以外とMRI陰性例は多いと感じています.
髄液検査が正常例も存在します
MRIで所見がはっきりしない場合は, 治療が遅れます.
MRIで異常を認めない自己免疫介在性脳炎の特徴を調べました
2例のケースレポート (LGI1抗体陽性, 脳MRI検査陰性)


MRI陰性のLGI1

MRI陰性のLGI1
[Lian X, Zheng K, Chen W, Li D, Xue F, Wang G. Autoimmune encephalitis related to LGI1 antibodies with negative MRI study: Description of two cases. Med Clin (Barc). 2024;162(1):35-38. doi:10.1016/j.medcli.2023.06.024]
Autoimmune encephalitis: Early and late findings on serial MR imaging and correlation to treatment timepoints. Eur J Radiol Open. 2024

NMDAR, GABAbR, LGI1, CASPR2, VGKC, VGCC, IgLON5, GFAPで, 長期間の脳MRI検査陰性例あり

NMDAで初回の脳MRI検査では異常を認めなかったが, 5日後から明らかになった例
[Abunada M, Nierobisch N, Ludovichetti R, et al. Autoimmune encephalitis: Early and late findings on serial MR imaging and correlation to treatment timepoints. Eur J Radiol Open. 2024;12:100552. Published 2024 Feb 2. doi:10.1016/j.ejro.2024.100552]
Lancet neurology 2016 (Graus)の自己免疫介在性脳炎診断アプローチ


自己免疫介在性脳炎 (診断基準: Lancet 2016)/てんかん発作との鑑別に髄液検査は役立つか?の記事はこちら
の記事にも記載したpanel 1, 2を満たさない場合は, panel 7の評価が必要になります.

panel 7: 自己抗体陰性の自己免疫性脳炎 (probable) のクライテリア
以下の4つの基準すべてを満たす
- 作業記憶障害 (短期記憶), 精神状態の変化, または精神症状の急速な進行 (3か月未満)
- 明確に定義された症候群の除外 (例: 典型的な辺縁系脳炎, ビッカースタッフ型脳幹脳炎, ADEM)
- 自己抗体が存在せず, 以下の基準のうち少なくとも2つを満たす:
- 自己免疫脳炎を示唆するMRI異常
- 髄液細胞増多, オリゴクローナルバンドまたはIgG indexの上昇
- 脳生検で炎症性浸潤を認め, 腫瘍などを除外
4. 鑑別疾患の除外
[Graus F, et al. A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis. Lancet Neurol. 2016;15(4):391-404. doi:10.1016/S1474-4422(15)00401-9]
【まとめ】
Lancet neurology 2016の基準では, MRI陰性だと自己免疫介在性脳炎の基準を満たさなくなってしまう傾向にあるが, 実際には脳MRI陰性自己免疫介在性脳炎が存在する.
脳炎の診断には, 臨床症状, 生化学所見, 脳波検査を含めた総合的な判断が必要である.
私は, 亜急性に進行する精神症状もしくは認知機能障害, および同時期に新規てんかん発作を発症した場合は, 髄液と血液検体を保存したら, 脳MRI検査陰性でも速やかにステロイドパルスをしてしまう派です.
髄液検査はてんかん発作と脳炎の鑑別に役立つか?の記事はこちら
免疫抑制が,,プレドニン後療法が,,自己抗体が,,といった反対意見とぶつかることもありますが, 不可逆的な損傷を早期に少しでも防ぐ方が大事だと考えています.
時々, 石橋を叩きすぎて手遅れになる例を歯がゆくみています (もちろん後医は名医でありますが,,).
脳神経内科領域では, ステロイドパルス1回や2回では感染を起こすことはほぼないと感じています (リウマチ膠原病科でも6ヶ月働いていた私個人の感想です).
AIDSの免疫再構築症候群による中枢性脱髄疾患の場合も, ステロイドパルスは行っていました.
自己抗体測定の意義は, 悪性腫瘍の関与を疑うか, 再発しやすいかを判定するものだと考えています.
年単位で免疫抑制を行うかは, 世界でもケースバイケースです.
抗体陽性例でも, 70%が再発時に長期免疫抑制を開始すると回答しています.
よって, 誤診するリスクよりも, 治療機会を逸失することのほうが, デメリットが大きいのではないかと考えてます.
Tissue based assayは自己免疫介在性脳炎の鑑別に役立つか?の記事はこちら
どのような精神症状で自己免疫介在性脳炎を疑うべきかの記事はこちら
【おまけ】

抗GAD抗体脳炎により, 3年後に小脳萎縮が明らかになった例
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