若年ミオクロニーてんかん (JME) と全般強直間代発作のみを示すてんかん (GTCA)

ILAE 2022から抜粋

若年ミオクロニーてんかん (JME)

ミオクロニー発作は通常,覚醒後, 疲労時に生じる.

睡眠不足は, 重要な誘発因子である.

脳波では3-5.5Hzの全般性棘徐波や多棘徐波を示す.

光過敏性は一般的で,適切な光刺激法を用いれば90%に出現

生涯にわたる治療がしばしば必要である.

典型的な発症年齢は, 10-24歳(範囲: 8-40歳)である.

5~15%の症例は, CAEからJMEに移行する

8歳以前にミオクロニー発作が始まった場合は, 他の診断を検討する必要がある.

熱性けいれんの既往は, 患者の約4~5%

胎生期および出生時の病歴や認知は通常正常だが,特定の認知領域(例:遂行機能,注意,意思決定)における障害がみられることがある

発作出現後の認知機能の進行性低下は, 進行性ミオクローヌスてんかんを示唆する.

まれに, 軽度知的能力障害にも発症することがあり, そのような症例では染色体マイクロアレイで反復性微小欠失が約 10%にみつかる.

JMEでは, 一般集団と比較して, 不安や抑うつの割合が高い

さらに, いくつかの研究で衝動性の高さが示されている.

【ASM】

適切なASMを使用すれば, JMEの65~92%で発作は薬剤反応性

ミオクロニー発作は, GTCSよりも抑制困難な場合がある.

CBZ, オクスカルバゼピン, PHTなどのナトリウムチャネル遮断薬は, しばしば JMEのミオクロニー発作や欠神発作を増悪させる.

LTGは, 一部の患者においてミオクロニー発作を増悪させることがある
最近のメタ分析では, 断薬後の再発率は78% (95%信頼区間: 58-94%) と報告されている
薬剤抵抗性のリスク因子には, 欠神発作, 精神医学的合併症, CAEの既往, 行為誘発発作, 若い発病年齢が含まれる.

【発作】

ミオクロニー発作は診断に必須である

ミオクロニー発作は, 覚醒後の 1 時間以内に好発し, 睡眠不足により誘発される

ミオクロニー発作重積状態がまれに生じることがある
片側性のこともあれば両側性のこともある.

体の片側に優位なことがあり, 上肢を巻き込むことが多い

下肢を巻き込み, 転倒の原因となることがある.

光刺激や行為(praxis)によって誘発される反射性のこともある

GTCSは90%以上に生じ, しばしば群発するミオクロニー発作が先行し,

頻度と強度を増しつつミオクロニー強直間代性発作に至る.

しばしば覚醒直後や睡眠不足に伴って起こる.

全般強直間代てんかん重積状態はまれである

意識減損に先行して頭部偏向が生じる場合は, 焦点てんかんの可能性が浮上するが, 意識減損後の頭部偏向はJMEでは珍しくない

欠神発作は3分の1の症例でみられる.

短く(3-8 秒), 日単位より少なく, 意識減損の程度はさまざまながらしばしば軽微である(通常はCAEより軽度)
欠神発作重積状態が起きることがあるがまれである
焦点発作と全般性の強直発作または脱力発作は除外基準の対象となる.

【脳波】

背景活動は正常

GTCSの発作後の時期を除き, 全般性の徐波化はみられない.

不規則な全般性の多棘徐波や棘徐波が3-5.5Hzの周波数で覚醒下および睡眠時の両者でみられる

IEDsは, 断眠によって引き出される.

睡眠中, 放電はしばしば断片化し, 焦点性または多焦点性に見えるが, 通常1つの領域に一貫してみられることはない.焦点性あるいは多焦点性の棘波や棘徐波放電は20%の患者でみられ, 多くは前頭領域であり, 脳波記録ごとに部位が変化することもある.

そのような焦点性の棘徐波の形態は, 全般性棘徐波と相似して見える.

焦点性徐波化や焦点性放電が一貫して1つの領域にみられる場合, 焦点てんかんの可能性を考慮する必要がある.

JME の未治療患者で正常な覚醒脳波がみられることもあるが,断眠負荷をしてさらに記録すると,通常は全般性棘徐波が誘発される.
光突発反応は3分の1以上の症例で認められる.

間欠的光刺激によりミオクロニー発作, 眼瞼ミオクロニー, まれにGTCSが誘発されることがある.
全般性棘徐波や多棘徐波, まれに臨床的欠神発作が過呼吸により誘発されることがある.

ミオクロニー発作は, 全般性多棘徐波放電を伴い, その棘波は実際の攣縮と同期している.
欠神発作は, 発作起始に3-5.5Hzの全般性多棘徐波または全般性棘徐波放電を伴う.
GTCSでは, 強直相では律動性の早い全般性棘波がみられ, 続いて間代相の攣縮に同期して棘波の群発とそれに続く徐波がみられる.

GTCS後には, 不規則な徐波を示す発作後の相が続く.

遺伝学的検査は, 現在のところルーチンの診断評価項項目には含まれていない.

【鑑別診断】

  1. 進行性ミオクローヌスてんかん: 認知機能の低下, 持続的・多発性・薬剤抵抗性のミオクローヌスの出現. 脳波背景活動の徐波化, 低周波光刺激 (<3Hz) での光突発反応を認める場合に考慮.
  2. 読書誘発発作を伴うてんかん: 読書中にのみミオクロニー発作が出現する場合に考慮.
  3. 遅発性Lennox-Gastaut 症候群: 強直発作や全般性突発性速波活動を脳波で認める場合に考慮.
  4. 焦点てんかん: ミオクロニー発作またはGTCSのたびに一貫した焦点起始の特徴がある場合, または発作が覚醒直後ではなく, いつも睡眠中に起始する場合に考慮.
  5. 家族性成人型ミオクローヌスてんかん (FAME): 皮質振戦を伴う成人ミオクローヌスてんかんとしても知られている. FAMEは, JME に酷似しているが顕著な皮質性振戦を伴う. これは常に存在し, その程度はさまざまだが, しばしば年齢とともに悪化し, 手足, 顔, 声に影響を及ぼす. この振戦は, バルプロ酸やラモトリギンによる医原性振戦としばしば誤診される. ミオクロニー発作に加え, GTCSは患者の15%~100%にみられる

全般強直間代発作のみを示すてんかん (GTCA)

もともとは, 覚醒時大発作てんかんと呼ばれていた

患者は, さまざまな頻度のGTCSを有する.

通常は10代あるいは20代前半に発症

発作は, 典型的には睡眠不足によって誘発

脳波は, 3-5.5Hzの全般性の棘徐波または多棘徐波放電を示す.

寛解率は低く, 生涯にわたる治療が必要なことが多い

GTCAは, 青年期発症のIGE全体の1/3を占める
典型的な発症年齢は10~25歳 (80%は10代に最初のGTCSを起こす)

5~40歳の幅がある.

発作の発症は, JAEやJMEと比べて約2年遅い
出生歴や既往歴は, 通常は正常である.

熱性けいれんの既往があることもある.

認知機能は通常正常であるが, 特定の認知領域(例:遂行機能,注意,意思決定)における障害がみられることがある 不安や抑うつをもつ率が高い.

GTCAは知的能力障害をもつ人にも起こりうるが, そのような場合には, 特定の病因を除外するための遺伝子検査を含む検査を考慮すべきである.

【発作】

発作は一般的に頻度が少なく,ときに年に 1 回以下である.

睡眠不足,疲労,飲酒は患者の発作閾値を下げる
GTCSは, しばしば覚醒後2時間以内に起こるが, 覚醒下および睡眠中の他の時間帯に起こることもある.
欠神発作やミオクロニー発作などの他の発作型は除外対象となり, 他のIGE症候群(例:JAE,JME)を検討することが必要である.

【脳波】

脳波の背景活動は正常である.

全般性の徐波化は発作後のみにみられる.

ある領域に一貫してみられる局在性の徐波化は脳の構造的な異常を示唆している.

3-5.5Hzの全般性棘徐波または多棘徐波は診断に必須である
光突発反応を認めることもある.

睡眠中には放電はしばしば断片化し, 焦点性または多焦点性に見えるが, 通常1 つの領域に一貫してみられることはない.

発作間欠期時のてんかん様活動は, 断眠によって増強される.

まれに, 焦点性棘徐波の断片が 1 つの領域に一貫してみられることがあるが, そのような場合は焦点てんかんを考慮すべきである.

遅棘徐波 (<2.5Hz) はみられない.

GTCSでは, 強直相では全般性の速い律動性棘波がみられる.

棘波の群発とあとに続く徐波が間代に同期して起こることがある.

発作後の時期には不規則な徐波がみられる.

遺伝学的検査は, 現在のところルーチンの診断評価項目には含まれていない.

薬剤抵抗性であれば, 反復性CNVsを見つけるため染色体マイクロアレイを実施すべきである.

https://www.ilae.org/files/dmfile/idiopathic-generalized—japanese.pdf

JMEの脳波1の記事はこちら

JMEの脳波2の記事はこちら

難治性特発性全般てんかんのASMはどうする?の記事はこちら

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