妊婦, 授乳のてんかん管理 (BMJ, 2023)

Management of epilepsy during pregnancy and lactation. BMJ. 2023

バルプロ酸 (VPA) は, 単独療法および多剤療法において, 大奇形および神経発達障害のリスク上昇と関連.

トピラマート (TPM), フェノバルビタール (PB) も先天奇形や神経発達障害のリスク上昇と関連しているが, VPAよりも低い.

ラモトリギン (LTG), レベチラセタム (LEV) は比較的安全である.

ペランパネル (PER), ブリバラセタム (BRV), カンナビジオール、セノバメートなどの新しいASMは, 確固たる結論を出すにはデータが不十分である

迷走神経刺激, 深部脳刺激などの外科治療法も安全である可能性が高い.

一般的に, 母乳育児は子供に長期的なリスクをもたらさない.

大奇形の割合は, LTG, LEVが低い. VPA, PB, PHTは高い.

神経発達障害
VPAに曝露した6歳のIQスコアは, LTG, CBZ, PHTに曝露した子どもよりも6-10 ポイント低い.

用量依存的に, 自閉症スペクトラム障害がTPMで4.3%, VPAで2.7%に増加, コントロール群で1.5%.

知的障害はTPMで3.1%, VPAで2.4%に増加, コントロール群は0.8%.

葉酸サプリメント

妊娠前後に少なくとも1日0.4 mgの葉酸サプリメント摂取は, 神経認知上の利点があることを示す強力な証拠あり.

最適な推奨量や, 高用量の葉酸サプリメントの安全性はさらなる研究が必要.

ビタミンK

酵素誘導系の抗発作薬を服用している妊婦全員に, ビタミン K 補給を推奨することは証拠が不十分.

妊娠中の抗てんかん薬のモニタリング

LTG, LEV, LCM, ZNSは血中濃度が有意に低下する.

LTG, LEVは, 妊娠前濃度と比較して65%以下になると発作頻度が増加する.

TPMは, 濃度に大きな変動は認めなかったが, 重大な先天性奇形や神経発達への影響のリスクが高まるため, 可能な限り使用を避けるべきである.

抗発作薬濃度モニタリングの最適な頻度, およびそれがより良い結果につながるかどうかを判断するには, さらなる研究が必要.

授乳

抗発作薬の母乳児の血中濃度は母親よりもはるかに低く, 一般的にてんかんのある女性には母乳育児を勧めるべきである.

CBZ, LTG, LEV, TPM, VPA, ZNS, PHTを服用している場合, 母乳育児は安全である.

LTGにおいて, 妊娠中に用量増加を必要とした場合は, 速やかに減量するという意見もある.

一部の専門家は, PB, プリミドン, クロバザム, クロナゼパムを服用している場合, 無気力, 筋緊張低下, 吸啜低下, 無呼吸がないか, 乳児を注意深く監視しながら慎重に授乳することを推奨している.

新規抗発作薬の場合はさらなる研究が必要だが, 患者と医師が慎重に話し合った後, 乳児を注意深く監視しながら母乳育児を検討することもできる.

[Hope OA, Harris KM. Management of epilepsy during pregnancy and lactation. BMJ. 2023;382:e074630. Published 2023 Sep 8. doi:10.1136/bmj-2022-074630]

【まとめ】

重篤な先天奇形のリスクは, LEV, LTGで最もリスクが低く, 健康な対照群のリスクレベルに近い.

VPA, TPMの曝露は, 自閉症スペクトラム障害などの発達障害のリスク増加と関連.

妊娠中の血中濃度は, LTG, LEV, LCM, ZNSで大幅に低下することが知られているため, 血中濃度モニタリングはこれらに合理的かもしれない.

フェノバルビタール, プリミドン, クロバザム, クロナゼパムを服用している場合の授乳は, 乳児を注意深く監視することが賢明である.

【おまけ】

Treatment and care of women with epilepsy before, during, and after pregnancy: a practical guide. Ther Adv Neurol Disord. 2022

[Nucera B, Brigo F, Trinka E, Kalss G. Treatment and care of women with epilepsy before, during, and after pregnancy: a practical guide. Ther Adv Neurol Disord. 2022;15:17562864221101687. Published 2022 Jun 11. doi:10.1177/17562864221101687]

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