難治性特発性全般てんかんの抗発作薬はどうする?

ときどき若年ミオクロニーてんかんの難治例に出会います.

LEV, LTG, VPA以外の選択肢について調べました.

Antiseizure medications for idiopathic generalized epilepsies: a systematic review and network meta-analysis
特発性全般てんかん (IGE), 抗発作薬 (ASM) の単独療法, 補助療法の有効性と安全性を比較

有効性アウトカムは, 1, 3, 6, 12か月間発作がない状態を維持した患者の割合

安全性アウトカムは, 治療中に発生した有害事象 (TEAE) および中止に至ったTEAEの割合

Introduction

IGEは, 適切なASMを選択すれば, 60-80%の発作コントロール(1年以上発作がない状態)

VPA単剤療法は, LTG, TPMよりも有効性と忍容性が優れている (SANAD研究)

男児および男性のIGEに対する第一選択薬として推奨.

LEV単剤療法は, 妊娠可能な女性に好まれる.

LEVは, SANAD II試験ではバルプロ酸より劣っていたが, コホート研究では発作抑制に良好な有効性を示している.

治療の有効性を比較したforest plots

A. IGE単独療法 (3-6ヶ月間seizure freeの結果). VPAとの比較. LTG有意差あり.

B. IGE併用療法 (3-6ヶ月間seizure freeの結果). プラセボとの比較で, LEV, TPMが有意.

C. IGE単独療法 (12ヶ月間seizure freeの結果). VPAとの比較. LTG有意差あり

D. 欠神てんかん (AE) 単独療法 (3-6ヶ月間seizure freeの結果). LTGとの比較. ESM, VPA有意差あり.

E. ミオクロニーてんかん(ME) 補助療法 (3-6ヶ月間seizure freeの結果). プラセボとの比較

F. 全般性強直間代発作のみ (GTCA) 補助療法 (3-6ヶ月間seizure freeの結果). プラセボとの比較

累積順位曲線下面積 (SUCRA) による有効性アウトカムの順位

A. IGE単独療法 (3-6か月間発作なし), ESM > VPA > TPM > placebo > LTG

B. IGE補助療法 (3-6か月間発作なし), TPM > LEV > LCM > PER > LTG

C. IGE単独療法 (12か月間発作なし), ESM > VPA > TPM > LEV > LTG

D. 欠神てんかん (AE) 単独療法 (3-6か月間発作なし), ESM > VPA > placebo > LTG

E. ミオクロニーてんかん (ME) 補助療法 (3-6 か月間発作なし), LEV > LTG > PER

F. 全般強直間代発作のみ (GTCA) 補助療法 (3-6か月間発作なし), TPM > LCM > PER > LTG

ESMの順位は高いが, 欠神てんかんに対してのみ好ましい

LTG単独の有効性は低い結果だったが, LTGは漸増期間が長いため, この結果解釈には注意が必要.

累積順位曲線下面積 (SUCRA) による安全性結果の順位

A. IGE補助療法すべての有害事象, Placebo > LEV > PER > LCM > LTG

B. IGE単剤療法すべての有害事象, PER > Placebo > LTG > VPA > LEV > ESM > TPM

C. IGE補助療法中止に至った有害事象, Placebo > PER > TPM > LEV > LCM > LTG

D, E. IGE単剤療法中止に至った有害事象, Placebo > VPA > TPM > LEV > ESM > LTG > PER

ESMはCAEで1位.

VPAはIGEで1位.

追加療法では, TPMはGTCAとIGE全体で最も優れた.

LEVはミオクロニー発作で最も優れた.

安全性については, PERが最も優れた.

[Chu H, Zhang X, Shi J, Zhou Z, Yang X. Antiseizure medications for idiopathic generalized epilepsies: a systematic review and network meta-analysis. J Neurol. 2023;270(10):4713-4728. doi:10.1007/s00415-023-11834-8]

【まとめ】

なかなか解釈が難しいですが, 妊娠可能な女性にはLEV, LTGを選択し, 不十分なら併用することも多いのが実情だと思います.

この論文では, IGEにLTGの効果は低い結果でしたが, LTGの漸増期間を考えると解釈に注意が必要です.

妊婦に対するLCMの安全性が確立されれば, LCMもありかもしれません.

IGE全体ではVPAが最も有効という結果でした. 妊娠を考慮しなければ, まずVPAが選択肢となりそうです.

時々, 難治性JMEが問題となりますが, LEV, LTG, VPAでもダメそうなら, PERも良さそうです.

次点として, TPM, LCMといったところでしょうか.

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