で最大振幅を示す
背外側前頭葉てんかんは, F3/F4/C3/C4にIEDsを認める
発作時脳波
50%以上の症例で, 非局所性の発作開始を示す
前頭側頭葉および右/左前頭葉に豊富な接続があり, 側頭葉への局在化および側方化を認めることがある.
内側前頭葉てんかんは, 頭頂部で最大となり, 全般性として表されることがある
非局所性発作は, 背景活動の拡散減衰として現れることがある.
発作開始時にみられる非局所性の律動性シータまたはデルタは, 急速な伝播による
背外側前頭葉てんかんは, 発作時脳波で局在化される可能性が最も高く,
局所性の律動性速波は, 最大80%に発生する
【後頭葉てんかん】
構造的後頭葉てんかんは, 発作間欠期の片側後頭葉の徐波を特徴とする
IEDsは両側性, 局所性であることが多く, O1/O2に限定されることはまれ
20~50%は, 後頭部に棘波を示さない場合がある
最大25%は中側頭部にIEDsを示し, 約58%で側頭後頭部にIEDsが記録される
発作時脳波は, 広範囲に及びやすい.
発作時の脳波の変化がなくても, 前兆を認めることあり.
【頭頂葉てんかん】
IEDsはごく少数の患者で, epileptic zoneの同側に発生
通常, IEDsは非側方性で, 一部の患者ではIEDsを認めない
二次性同期化は頻繁に見られる
negativity: 主に前頭頭頂後頭部 (33%), 頭頂後側頭部 (P3/P4/T7/T8) または (P3/P4) (14%)
P3/P4/O1/O2 (9%), (F3/F4/T7/T8/P3/P4) または (F3/F4/C3/C4/T3/T4) (4.5%) に局在
患者によっては, 発作時は全般性だったり非局所性だったりする
側方性の発作時脳波の場合, 中心頭頂部または後頭部に記録される.
局所性の発作時脳波は, ごく少数の患者 (6.4%) である
【島葉てんかん】
正常または非側方化の脳波所見が一般的
約72%にIEDsあり, 多くはepileptic zoneと同側
局所的徐波は頻繁ではない.
IEDsは81.8%で, 1つの脳領域に局在
前島てんかんのnegativity: F3/F4/C3/C4
後島てんかんのnegativity: C3/C4/T3/T4/Tp9/Tp10/T7/T8
発作時脳波
島外構造への伝播潜時は, 5秒から660秒 (中央値 13秒)
最も認める発作開始パターンは, 低振幅速波, 律動性棘波または多棘波, 発作前の棘波に続いて低振幅速波.
徐波, シータ/アルファ鋭波は, あまり一般的ではない
律動性棘徐波または多棘波徐波は, 純粋な体性感覚発作に関連
【焦点てんかんにおける全般性脳波所見】
二次性両側同期 (secondary bilateral synchrony: SBS) の特徴として
(1) 約51%で前頭葉に由来
(2) SBSの大部分で, IEDsの周波数は3 Hz未満
(3) SBSは, 過換気, 睡眠stage 2よって活性化
皮質焦点が溝内にある場合や, 同期が速い場合に認めることがある.
時に, 脳室周囲異所性灰白質が, 規則的な3Hz棘徐波複合を起こすことがある
信号源
PBS (primary bilateral synchrony) は, 皮質下系で発生. 複数の皮質領域に投影されることを示唆
SBS (secondary bilateral synchrony) は, 主に内側前頭領域に位置する非対称性双極子で構成され, そこから皮質下系または脳梁を介して反対側に広がる
PBSの大多数は背外側前頭部に位置, 双極子は放射状
SBSの大多数は内側前頭部に位置, 約50%は接線方向
接線方向は, 信号源が大脳半球間溝など, 大きな溝の奥深くにあることを示す
側頭葉皮質のSBSは, 2番目に多い (28%).
SBSは通常, 側頭葉の棘波または鋭波放電と関連し, 3Hzの範囲
頭頂葉, 前頭葉てんかんは, 3~4Hzの範囲
後頭葉てんかんが, SBSの原因となることはあまりない.
通常, 右/左半球後部に頻回の棘波を認める.
数秒間続く, 3 Hz棘徐波を認めることもある.
【焦点てんかんと全般てんかんの合併】
前頭に外傷後の32歳

(A) びまん性の徐波に続いて, 全般性の低振幅速波とともに強直発作


(B, C) 同じ患者. FIASに続いてFBTCS
F4-C4の局所的な低振幅速波
FLAIR 画像: 右前頭葉にgliosis

(D) IEDsは, 両側前頭中心の鋭波
発作時脳波で遅延した側方化
焦点てんかんでは, 発作開始から数秒後に, 側方性発作活動が見られることがある
このような場合, 遅延発作パターンは, 側方性かつ局所性の意味を持つ


3 Hzの棘徐波を特徴とする, 前頭中心部優位の全般発作の開始
続いて, 右前頭中心領域に側方化した低振幅速波が, 右前頭中心頭頂領域に側方化した中振幅速波 (矢印) に発展


結節性硬化症7歳
開始時に全般性速波 (矢印), その後, 全般性の多棘徐波
発作が終了するとT5-P3に側方化したパターン (矢印)
[Andrade-Machado R, Benjumea Cuartas V, Muhammad IK. Recognition of interictal and ictal discharges on EEG. Focal vs generalized epilepsy. Epilepsy Behav. 2021 Apr;117:107830. doi: 10.1016/j.yebeh.2021.107830. Epub 2021 Feb 25. PMID: 33639439.]
【まとめ】
焦点の場所により脳波の特徴が異なり, どのように伝播していくか, 脳波でイメージすることが大切です.
焦点てんかんの二次性同期化と, 全般てんかんのIEDsの鑑別は, 信号源の推定と方向が役立ちそうです.
おおまかに,
内側側頭葉てんかん: IEDsは前側頭部, 発作時脳波はrhythmic theta.
外側側頭葉てんかん: IEDsはT3/T4, 発作時脳波は不規則なrhythmic delta
前頭葉てんかん: IEDsは40%で認めず, 二次性同期化を生じることがある.
後頭葉てんかん: IEDsはO1/O2に限定されることはまれ. 発作時脳波は, 広範囲に及びやすい.
頭頂葉てんかん: IEDsは非側方性
島葉てんかん: 非側方化の脳波所見が一般的
二次性同期化: 約51%で前頭葉に由来. 脳室周囲異所性灰白質でも認める. 信号源は, 内側前頭部に位置し, 約50%は接線方向
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