ILAE 2022から抜粋


乳児てんかん性スパズム症候群: Infantile epileptic spasms syndrome (IESS)
West症候群と, West症候群の基準をすべては満たさないてんかん性スパズムの両方を包含するために提唱された.
West症候群の三要素 (てんかん性スパズム, ヒプスアリスミア, 発達の遅滞・退行) の一つを欠くことが多い.
IESSの約30%がLennox-Gastaut syndromeに移行する可能性あり.
てんかん性スパズムはIESSの診断に必須.
【年齢】
3-12か月の間に発症し, その範囲は1-24か月である.
3か月以前に発症した場合は, 他の早期発症の発達性てんかん性脳症を検討する必要がある.
IESS発症前の発達は正常な場合もある.
【発作型】
結節性硬化症やFCDなどの構造的病因の場合には, 焦点起始発作も認めることあり.
焦点てんかんからIESSに移行し, その後, 年齢や治療により焦点てんかんに逆戻りする乳児もいる.
このような場合, 典型的なヒプスアリスミアが認められないことがある.
焦点起始発作の併発, 非対称性てんかん性スパズム, 脳波上一貫した焦点性の所見は, 脳の構造異常の可
能性も示す.
発症時に強直発作があれば非典型的の経過であり, 他の早期発症発達性てんかん脳症を考慮する.
てんかん性スパズムは体軸筋の短時間の緊張性収縮からなる.
通常は持続が3秒未満で, 屈曲, 伸展または混合性であることがある.
しばしば数分間 (群発が30分以上続く場合もある) シリーズまたは群発する.
これらの症状は対称性または非対称性であり, わずかな頭部前屈や, 眼や顎の動きなど微細なこともある.
【MRI】
脳MRI検査は, 髄鞘化が完了する2歳以降に再検する必要があり, FCDなどのてんかん外科的評価を考慮する.
検査で病因がみつからない場合は, 遺伝学的検査, ピリドキシン依存症を考慮.

A: ヒプスアリスミア (無秩序な, 高振幅で, 過剰な徐波化, 多焦点性のてんかん様放電), ノンレムで検出力が高い.
B: てんかん性スパズム: sharp and waveに続く速波活動を特徴とする.
【脳波】
経過の極初期や年長児では, ヒプスアリスミアがみられないこともある.
ヒプスアリスミアを認めないIESSの児に対して, 標準治療を控えるべきではない.
てんかん性スパズムの発作時記録は, 高振幅な全般性鋭波や徐波と, 引き続く低振幅な速波活動 (短
い脳波減衰として現れることもある) を特徴とする.
ヒプスアリスミアは通常, てんかん性スパズムのシリーズ中は減衰あるいは停止する.
筋電図は, てんかん性スパズムをミオクロニー発作や強直発作と区別するのに役立つ
EEGのバーストサプレッションパターンは, EIDEE を示唆する.
【病因】
症例の最大41%で素因的病因の特定が可能.
病因には21トリソミー, ARX, CDKL5, STXBP1, IQSEC2, TSC1, TSC2など.
遺伝子変異は, 軽症あるいは罹患していない親から遺伝することがある.
染色体マイクロアレイやルーチンの核型検査を考慮すべきである.
臨床検査で病因がみつからず, MRI で構造的異常が認められない場合には代謝検査を考慮.
ピリドキシン依存症を考慮するが, 迅速にこの診断を除外するための検査が不可能な場合, 乳児へのピリドキシンの試用を検討すべきである.
しかしながら, この疾患の稀少さを考慮すると, このような試用は第一選択治療と同時に行うべきである.
【鑑別診断】
・ 早期乳児発達性てんかん性脳症 (Early-infantile developmental and epileptic encephalopathies: EIDEE)
生後3か月以前に始まる.
スパズムがみられる場合もあるが, 強直発作, ミオクロニー発作, 連続性発作などの他の発作型が併発する.
・ 乳児ミオクロニーてんかん (Myoclonic epilepsy in infancy: MEI)
てんかん性スパズムではなく, ミオクロニー発作を呈する.
脳波と筋電図によりミオクローヌスとてんかん性スパズムの区別が可能である.
脳波は正常な背景活動に全般性棘徐波放電を示す.
【予後】
発達遅滞の重症度は, 主に病因および治療の迅速さに関係する.
発症前の発達が正常で, 明らかな原因がなく, 症候群特異的な治療が迅速に開始された乳児においてより良好である.
https://jes-jp.org/jes/pdf/6_Zuberi-ILAE_ja.pdf
【まとめ】
私は成人脳神経内科医なのでtransition症例でしか経験はありませんが, 乳児にてんかん性スパズムを疑う発作があったら, 迅速に検査を進めながら治療を開始することと, 構造的要因にも注意をはらうべしということでしょうか.
コメント