ときどき超難治性てんかん重積状態に出会いますが, 非常に苦労します.
Treatment of Refractory and Super-refractory Status Epilepticus. Neurotherapeutics. 2018
【ミダゾラム (MDZ)】
GABA-A受容体作動薬
半減期は0.8-2.8時間
脱感作を伴う可能性があり, 徐々に用量を増やす必要がある.
昇圧剤を必要とする低血圧は, 30-50%に発生
【プロポフォール】
GABA-A受容体を直接活性化し, NMDA受容体を阻害
昇圧剤の使用を必要とする低血圧は, 22-55%に発生
【プロポフォール注入症候群 (PRIS)】
ミトコンドリアと細胞機能への毒性あり, 代謝性アシドーシス, 横紋筋融解症, 腎不全, 高トリグリセリド血症, 難治性徐脈, 心不全
プロポフォールと抗発作薬を併用, プロポフォール単独で投与した31人: 中央値67時間, 累積投与量中央値12,850 mg.
突然の心肺停止 3人, 死亡 2人, PRIS 11人.
PRISは, 80 mcg/kg/分を超えない用量で, 2-3日間に使用を制限することで回避できる可能性がある.
PRISが発生した場合, 治療は支持療法.
【バルビツレート】
チオペンタール (ラボナール)と, その代謝物であるペントバルビタール (ラボナ錠はあるが, 日本には注射製剤はない)
GABA-A受容体での伝達を増強
作用時間が長く, 覚醒状態への回復が大幅に遅れるため, 通常は第一選択薬とはならない。
肝臓で代謝され多くの薬物間相互作用がある。
29-77%に昇圧剤を必要とする低血圧.
副作用: イレウス10%, アシドーシス1%, 舌浮腫 (まれ)
ペントバルビタールはMDZやプロポフォールと比較して, 発作制御にはより効果的だったが, 転帰は改善されず副作用を多く認めた.
多くの神経内科医は, MDZから始め, 不十分な場合は1-2日間プロポフォールを投与し, 漸減しても発作が再発する場合はペントバルビタールを使用している.
また, MDZ, プロポフォール, ペントバルビタールを使用して12-24時間 (場合によってはそれ以上) 発作を抑制し, 脳波, 臨床的な発作がないことを確認することを推奨.
その後, EEGをモニタリングしながら薬剤を徐々に減量.
発作が止まった後, 少なくとも24時間は持続鎮静を継続することを推奨している意見もある.
Burst-suppressionを目指した方が良いかはまだ不明. 今のところ予後に差はない.

【微妙なてんかん重積状態】
ゆるやかに治療を行う.
非鎮静系の抗発作薬を使用
【PHT, fPHT】
低血圧 (28-50%), 不整脈 (2%)
50歳以上, 心疾患の場合は, 心血管系の合併症のリスクが高くなる.
【バルプロ酸 (VPA)】
急速静注 (最大40 mg/kg/分) は一般的に忍容性が高い
心血管系および呼吸器系の忍容性が良好で, 副作用の発生率は低い (< 10%)
最も頻繁に見られたのはめまい, 血小板減少症, 軽度低血圧
【フェノバルビタール (PB)】
95%以上のバイオアベイラビリティ, 48-54%のタンパク結合, 72-144時間の半減期.
肝臓で代謝
経腸PBの吸収は速く, 30分で治療範囲に達する.
血行動態不安定, 呼吸抑制, 免疫抑制, 胃腸運動の低下など
【ラコサミド (LCM)】
最も頻繁なボーラス投与量は400 mg.
副作用: 軽度鎮静. 頻度は低いが低血圧.
用量依存的にPR間隔の延長と, 可逆的なAV伝導ブロックを引き起こす可能性があるため, 心臓や腎臓のリスク因子を持つ場合は注意が必要.
【レベチラセタム (LEV)】
Neurocritical Care Societyは, 初回ローディングとして1000-3000 mgを推奨.
副作用は少なく, 最も多いのは鎮静作用, まれに血小板減少症.
【トピラマート (TPM)】
AMPA受容体の遮断を含む, いくつかの作用機序を持つ広域スペクトラム.
小児では2-25mg/kg/日, 成人では最大1600mg/日の用量で, てんかん重積状態の有効な補助治療薬となっている.
95人のうち62人 (65 %) で臨床的な発作停止
代謝性アシドーシスが最も頻繁にみられた副作用
【超難治性てんかん重積状態の治療の引き際】
発作が短時間で低頻度の場合や, 時折の脳波上または臨床上発作を許容する方が, ICUに留めて繰り返し積極的な治療を続けるよりも良い場合がある.

【超難治性てんかん重積状態の対応】
免疫治療, ケタミン, てんかん外科, ケトン食などを考慮
作用時間の長いフェノバルビタール, ロラゼパム使用を考慮し, 鎮静剤を漸減していく
再発時は, 非鎮静系抗発作薬を強化する
鎮静剤を漸減するときは, 非鎮静系抗発作薬2種類以上を十分量使用する
非けいれん性, 局所性, 短時間 (1回数分以内) の発作であれば, 1日に数回の発作を許容する
全身けいれん発作は許容しない
孤発性や, 急速ではない周期性発射に, 抗発作薬を増量しない
[Rai S, Drislane FW. Treatment of Refractory and Super-refractory Status Epilepticus. Neurotherapeutics. 2018 Jul;15(3):697-712. doi: 10.1007/s13311-018-0640-5. PMID: 29922905; PMCID: PMC6095773.]
【まとめ】
超難治性の場合は, 作用時間の長いフェノバール, ロラゼパムを使いながら, 鎮静剤を漸減することも良いかもしれない.
LEV, LCM, PERなどがいまいちなら, VPAやTPMといったブロードスペクトラムなASMも良いかもしれない.
海外だと初回投与から, LEV 1000-3000 mg, LCM 400 mgと高用量で使用するようです.
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