自己免疫介在性脳炎 (診断基準: Lancet 2016)/てんかん発作との鑑別に髄液検査は役立つか?

A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis. Lancet Neurol. 2016

Lancet Neurologyによる自己免疫介在性脳炎の確定診断基準

以下の4つの基準をすべて満たす.
1. 作業記憶障害, 発作, または大脳辺縁系の関与を示唆する精神症状の亜急性発症 (3か月未満の急速な進行)
2. FLAIR画像で両側内側側頭葉に異常信号
3. 少なくとも次のいずれか: 髄液細胞増多 (白血球数 5/μl以上), EEGで側頭部にてんかん性異常または徐波
4. 鑑別疾患の除外

自己免疫介在性脳炎を疑う所見

下記3つすべて満たす

1. 亜急性 (3ヶ月以内に急速に進行) のワーキングメモリー障害 (短期記憶), 精神症状, 性格変化, 意識変容

2. すくなくともいずれか一つ: 新規局所的な中枢神経所見, もともとの発作では説明できない発作, 髄液細胞数5以上, MRIで脳炎を示唆

3. 鑑別疾患の除外

[Graus F, et al. A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis. Lancet Neurol. 2016;15(4):391-404. doi:10.1016/S1474-4422(15)00401-9]

Diagnostic utility of cerebrospinal fluid (CSF) findings in seizures and epilepsy with and without autoimmune-associated disease. Seizure. 2021

てんかん発作は髄液所見に影響するか?
てんかん発作による細胞数増加はまれであり, てんかん重積状態後に細胞数が増加した症例は6%である.
髄液蛋白上昇は10~61%で報告され, 血液/脳脊髄液関門破壊による影響を示唆されている.
[Langenbruch L, et al. Diagnostic utility of cerebrospinal fluid (CSF) findings in seizures and epilepsy with and without autoimmune-associated disease. Seizure. 2021;91:233-243. doi:10.1016/j.seizure.2021.06.030]

【まとめ】
もともとてんかんと診断されていなく, 発作群発や重積状態で搬送された患者の髄液細胞数が増加していた場合は, 脳炎なども鑑別する必要があるだろう.

特別な既往がない場合に, 亜急性に悪化する精神症状や意識変容をみたら, 脳MRI検査, 髄液検査も考慮した方が良いかもしれない.

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