自己免疫介在性脳炎の慢性期治療はどうする?

Autoimmune encephalitis: proposed recommendations for symptomatic and long term management: review

17か国から68人の専門家の回答結果, %は回答者の割合です.

Bridging therapyとしてPSL (38%), maintenance therapyとしてリツキシマブ (46%) を選択.

神経細胞表面抗原抗体陽性 (70%), 抗体陰性 (61%), 傍腫瘍神経抗体陽性 (29%) の再発時に, 免疫抑制剤によるmaintenance therapyを検討.

神経表面抗体 (49%), 辺縁系脳炎 (46%), 非辺縁系自己抗体陰性 (36%) に4年間の癌スクリーニングを選択.

Bridging therapy

最も多いのはPSL漸減療法で38%が選択.

28%が数か月かけて漸減, 10%が数日から数週間かけて漸減する.

定期的 IVIg (28%),

リツキシマブ単独 or PSLとの併用 (16%),

定期的IVMP (12%).

Maintenance therapy

神経表面抗体陽性の再発率は10%から35%だが, ほとんどが後ろ向き研究からの報告.
再発率の低さから, 長期免疫抑制を正当化するかは判断がわかれる.

場合によっては, 数年から数年間の維持免疫抑制が適応となる.

神経表面抗体陽性例は, 70%が再発時, 50%が初回時に長期免疫抑制を開始.

自己抗体陰性例は, 61%が再発時, 10%が初発時に長期免疫抑制を開始.

細胞内抗原抗体陽性例は, 長期免疫抑制により推定される基礎腫瘍の進行リスクが増大する可能性があり, 併存腫瘍治療後に長期免疫抑制を開始すると回答したのは29%と少ない.

腫瘍が見つからなかった場合に, 長期免疫抑制を開始すると回答したのは46%.

再発時の長期免疫抑制剤は,

リツキシマブ (46%),

アザチオプリン (15%),

ミコフェノール酸モフェチル (MMF) (12%),

PSL (6%),

IVIg (4%).

12%の臨床医は, 神経表面抗体にはリツキシマブ, 細胞内抗原抗体や抗体陰性例にはアザチオプリンやMMFなどの他の薬剤を好む.
アザチオプリンまたはMMFは, 作用発現遅いのでPSL併用が3-6か月間必要になる.

再発時の長期免疫抑制の期間は,

3年 (44%),

2年 (19%),

1年 (13%),

終生 (7%),

6ヶ月 (3%).

上記論文の推奨治療のサマリーです

自己免疫脳炎の長期管理に関するベストプラクティスの推奨事項の概要

【神経細胞内抗原抗体陽性】

腫瘍が見つからなかった場合, 半年から 1 年に 1 回の癌スクリーニングを開始.

再発時は, 必要に応じてIVMPやシクロホスファミドを選択し長期免疫抑制は避ける.

【神経細胞表面抗原抗体陽性】
抗体の種類と各患者の癌リスク因子に基づいて、定期的な腫瘍スクリーニングを検討.

GABAbRは頻繁なスクリーニングが必要.

再発時は, リツキシマブによる長期免疫抑制を検討.
重篤な初期症状または再発の危険因子 (例:オリゴクローナルバンド持続陽性) は, 初発時に長期免疫抑制の開始を考慮.

【自己抗体陰性】
年1回, 4年間の癌スクリーニングを考慮.

再発時は, リツキシマブ, MMF, アザチオプリンによる長期免疫抑制を開始.

その際は一定期間PSLを併用する.

[Abboud H, Probasco J, Irani SR, et al. Autoimmune encephalitis: proposed recommendations for symptomatic and long-term management. J Neurol Neurosurg Psychiatry. Published online March 1, 2021. doi:10.1136/jnnp-2020-325302]

【まとめ】

海外では, 再発時に長期免疫抑制を検討することが多い.

リツキシマブ, 腫瘍スクリーニングを定期的に行う, 抗体有無により治療方針を選択することが多い点が, 本邦と異なる印象です.

保険適応の違い, 自己抗体測定も本邦ではハードルが高いため, この結果をすべて当てはめることはできないと考えます.

本邦では測定できない自己抗体もあるので, 自己抗体陰性例でも, tissue based assay陽性もしくは初発が中等症から重症なら, 年単位のPSLやアザチオプリンでの長期免疫抑制療法, 定期的な腫瘍スクリーニングといった感じでしょうか.

ちなみに自己免疫介在性脳炎では, タクロリムスやシクロスポリンといったT細胞抑制系のカルシニューリン阻害薬よりも, B細胞抑制系のアザチオプリン, MMF, リツキシマブの方が効果的ということなのでしょうか.

自己抗体測定, リツキシマブ, アザチオプリン, MMFの保険適応を期待したいところです.

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