非精神科医のせん妄・BPSD

抑肝散でだめなときにどうしたら良いか, 精神科専門医に聞いてみました.

リスペリドン, アリピプラゾール, クエチアピン, ペロスピロンを使いこなせると良さそうです.

非精神科医の不眠症治療・授乳の記事はこちら

【せん妄】

糖尿病がなければ, クエチアピン (セロクエル) 12.5-25 mg: 不眠・不安にも良い

糖尿病があれば, クエチアピンの代わりにペロスピロン (ルーラン) 2-4 mg: 不眠・不安にも良い

もう少し鎮静が欲しい時は,

リスペリドン (リスパダール) 0.25-0.5 mg: 不眠にはあまり効果ない,

ブロナンセリン (ロナセンテープ) 20 mg: テープなので服薬拒否があっても大丈夫

【BPSD】

興奮が強いとき (抗精神病薬)

上記と同様

軽中等度

アリピプラゾール (エビリファイ)

 ドパミン部分作動薬. ドパミンを適度な量に調整する.

 セロトニン作用もあり気分安定も期待できる

 3 mgから漸増

 低用量の場合は朝食後, 高用量の場合は夕食後に服用

 穏やかな鎮静, アカシジアに注意.

メマンチン (メマリー)

バルプロ酸 (デパケン): 肝障害に注意

カルバマゼピン (テグレトール): 薬疹, 低Naに注意

【パーキンソン病・レビー小体型認知症】

錐体外路症状が少ない薬が好まれる

糖尿病なし

クエチアピン (セロクエル) 12.5-25 mg

 不眠・不安にも良い

 作用時間が短いため, 1日持続させたいときは1日2-3回服用

糖尿病あり

弱い鎮静: ペロスピロン (ルーラン) 2-4 mg

 ロナセンテープよりも錐体外路症状少ない, アカシジアに注意

 セロトニン作用もあり気分安定も期待できる

 不眠にも良い

 食後に服用

 作用時間が短いため, 1日持続させたいときは1日3回服用

さらに弱い鎮静: アリピプラゾール (エビリファイ) 3 mg

 気分安定も期待できる

 アカシジアに注意

最近, 流行っている抗精神病薬

【ブレクスピプラゾール (レキサルティ)】

SDAM (セロトニンとドパミンの量を調整)

アリピプラゾール (エビリファイ) を改良した薬

副作用は少なく, 鎮静作用も穏やか

アメリカでは, アルツハイマー型認知症のBPSDにも適応あり

アカシジアに注意.

薬価が高い

OD錠 0.5 mg 128.7円

OD錠 1 mg 241.8円

【アセナピン (シクレスト)】

MARTA (多元受容体標的化抗精神病薬)

舌下投与が可能

同じMARTAのクエチアピンと異なり, 糖尿病でも可能

入院中, 癌末期のせん妄時などに使用されていることもある.

不眠にも良い.

副作用は少ないが, アカシジア, 錐体外路症状に注意

薬価が高い

5 mg舌下錠 227.6円
10 mg舌下錠 346.1円

【おまけ: 非定型抗精神病薬】

SDA (セロトニン・ドパミン拮抗薬)
リスペリドン (リスパダール), ブロナンセリン (ロナセン), ペロスピロン (ルーラン)

 ドパミンへの作用が強く, 鎮静作用強い, 錐体外路症状に注意.

MARTA (多元受容体標的化抗精神病薬)
オランザピン (ジプレキサ), クエチアピン (セロクエル)

 ドパミン, セロトニン以外の受容体にも作用し, 効果に厚みがある.

 抑うつ・不安・不眠・衝動性にも良い

 錐体外路症状は少ない

 代謝阻害により糖尿病で禁忌

DSS (ドパミン受容体部分作動薬)

アリピプラゾール (エビリファイ)

 ドパミンを適度な量に調整する.

 副作用は少ないが, 鎮静作用も弱い, アカシジアに注意.

SDAM (セロトニンとドパミンの量を調整)

ブレクスピプラゾール (レキサルティ)

 アリピプラゾールの改良版.

 アカシジアに注意.

非精神科医の不眠症治療・授乳の記事はこちら

Psychotic Disorders in the Elderly: Diagnosis, Epidemiology, and Treatment

高齢者に対する抗精神病薬レビュー論文

うつ: オランザピンとセルトラリンの併用
双極性障害: 非定型抗精神病薬(オランザピン, リスペリドン, クエチアピン, クロザピン)
妄想性障害: 非定型抗精神病薬(リスペリドン)
VLOSLP (very late onset schzophrenia-like psychosis): リスペリドン 1.25~3.5 mg/日, クエチアピン100~300 mg/日, オランザピン7.5~15 mg/日, アリピプラゾール15~30 mg/日
Alzheimer型認知症: シタロプラム 20~30 mg/日​​​​, 非定型抗精神病薬(特にリスペリドンとアリピプラゾール
前頭側頭型認知症: 非定型抗精神病薬
パーキンソン病: リバスチグミン, ドネペジル, クエチアピン, アリピプラゾール, リスペリドン
DLB: ドネペジル, 低用量オランザピン, アリピプラゾール, クエチアピン

【アルツハイマー型認知症】
抗うつ薬:

シタロプラムは, RCTにおいてAD患者の興奮と精神病に有効であることが実証

シタロプラムは副作用が少ないにもかかわらずリスペリドンと同等であることが示されている

抗精神病薬:
オランザピンとリスペリドンが敵意と妄想の軽減に有効

リスペリドンとアリピプラゾールの有効性に関する証拠が最も多く, アリピプラゾールが最も安全な選択肢である可能性が高い

【前頭側頭型認知症】
FTD患者は抗精神病薬の使用により錐体外路症状を発症するリスクが高まる可能性がある

D2受容体占有率の低い抗精神病薬 (例: クエチアピン) を優先

【パーキンソン病】
まずアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を検討すべき

ドネペジルとリバスチグミンの両方に適度なエビデンスがあり, リバスチグミンのほうがより一貫した有効性が報告されている

メマンチンは精神病症状を悪化させることが示されている
クエチアピンは運動機能を悪化させないことが示されており, 低用量 (25~75 mg/日) で第一選択薬として使用

オランザピンは運動機能を悪化させ, 精神病には利益なし
精神病を併存するうつ病または不安症を伴うパーキンソン病患者に対して, 抗うつ薬単独療法または補助療法により精神病症状が軽減したという症例報告がいくつかある

【レビー小体型認知症】
ドネペジル 5~10 mg/日には精神病症状, 特に幻覚の治療に一定のエビデンスがある

リバスチグミン, ガランタミン, メマンチンにはない

必要に応じて低用量のオランザピン, アリピプラゾール, クエチアピン, クロザピンを検討

オランザピンは運動症状を悪化させる可能性はあるが, 最もエビデンスが優れている

実際には, クエチアピンやアリピプラゾールの方が忍容性が高く, 運動症状への影響が少ないと考えられている

[Fischer CE, Namasivayam A, Crawford-Holland L, et al. Psychotic Disorders in the Elderly: Diagnosis, Epidemiology, and Treatment. Psychiatr Clin North Am. 2022;45(4):691-705. doi:10.1016/j.psc.2022.07.001]

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