Lennox-Gastaut症候群と成人例

ILAEの診断基準

LGSは, 幅広い病因に伴う発達性てんかん性脳症

小児期の感受性が高い時期に, 両側分布大脳ネットワークの高周波同期活動に起因

(1)18歳以前に発症する複数の薬剤抵抗性の発作型(一つは強直発作を含む必要あり),

(2)認知, およびしばしば行動の障害(発作発症時には認めないことあり),

(3)脳波でびまん性遅棘徐波全般性突発性速波活動

LGSの臨床や脳波の特徴は発症初期にすべて揃わないことが多く, 出現に時間がかかる.
特徴的な発作型を示すものの, すべての特徴を備えていない幼少児は, LGS への移行を注意深く見守る必要がある.

特に, 乳児てんかん性スパズム症候群, 早期乳児発達性てんかん性脳症, 遊走性焦点発作を伴う乳児てんかんなどは, LGSに進展することが多い.

生後18か月から8歳の間に発症し, 発症時年齢は3〜5歳がピークである.

10代での発症は稀
ほとんどの症例では, LGSの発作の発症に先行して発達障害が認められるが, 高頻度な発作の出現に伴い発達の停滞や退行が生じることがある.

稀ながら, 発作発症時に発達や行動が正常なこともある.

【経過】
非定型欠神発作や強直発作は成人期にも高頻度であるが, 脱力発作は落ち着くことが多い
時間経過とともに, 発達の遅れ, 停滞あるいは退行がみられ, 患者の90%以上で中等度から重度の知的障害に至る

【発作】
強直発作は, 3秒から2分間持続する体軸および四肢の筋収縮の持続的増強で, 診断に必須

睡眠中に最も顕著

緩徐な眼球の上転または偏位, 時に顔をしかめたり頭部や体幹の屈曲動作を伴う軽微なものから, 短い叫び, 無呼吸, 振動要素を伴い両拳を握りながら四肢を外転および挙上させるような臨床的により明確なものもある.

強直発作は, 高用量のベンゾジアゼピン系薬剤の急性使用といった, 眠気を強める薬剤によって悪化することがある.

強直発作に加えて, LGSの診断には第二の発作型が必須

・非定型欠神発作:

この発作はしばしば頻発し, 一時的な意識減損を呈する.

・脱力発作:

体軸の緊張が突然失われ, 頭部前屈や突然の転倒 (転倒発作) を伴うため, しばしば怪我をすることがある. 特に幼少児で頻発. 発作の持続は通常1〜数秒と短い.

・ミオクロニー発作:

ミオクロニー発作も非常に短く (100 ms未満), 転倒 (転倒発作) を起こすことがある. ミオクロニー脱力発作が認められる場合, 診断はEMAtS が強く考慮される.

・焦点意識減損発作:

焦点性発作のまま, あるいは両側強直間代発作に進展することがある.

・全般強直間代性発作

・非けいれん性てんかん重積状態:

LGS患者の約半数から3/4が一回〜複数回の非けいれん性てんかん重積状態を経験する. これは持続する非定型欠神発作からなり, 意識変容, 易変性, または全般や多焦点性のミオクロニーと脱力要素を含み, 短い強直発作の群発を散発的に伴う.

・てんかん性スパズム

【脳波】
背景活動は異常で, びまん性のθ-δ徐波化を示し, 基盤となる病因によっては局所的により顕著になることもある. 両側頭頂部のθリズムが顕著な場合はEMAtS を考慮する必要がある.

強直発作は, しばしば軽微で, 家族に認識されないこともある.

通常は睡眠脳波で記録される.

強直発作の脳波パターンは, 両側性の10Hz以上の周波数の速波活動のバーストからなり, 漸増律動 (振幅が最初びまん性に減少した後に徐々に増加) を示す

LGSの診断には, 2 つの発作間欠期パターンが必須

・全般性遅棘徐波:

棘波 (<70 ms) または鋭波 (70-200 ms) と, それに引き続く陰性高振幅徐波 (350-400 ms) からなる.

両側同期し, しばしば前方優位で, 2.5 Hz以下の周波数で発生することが特徴である.

遅棘徐波パターンは多くみられ, しばしば連発して出現する.

非定型欠神発作を伴うこともあるが, 覚醒時, 特に睡眠時ともに臨床的な相関を示さずに増強減弱することが多い.

全般性遅棘徐波 (≤2.5 Hz) 複合は幼児に多く, 青年期および成人期には棘徐波パターンの頻度は減少する.

16歳を過ぎると, 患者の大部分は典型的な遅棘徐波パターンを示さなくなる

・全般性突発性速波活動:

びまん性または両側の速波 (10Hz以上) 活動のバーストからなり, 睡眠中にしばしばみられる.

これらは通常, 持続が数秒以下と短い.

焦点性または多焦点性の遅棘徐波パターンがみられることもある.

【画像】
構造的な原因が最も多い病因である

構造的病因は様々で, 限局性またはびまん性の皮質奇形, 結節性硬化症複合体, 腫瘍, 低酸素性虚血性脳症などの後天性脳損傷などがみられる.

MRI正常の場合もある.

【遺伝学】
通常de novo
様々な染色体異常やコピー数変化がLGSと関連づけられており, 染色体マイクロアレイが不可欠である.

特に臨床検査やMRI検査で病因が判明しない場合は, 次世代シーケンシングによる様々なアプローチ, 理想的には全エクソームシーケンスやてんかん遺伝子パネルが考慮される.

さらに, 基盤に素因性の原因が示唆される脳の構造的疾患を持つ患者には, 遺伝学的検査も考慮すべきである.

【代謝検査】
まれに神経代謝疾患によることがある.

画像検査や遺伝学的検査で原因疾患が判明しない場合, 代謝検査を考慮する.

【鑑別診断】
EMAtS: 多くの症例で発作発現前の発達が正常, ミオクロニー脱力発作, 通常 3Hz 以上のより速い全般性棘徐波を示すことで区別される.

Dravet 症候群: 生後 1 歳までに発熱で誘発される遷延性一側間代発作で区別される. 強直発作 (あったとしても) は後になるまで出現しない.

DEE-SWASあるいはEE-SWAS: 退行と睡眠中のてんかん様異常の顕著な活性化を伴い, ほぼ連続したびまん性棘徐波複合

環状20番染色体症候群: 難治てんかん, 知的障害, 行動異常を伴い, 強直発作は通常睡眠中には出現するが, 覚醒時には非けいれん性てんかん重積状態をしばしば経験する.

前頭葉てんかん: 両側強直発作を呈することがあるが, しばしば非対称な特徴を有する. 遅棘徐波や全般性突発性速波活動は認めない.

稀な代謝疾患がLGSの表現型を起こすことがある.

CLN2疾患は, 通常, 正常発達あるいは言語の遅れのみを伴う小児に発症する. 発作の発症に引き続き, 進行性の運動および認知機能低下と失調を呈する. 脳波では1-3 Hz刺激で光突発反応を示すのが特徴である.

https://www.ilae.org/files/dmfile/childhood-onset—japanese.pdf

38例の成人LGSの観察研究
基礎波正常 (6例), てんかん性異常なし (5例), 強直発作 (9例), 非定型欠神発作 (2例), 脱力発作 (1例)

fast rhythm dischargeと強直発作

欠神発作重積: 遅い棘徐波複合
[Vignoli A, et al. Lennox-Gastaut syndrome in adulthood: Long-term clinical follow-up of 38 patients and analysis of their recorded seizures. Epilepsy Behav. 2017;77:73-78. doi:10.1016/j.yebeh.2017.09.006]

Proposed diagnostic and treatment algorithms for Lennox-Gastaut syndrome in adult patients. Epilepsy Behav. 2020

Expert opinion

成人患者におけるLGSの診断および治療アルゴリズムの提案
LGS治療へのアクセスを逃さないようにすることが目的

過去の病歴がわからない場合のアルゴリズム
slow apike and wave (awake)とdiffuse fast rhythms (sleep) があれば診断

第一選択群: VPA, CLB, LTG, RFN, TPM, cannnabidiol
第二選択群: LEV, PER, ZNS
第三選択群: LCM, BRV
低い使用頻度, 特定の発作型を悪化させる可能性あり: CBZ, GBP, PHT
[Montouris G, et al. Expert opinion: Proposed diagnostic and treatment algorithms for Lennox-Gastaut syndrome in adult patients. Epilepsy Behav. 2020;110:107146. doi:10.1016/j.yebeh.2020.107146]

【まとめ】
成人のLGSは, 基礎波が正常なこともある.

成人になるにつれ脱力発作, 棘徐波複合は減少もしくは目立たなくなる
小児期にLGSがあったかわからない症例で,

slow spike and wave, fast rhythmを全般性に認める, 強直発作などを含むdrop attacks, 非定型欠神発作, ミオクロニー発作, 焦点発作, 強直間代発作などをもつ場合には,

LGSに準じた治療 (VPA, CLB, LTG, TPMといったブロードスペクトラム) を行うことが良いかもしれない.

表面筋電図: ミオクロニー, スパズム, 強直の記事はこちら

フェンフルラミン (フィンテプラ) の記事はこちら

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