全般性スパイクをみたときに, 真の全般性なのか, 焦点からの二次性同期化に悩むことが多いです.
その解釈について考えてみました.
二次性全般化とfocal myoclonic seizure

従来のreferential montage: 感度10 μV
全般化しているspikeがありそうですが, このままでは判読に不十分です.
EMG2: 右三角筋myoclonic seizure

従来のreferential montage: 感度30 μV
EEGは左側優位だということはわかりましたが, それ以上の局在がよくわかりません.

左右をわけたreferential montage: 感度30 μV
左F3, F7に最大のnegativityがあり, 左前頭部に優位であることがわかります.
ただ, 基準となる耳朶にnegativityが波及していることが想定されるので, 傍矢状部側は相対的に振幅が低く見えてしまいます.
今回の脳波検査では, 耳朶電極は乳様突起で代用しているので, 前よりも後ろがやや相対的に振幅が低く見えてしまいます.
よって, これだけで左前頭葉てんかんといってしまうのはやや早計と考えます.

AV:
Fp1にspikeがありそうです

SD:
Fp1, F3にsppikeがありそうですが, 隣の電極への波及が明らかではなく判定が困難です.

縦の双極誘導:
F3, F7, F4に位相反転がありそうですが, 少し自信が持てません.

横の双極誘導:
T3, T3-C3, C3で位相反転がわかりやすくなりました.
左中心運動感覚野付近のfocal spikeであり, 右上肢にfocal myoclonic seizureが生じたと説明できます.
若年ミオクロニーてんかんのfragmentation
この症例は, 常に一方向に偏ることはありませんでした.

左右をわけたreferential montage:
Fp1, F3に最大のnegativityを認めます.
つまり, 左に寄っています.

左右をわけたreferential montage:
同じ症例です. Fp2, P4に最大のnegativityを認めます.
つまり, 右に寄っています.
【まとめ】
脳波検査では, 全般てんかんのfragmentationを焦点と解釈したり, 焦点てんかんの二次性同期化を全般と解釈したりしてしまうことがあります.
上記に示したように, 双極誘導, referential montageを比較しながらnegativityの分布を頭の中でイメージし, その所見が臨床情報に矛盾しないか考察することが大事だと考えます.
EEG spikeが同じ側から常に微妙に早く先行していないか, EEG spikeの振幅がどちらかに常に寄っていないか, 注意深く判読することが重要だと考えています.
もしそうであるならば, 特に前頭葉てんかんの可能性を疑い, その視点で画像も判読する必要があります.
【おまけ 全般てんかんのメカニズム】
Focal abnormalities in idiopathic generalized epilepsy: A critical review of the literature
全般てんかんの仮説はいくつかある.
歴史的には, 中心脳説が最初に提唱され, 次に起源は皮質下正中線構造, 特に視床と脳幹にあると示唆された.
ネコ全般ペニシリンてんかんモデルの出現により, 皮質網様体説が生まれ, 全般性てんかん性異常の発生は視床皮質回路にあるとされた.
この理論は, 局所的異常ではなく, より拡散した形で皮質が重要な役割を果たしていると仮定した.
皮質網様体理論によれば, 皮質は過剰興奮状態にある結果とされる.
最近では, 皮質焦点理論が提唱され, 起源は前頭皮質にあることが示唆された.
ラットの欠神てんかんモデルでは, 欠神発作の最初の500 msの間に, 体性感覚皮質の口周囲の皮質焦点が, 視床を8.1 ms先行することを実証した.
この仮説によれば, 体性感覚皮質の焦点から発生し, 皮質間と視床皮質ループを介した発作性振動を介して, 全般化し, てんかん性異常の脳波を増幅させるとされた.
他にも前頭葉にあるという理論を支持する研究が増えているが, ほとんどは動物モデルからである.
侵襲的脳波によるヒトのデータは少ない.
頭皮脳波で全般てんかんと診断された4人では, 深部電極記録により2人が前頭葉焦点が示された.
10人のSEEGでは, 内側前頭皮質を刺激することで, 欠神発作, GTCSを伴う典型的な全般性てんかん性異常を誘発することができた.
また, 傍矢状部に病変を持つ31人のうち26人に全般性てんかん性異常を記録した.
これらの症例は, 全般てんかんではなく二次性同期化を伴う前頭葉てんかんである可能性も示唆された.
高密度EEGでは, 欠神発作が背外側部, 眼窩部, 内側前頭領域に局在していた.
EEG-fMRI研究では, 視床活性化前の前頭皮質でBOLD活動あり
皮質焦点理論を支持しない研究もある
ラットモデルで, 視床活動が皮質活性化に先行することを示した研究もある
深部電極研究では, 頭皮電極と視床電極から3Hzのてんかん性異常が同期して捕捉された
網様視床核研究では, 全般性てんかん性異常が皮質で開始されるとしても, 放電を維持するには網様視床核が必要であると仮定.
局所的な所見があったとしても, IGEを焦点てんかんの一形態として解釈することはできない.
臨床情報, 神経画像, 脳波を含む徹底的な評価に基づいて, 全般てんかんにおける全般性てんかん性異常脳波の皮質発症と, 急速な二次性全般化を伴う前頭葉てんかんを区別することが重要である.
[Seneviratne U, Cook M, D’Souza W. Focal abnormalities in idiopathic generalized epilepsy: a critical review of the literature. Epilepsia. 2014 Aug;55(8):1157-69. doi: 10.1111/epi.12688. Epub 2014 Jun 17. PMID: 24938654.]
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