ILAE 2022から抜粋


小児欠神てんかん (CAE)

正常な小児に生じる.
2.5-4Hzの全般性棘徐波を伴う欠神発作が毎日起きる
欠神発作は過呼吸により誘発される.
神経学的検査は正常
発達と認知機能は通常, 正常である.
ADHD や学習困難が生じることがある.
発作は短時間であるが,群発することがある.
60%の小児で寛解する.
多くの場合, 発症から2年以内または青年期初期までに寛解する
発症年齢は4-10歳 (範囲2-13歳)
10歳以上で発症した場合, CAEとJAEの区別は欠神発作の頻度による.
典型的な欠神発作が, 未治療の状態で毎日頻繁に起こる場合, CAEの診断がより妥当である.
CAEは女児に多い (症例の60-75%)
熱性けいれんの既往は, 10-15%
うつや不安の頻度が高い
知的能力障害がある場合には, 他の病因を除外するために遺伝子検査を含む検査を検討する
4歳未満で欠神発作を発症した症例では, グルコーストランスポーター1欠損症 (SLC2A1の病的バリアントを伴う) と診断される症例が10%
残りの患者は, 他のIGE症候群に移行することがある.
【発作】
口や手の自動症は86%の患者にみられる.
まばたきを伴う目の関与, 開眼, あるいは眼瞼や口周囲のかすかなミオクローヌスは76.5%の患者に認められる.
見当識の回復までごく短いもうろうを呈する小児もいる
発作の持続は, 通常3-20秒, 中央値10秒だが, まれに30秒以上持続することもある
失禁や姿勢制御の喪失が見られることもある.
発作は通常1日に何回も生じるが, しばしば過小評価されている.
GTCSは, しばしば欠神発作が消失した後の青年期に始まり, 他のIGE 症候群 (例:JME, JAE, GTCA) に進展する先触れとなることがある
ミオクロニー発作は, 欠神発作の際に生じる微細なミオクローヌス以外は, CAEではみられない.
欠神発作の際に, 顕著なミオクローヌス (強直姿勢をとりつつ両上肢を小刻みに挙上する) がみられる場合, まれな発作型であるミオクロニー欠神発作を示唆する.
【脳波】
背景活動は正常
後頭部間欠的律動性デルタ活動 (OIRDA) は, CAEの21-30%にみられ, 2.5-4Hzの周波数でノッチを伴うように見えることがある.
3Hz (2.5-4Hz) の全般性棘徐波がみられ, 睡眠中に断片化することがある
断片化した全般性棘徐波は, 焦点性または多焦点性に見えるが, 一貫して 1 つの領域にみられるわけではない.
多棘徐波は, 傾眠や睡眠時にのみ見られ覚醒下では見られない
間欠的光刺激により21%に全般性棘徐波が誘発される
【過換気賦活】
未治療の患者のほとんどで, 過呼吸によって全般性棘徐波と欠神発作の両方が誘発される
遅棘徐波 (<2.5 Hz) はみられない.
未治療の小児で, 3分間過呼吸を正しく行ったのに全般性棘徐波がみられない場合, 小児欠神てんかんを除外することができる.
【鑑別】
JAEは, 通常10歳以降に発症し, 欠神発作の頻度はより少なく (日単位未満), 意識減損の程度はより軽い.
全般強直間代発作や欠神重積状態のリスクはより大きい.
全般性棘徐波放電の規則性と周波数は, CAEとJAEを鑑別する一助になるかもしれない.

若年欠神てんかん (JAE)

未治療の状態で, 通常日単位より少ない頻度の欠神発作
正常な青年に3Hz以上 (3-5.5Hz) の全般性棘徐波を伴う
GTCSは90%以上の症例で認められ, 一般的には欠神発作の発症後すぐに始まる
神経学的診察は正常
ADHDや学習困難が生じることもあるが, 発達や認知は通常正常である.
JAEはCAE よりも頻度は少ない
発症年齢は9~13歳で, 8~20 歳の幅がある.
JAEではOIRDAはみられず, 全般性放電の周波数がわずかに高く, より不規則である.
熱性けいれんの既往は, 6%~33%の症例に認められる
JAEはしばしば薬剤反応性であるが, 生涯にわたる治療が必要になるだろう
ESMは, GTCSが生じる可能性が高いため, 初期の単剤療法としては推奨されない
全般てんかんに向いた広いスペクトラムのASMを使用すべきである.
JAEは, 発作が十分に抑制されている場合でも, ADHDや学習困難の割合が高い
また, うつ病や不安の発症率が高い
知的能力障害や薬剤抵抗性などの非典型的な特徴がある場合には,遺伝子検査を考慮すべきである.
【発作】
欠神発作は必須である.
意識障害は突然に始まり, 顔の表情を失い, 凝視し, 活動は中断, 口部自動症を伴うこともある.
発作後は, ただちに通常の活動に復帰する
意識減損の程度は, CAEよりも不完全である
不完全な意識減損を伴う欠神発作では, 命令に反応することはできても, 複雑な作業を行うことは困難である.
典型的な発作時間は5-30 秒で, ときにはより長い発作が起こる.
頻度は日単位より少ない
欠神発作では, 微細なミオクローヌスがみられることがある.
欠神発作重積状態は, およそ20%の患者で生じる
GTCSは, 90%超の症例で出現する
通常は欠神発作の発症後に始まるが, 14%~27%の症例では欠神発作に先行することがある
GTCSの出現頻度はさまざまである.
ミオクロニー発作は, 欠神発作中にみられる微細なミオクローヌス以外は, 除外基準の対象となる.
【脳波】
背景活動は正常である.
通常3-4Hz (範囲 3-5.5Hz) の全般性棘徐波がみられ, 睡眠中に断片化することがある
断片化した全般性棘徐波は, 焦点性または多焦点性にみえることがあるが, 通常 1 つの部位に一貫してみられることはなく,形態も全般性棘徐波に相似している.
覚醒下と睡眠中の記録の両方で, 全般性放電は断眠によって増強される.
てんかん様放電はCAEよりもJAEでより高頻度である
多棘徐波は, 主に傾眠や睡眠でみられる
組織化不良の放電 (disorganized discharges) はCAEより8倍多い
GTCS時の脳波は, 強直相では全般性の速い律動性棘波がみられる.
棘波群発と, あとに続く徐波が間代に同期して起こることがある.
【過換気賦活】
未治療の患者では, 過呼吸により約87%の症例で欠神発作が誘発される
過呼吸が3分間正しく施行されても全般性棘徐波がみられない場合, 欠神発作の可能性は低い.
間欠的光刺激により, 25%の人で全般性棘徐波が誘発される
遅棘徐波 (<2.5 Hz) はみられない.

https://www.ilae.org/files/dmfile/idiopathic-generalized—japanese.pdf
【まとめ】
過呼吸が3分間正しく施行されても全般性棘徐波がみられない場合, 欠神発作の可能性は低い.
欠神発作中に, 自動症, かすかなミオクローヌスを伴うこともある.
JAEでは, ESMはGTCSを生じる可能性が高いため, 初期の単剤療法としては推奨されない.
10歳以上で発症した場合の鑑別は,
欠神発作の頻度 (CAE>JAE),
GTCSや欠神重積状態のリスク(JAE>CAE),
spike and waveの規則性 (CAE>JAE), 周波数の多さ (JAE>CAE)
教科書的な3Hz spike and waveはCAE, GTCAのような要素が多ければJAEというイメージでしょうか.
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